昭和33年 映画が娯楽の全盛 都会と地方は格差はもっとあった?

松本清張原作、野村芳太郎監督の『張込み』上映は昭和33年1月でした。日本の映画館入場者数は昭和33年(1958年)に年間11億人に達し、入場者数がピークになった年でした。
 街の大きな娯楽や、情報伝達も映画だった時代で。テレビの家庭への普及は翌昭和34年の皇太子ご成婚(平成の天皇)が契機ですから、映像ニュースは映画館が主流だったのです。
 清張原作の短編をより人間の業、情念を深く描いているとともに、時代の風俗、都会と地方の情景も良く描かれています。
 鉄道マニアには冒頭出てくる、東京発西鹿児島行きの「急行さつま」帰路長崎からの「急行西海」の映像も垂涎ものです。ときおり映る機関車、駅名標。沿線風景も貴重な映像ですし、このような長距離を立ったままや、硬い直角の座席で一昼夜過ごす旅も過酷そうですが当時は当たり前だったのでしょう。
 ストーリーとしてはネタバレにもなりますが、平凡で地味な日常に終始する28歳の主婦が究極的な選択の運命に翻弄されます。年齢といろんな習慣、世相も今とは違いますが、なかなかにどんな時代でもあり得る選択肢です。
 戦後の復興、地方にも活気はあったのも描かれています。しかし首都圏までの交通の便や、文化やインフラは大都市中心に進んだことも如実に分かります。地方で犯人を追いかける刑事が走る道がまた舗装もされず過酷なのです。すでに多くのネオンの描かれた東京との格差はある意味当時の方が大きかったかもしれません。

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