日本最大の企業の栄光と崩壊【カネボウ10】

カネボウ化粧品と歩んだ人生10 商品

一気に2004年の粉飾、崩壊まで書いてしまいましたが、その時点でカネボウ化粧品も販売会社もなくなったわけではありません。企業、経済をあまり知らない女性ユーザーには資本関係も債務超過も意外と分からなかった面もあります。
今でもカネボウ化粧品は存在します。
しかし花王傘下の2012年、シナジーを模索していた花王とカネボウ化粧品販売を揺るがす大事件が起こります。
その前にカネボウ化粧品の商品としての歴史をこの章では記します。以前CM等のキャンペーンやモデル等を中心にした章で企業風土を書きましたが、肝心要の商品としての化粧品です。
カネボウの化粧品としての原点は、繊維、絹工場でのシルクです。絹工場の女性労働者の手指が白く美しいことに着目され、絹の油脂から絹石鹸が生まれました。
ソワドレーヌという絹の脂を使った基礎化粧品シリーズ等、原点は繊維です。
繊維の名門の超大手企業が化粧品に参入したことは、どちらかというと小さい怪しげな会社の多い化粧品業界に大きな存在感を示し業界の発展に寄与しました。最初は異業種としての違和感もありましたが、資生堂とならぶ直売、美容部員派遣の制度品メーカーとして確固たる地位を築きました。
メイヤングというエイジング老化肌シリーズで特許をとっっていました。そして大きなプロジェクトとして、1980年代は女性の時代としてレディ80を提唱し、大きなブランドとしました。
ポイントメイク中心の春と秋、大きなプロモーションの夏はファンデーション、冬もベースメイクと基礎化粧品などキャンペーンを中心にいろいろなヒット商品新商品を世に送ります。
ミニ口紅、バイオ口紅、パレット、落ちない口紅とムードだけでなく機能をうたったヒット商品も多くでました。商品開発と宣伝力はなかなかのものでした。
カネボウはレディ80、メイヤングに続き基礎化粧品を多岐にわたり送り出します。しかしメイクに比べると定番で安定したブランドが今一つ確率しませんでした。
アフィニークというクリームが5万円、化粧水2万円というとんでもない高級品シリーズも出しました。
強力な販売力で重要顧客を囲いこみ、単価を上げて売上を作りました。提携仏キャロン社の香水シリーズもきついノルマでありました。ロイヤルゼリーや健康食品もまとめて売ったりして売上を上げました。100周年記念の『甦』等工芸品のようなメイク揃えが数十万というのもありました。
これらは決算用の商品の意図もうかがえました。一般品よりも値崩れはない制度品の品質安定価格安定と知名度の安心感で、こぞっ化粧品の単価は高くシフトします。
2万円は別格としても化粧水の3000円~5000円、口紅の3000円、ベースメイク3500円等バブル時代とはいえ明らかに今の市場価格(ましてやスペックで大きく劣る)に比べ高いといえます。それだけ制度品の寡占、価格支配が利いていました。
カネボウは資生堂よりやや単価の高いスキンケアでこの部門のヒットブランドがない面をカバーしていました。逆に10万円を売るのに50人以上アプローチするより2万円や5千円を奨めるのでなかなか200円台などの大衆に広がるブランドを作っても販売店が売らないジレンマもありました。価格に低いブランドを宣伝するのは止めて欲しいという有力販売店もあったぐらいです。
美白シリーズもフェアクレア、フローテスとありましたが他者に比べてマイナーでシェは低かった。美白やエイジングは医薬部外品で研究開発に時間がかかり、厚生省(当時)の認可もいります。基礎ブランドで定番になる強い商品を出したい。その焦りも最終的にカネボウ化粧品をの名を地に貶めたあの『事件』へと繋がります。

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