瀬戸内に浮かぶ「ウサギの島」の哀楽

 連休に久しぶりに旅をして瀬戸内海の小島を訪れました。
 太平洋戦争中は軍事機密として地図から消えた島とされていた大久野島が、今は平和なウサギの島として人気を集めているそうで、御手洗の大崎下島、国宝の多い大三島などとともにツアーに組み込まれていました。
 

 900羽以上のウサギはいて今や人は職員などの22人のみの無人島に近い島。かつて日本軍は勝利のためには当時の国際法にさえ違反する生物化学兵器を研究開発していました。
 戦争はどんな手段を使っても勝てば官軍という考えもあります。負けたからこそ歴史を歪曲され悪者にされる史実も確かにあります。しかしやはり法にも倫理にも外れた勝利はやがて手痛い敗北と滅亡の道に向かいます。
 

 戦争の怖いところは勝つと士気が鼓舞され、恩賞や論功のためさらに勝ち続けないといけなくなり民の世論もそれを推します。
 本当は平和望み、母は我が子だけは命を危険にさらす徴兵にも反対でももはやそれも言い出せない雰囲気、全体主義に押されていきます。

 人間が戦争を好みつつ、どこかで平和を願う存在。平和を愛しつつ、勝つためには殺戮の兵器を研究する矛盾した存在であることは、多くの歴史が証明します。第二次世界大戦も日本が先に原子爆弾を開発していたら使っていたかもしれません。事実敗戦を知った毒ガスの研究者は「殺される」と思いつつ「もっと早く毒ガスを開発できていたら」とも嘆いたそうです。
 それでも戦争の悲惨さ、核や生物兵器の危険を誰かが警鐘を出さないといけないのです。
 人間が戦争に巻き込まれると、フェアなスポーツ大会ではなく、人道上許されるかぎりぎりでも勝てば良いと思ってしまいます。
 戦争の全てを否定するものでもなく、その醜さと、平和であることの純朴さを、小さな島の野ウサギが語ってくれるようです。

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