資生堂帝国の崩壊【枯れ行く椿】

コロナ不況は運輸等とともに化粧品メーカーも直撃しました。外出も減り、マスクの着用でメイクアップの機会も減り対面販売の大手(美容部員が売る制度品化粧品)の国内売り上げは相当な落ち込みで、業界最大手資生堂は2020年度118億円の赤字と発表しました。
1982年にカネボウに入社した私にとって、資生堂という化粧品会社は強敵でありライバル会社切磋琢磨する長年の好敵手でした。
カネボウ化粧品の幹部教育には「椿を折れ」と叫ぶ特訓をするような、今では考えられないようなカリキュラムがありました。
当時の資生堂とカネボウは毎シーズン華やかなCMやモデルを使い大きなキャンペーンでトップを競い合っていることは消費者からも著名でした。それは現在のトヨタと日産、キリンとアサヒ、巨人と阪神、ドコモとソフトバンク等よりも華やかで厳しい盟主、覇権を争うライバル関係でした。
常に2位メーカーという悲哀もあり、キリンが嫌いトヨタよりも日産が好きという人がカネボウにも多かったです。
潤沢な資金でCMを投入する資生堂に比べると、カネボウは派手なキャンペーンでピンポイントを抑え資生堂と同一認識を消費者に与えるものの、内実はスポットの量等全体の広告料は少なかったのです。後は人海戦術でいかに目立つところにポスターを貼るか、資生堂にオンリー店になんとか取引を拡充するのか営業の泥臭い努力と強引な押し込み販売が現場の肝でした。「資生堂の知名度と宣伝があればなあ」というのはカネボウの社員や得意先ですらたまに愚痴りたくなる思いでした。
ドラックストアもネット販売もない時代、街の有力な化粧品店薬局が主体で、大手メーカーと取引できれば、再販制度という価格維持で利益は守られていました。そんな温床の上で資生堂は長年、王者に君臨してカネボウは青息吐息ながら2位を維持して追いかけました。
カネボウが繊維本体の赤字で、超優良な化粧品に販促費を投入できない構造は、それでも化粧品事業単体で見ると、資生堂に比べ優良な利益構造の事業になっていました。これが後々花王に事業だけ買い取られ生き残る要因となりました。
カネボウはその後の本体の粉飾で泥をかぶりました。
しかし外から見てうらやましい反面、資生堂が完全独走とまでいかない大企業病、宣伝費がかかり過ぎ、いざ不況になると儲かりにくい構造になっているのは巷間でも囁かれていました。
その後、中国市場拡大グローバル化の波、カネボウも花王傘下となり、ドラックやネットで流通の一大変化も起こり、化粧品業界は寡占というより乱立の時代に入ります。
カネボウが美白問題でも凋落する中、資生堂にもかつて業界を席捲した神通力はなくなっていました。多くのモデルを抱え、莫大な宣伝投下しても化粧品は大手だけでトレンドを作れない時代に入りました。外資や薬系、かつての弱小一般メーカーもそん色なくドラックの棚に並び、ネット情報で消費者が好きなものを買うのが主流になりました。
今回のコロナ禍は、伝統的な制度に胡坐をかいていた体質の業界、企業を一気に加速して財政的危機に直面させます。テレワークが増えやリアル店舗が減少するなどは予測されていた未來です。
中国市場に強い資生堂は盛り返す機会もありますし、ブランドや人材もまだまだ強いはずです。伝統的な対面販売の在り方の未来をどこがしっかり掴み提案していけるかが、これから楽しみでもあります。

改装されたGMSの中のドラックの化粧品対面コーナー。GMSとの共同の新しい業態らしいいがこの時期にチャレンジングではあるけれど、占いコーナーみたいでした。占いがなくならないのなら化粧品に対面販売もなくなりはしないかとも感じました。

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