日本最大の企業の栄光と崩壊【カネボウ17】

カネボウ化粧品と歩んだ人生17 会計から

戦前日本最大の民間企業で、戦後も繊維と化粧品で1兆円の商いを目指したカネボウですが、起死回生の化粧品売却は失敗に終わりました。一度上場廃止となり、本体のカネボウは事実上解体。化粧品事業はのれんとともに花王に売却されました。
では花王にとってのカネボウ売却はどういう意味があったのでしょうか。
もちろん、消費者側や小売店、営業からみたシナジー効果等は目に見える通りです。比較的高級な化粧品を売るノウハウや、前のいくつかの章でも語った販売力やファンのあるブランド力もあります。
しかし花王にもソフィーナという化粧品ブランドがあり、シャンプーやサンケア等競合する者も多いのです。
花王はM&Aで傘下に事業を10年で利益を産むようにしていました。カネボウはなかなか上昇せず化粧品部隊は焦りました。インバウンドの波が来て、国内組織も大改変してようやく利益事業としました。花王はEVA(経済的付加価値)という国際会計基準IFRSにのっとった、財務戦略を日本で最初に導入しています。将来の収益を見込んだ投資、しかもその資金調達は株式ではなく借入金で行いました。
無借金経営が褒められるのも昔の中小企業で、現在のグローバルな市場では高配当を期待される企業は市場での資金調達では高い配当をステイクホルダーに返さねばなりません。「真の利益」価値を求めて花王は真剣にカネボウ化粧品を傘下にして炊くとを取りました。
それはまた、化粧品事業の世界的な会計基準にも合わせていく、かつての粉飾カネボウでは考えられない進化した財務でした。例えば美容部員売員が必ず販売するブランドの商品群はその人件費は商品原価に仕訳する。
私がたまたま参加させて頂いた花王の会計の研修で、その密な内容、先進の考えにはただただ感心しました。
そして、もう一つ花王クラスでさえ世界のトイレタリー大手に比べては小さい。買収をかけられる恐れさえあったのです。カネボウを呑みこみ、世界トップスリーに近ずくほどになっておかないといけないのも背景にはあったのです。
残念ながらカネボウの社員でそこまでのことが分かって、働いている人は少なかったでしょう。みんなが新しい花王のやり方の合わせるのに必死でした。

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