カネボウ化粧品と歩んだ人生15 白斑自主回収2(後半)
カネボウのHPには毎月、白斑患者の状況が更新されます。
白斑様症状を確認した方
19,605人
和解合意された方
18,675人 が2020年7月現在の状況です。2万人近くが発症され、約7年を経て残り1000人程となりました。
もちろん重症の方、完治には至らない方もおられます。白く美しくありたいと思う消費者に対し、被害を与えたことは、企業責任は重いとしかいいようがありません。
資生堂『HAKU』 コーセー『雪肌精』というブランドを中心に、外資や一般品含め美白の化粧品市場はエイジングと並ぶ、大きな効能をうたったシリーズと言えました。しかし老化予防や肌を白くするなどというのは医薬部外品とは言え元々グレイなものです。肌を白くすろことを求めて、何千円とお金を出す消費者に対し、クスリではない化粧品は本来、肌を白くするとも、皺を無くすとも表現もできないし、実際そこまでの薬効はありません。
表現は『シミソバカスを防ぐ』『肌にハリツヤを与える』程度しか厚労省から許されていません。それでもメラニンの元を抑える等のウンチクを謳い、美白製剤の効能を何とか美容部員が訴え推奨して、各社が競っていました。そんな中、カネボウの主製剤ロドデノールは実際に効果は高かったのです。問題はその副作用ともいえる白い斑模様に色が抜ける白斑の発症のある方が頻出したのです。
商品開発の方向としては間違っていないのですが、やはり消費者にとって大問題でしたしブランドも大きく傷つきました。2012年までの好調は消え、制度品の中でカネボウは一人負け。化粧品単独メーカーでは存亡の危機ですが、本体花王の欠損処理でカネボウ化粧品は何とか美白以外のブランドで信頼回復を期すことになります。
その時の、店頭販売員の悲しみ、またそれでもカネボウを愛していて戻ってきてくれたお客様との感動のつながり、現場にはいろんな悲喜がありました。
そして営業も幹部含め、最終2万人にも及ぶ、発症者にアポをとりお詫びと説明、交渉に回る仕事に追われました。通常業務や会議、研修は圧縮しながら、男女のペアで顧客訪問で休日も深夜も入りました。OB、OGも召集して臨時再雇用をして対策チームを立ち上げ、この数年でようやくかなり和解にこぎつけました。関わった社員の努力は大変なものでした。
この件の後で花王は完全に主導して、販売会社を化粧品(カネボウ、ソフィーナ)家庭品を統合する動きを加速します。
もちろんマイナスの大事件でしたが、カネボウのブランドへの根強いファンがいること、先輩社員含めカネボウの人的パワーの凄さは花王グループの中でも証明されたと思います。