憲法改正完全版2  核共有は有効か?地政学?

 長くなるから、たくさんの右翼の論客の提言を読んでもその評価等は主なものとする。玉石混交で、なるほどと思わせるものもあれば、ひどい思い込みだけのものもあります。

【かみ合わない議論】

 総じて、右翼と左翼はかみ合ってない、まともなディベートの土俵に上がってない。思想が違うから当たり前と言われるかもしれないが、仮にも政治家や批評家が、まともな議論をしていない。ネット上だけならいざ知らず、国会や公の場、こういった書籍でも、幼稚な喧嘩、一方通行なのです。

 かみ合わないことも多すぎる。そもそもディベートの前提が大きく違うところを、みんなこうだろうと思い込み、相手や一般に対する想像力が足りない。

 たとえば、左翼は元々の自分の受けたいわゆる自虐史的歴史教育を当たり前と思っている。日本はアジア諸国に一方的に狂信的侵略戦争を仕掛けたことが左翼では前提になっている。右翼側にとっては、南京大虐殺など、そんなのは少し考えたらわかるウソだとわかるとおもっている。それでは、靖国神社参拝問題、慰安婦等の問題など、歩み寄れるわけがない。

 自衛隊が違憲か、いくつかの問題で議論がストップしてしまいます。そもそも存在が曖昧で否定されるものではないことは、さすがに共産党でさえ分かっている。憲法改正の前にさえ、自衛隊法などでできることは可能なのにやれていないと言われる。これだけ安定多数を持った与党なら、迅速にやって欲しいところです。

 私はアメリカに作られた現行憲法は状況に応じ改正すべし派です。自虐史観は間違っていると思います。教科書の改定や現総理や閣僚の靖国神社参拝も何ら問題なくまして他国にどうこう言われる筋のものではないと思っています。

 そういう面では、保守。愛国かもしれませんが。戦争、防衛費拡充や、同盟強化、核共有については右翼の論客の提言の多くに疑問はあります。

【親米や自主独立か】

 およそ、右翼も親米と、自主独立派に別れ、お互い都合よく利用してる場合もあります。親米と自主は実は明確に違います。保守派、右翼の多くもアメリカに洗脳された親米がおり、逆に親中も保守の中にいます。

 右翼の論説は思った以上に、自主独立の提言、特に憲法に関しても多かったです。理想はそうでも現実にはアメリカの傘に入りたいという軟弱さも垣間見えます。安保、核共有は戦略性もありますが、自主独立とは相反する矛盾、ジレンマもあります。

 9条、戦争、核はロジック、ゲーム理論のようにもなってしまいます。戦争の現実、ウクライナの惨状の報道が伝わり、数が減ってきた戦争経験者の伝えるものから、どう感じ考えていくかが右翼と左翼で別れてしまうようです。

 【それでも戦争は回避すべき】

 私は、戦争に関していえばあらゆる可能性を考え、国体を保ちながら戦争を回避すべきだと考えます。それは理想や理論ではなく、現実を見つめ泥臭くても妥協点を探るべきです。

 街や家も倒壊し、劣勢の軍隊でもあくまでも抵抗しつづけるウクライナの徹底抗戦決断を称賛し、一方的な侵略に屈せず国の為に戦う姿とはこういうのが理想のように右翼は好事例、美学として主張されます。また櫻井よしこはウクライナが旧ソ連の核を保有していれば抑止力になったという核共有のロジックです。

 このあたりにはさすがに大いに違和感どころか反対に思います。

 兵士や市民、街の多くを犠牲にする前にまず停戦を考えるべきです。国のトップは国体を維持するこが責務です。市民の多くが大統領の決断によって犠牲になっている時点で、国体の一部が体を成していないので、大統領失格です。

 確かに武器をすて、戦争を放棄して占領を許した時点でもっと酷い国の運命が待っている可能性は自覚しないといけません。

 日本がアメリカに負け占領されると知った時、男子は睾丸を取られ、婦女子は皆暴行されるとかの噂が流れました。結果、僥倖のように、天皇制は保たれ、アメリカは概ね紳士的に日本の民主かを進め軍事的配下に入れつつ日本は復興し、経済成長につながりました。

 この苦い敗戦と奇跡の復興は、アメリカ信仰と他力本願の平和主義、戦争忌避を日本人に植えつけたとは思います。

 おそらく敗戦は、現体制や兵士にとっては全てを失う恐怖であり屈辱です。もちろん停戦、降伏にどんな状況かはケースによります。しかし、市民にとっては戦争で大義名分で死ぬのも占領されてその後苦しむのも天秤にかければ同じか、生きているだけマシかかです。

【核の間違ったロジック】

 核についていえば、日本へ原爆投下以降70年以上、戦争では使用されたことのない禁じ手の兵器です。その保有国が増えれば抑止力が増すというのは、今さら危険な論理です。

 平和憲法に抑止力はないと、右翼は左翼を鼻で笑いますが、櫻井の言を借りれば、全ての国が核保有か共有すれば抑止力が高まり戦争は無くなるのでしょうか。実際には、いろんな意味で核はオワコンで、危険でお金もかかり風評も悪いだけで残念ながら抑止力というものは弱まっています。

 北朝鮮は、狂ったならず者国家のように思われています。しかし、そんな国でさえ先制攻撃で核を使うとか、追い込まれて核を使う状況というのは実際にはありえないですし、あったとして攻撃された国が保有か共有で核を使えるから抑止、殲滅できるか、可否以前にこの時点で人類の終末と言われる核戦争になっています。さすがに、自暴自棄やそな応酬で、核を使うほど人類は愚かではありません。

 櫻井よしこが核共有の論拠としている、地政学的という核保有国の地図を上にのっけてます。

 戦争好き右翼は、地政学とか言い出す人がよくいます。細かい歴史を勉強しないで、大雑把に地図を見て判断する方がネットにもよくいます。地政学というより、地図のイメージだけの短絡思想で、「ロシアとは戦争もして相性が悪く地政学的にも日本の隣国で悪い国なので経済制裁しないといけない」とかびっくりする発想。長年、エネルギー開発や漁業の交渉でやってる人の苦労とか現実が想像できないのでしょうか。

 この櫻井掲載の地図見て、「日本は核保有国に囲まれている怖い、アメリカは遠いからすぐ助けてはくれない。だから舐められないよう防衛費拡充、核共有、核保有だ!」これも違和感です。

 櫻井よしこも中国の脅威、恐れを1章に渡り語っていますが、基本が中露嫌い、結局自主独立といいながら、アメリカ信仰、アメリカ洗脳なのでしょう。 

 【ロシア、中国とどう関わるか】

 ウクライナ問題で、同盟の強化とロシア制裁を強く主張する側に、ロシアの背後に中国がいるからとの中露嫌いが見えます。

 ロシアは軍備も資源もほぼ自前で用立てるほど豊富で、かつての日本や北朝鮮ほど経済制裁が有効ではありません。その国を追い詰め、中国とロシアをグループとして敵対するのは得策ではありません。櫻井よしこ自身が分析しているように、「世界最大の超大国」です。中国嫌いの人は現実的数値でGDPは抜かれたけど、日本やアメリカのが豊かで優れているという幻想にとりつかれています。まして中国とロシアがタッグを組めば最強です。インドやプラジルはじめ中東やアフリカ諸国もなびいている現状で、世界の警察を降り、ベトナム以降支援国は連戦連敗で中東にも嫌われるアメリカが欧州と組んでも太刀打ちなどのスケールではないです。

 地政学?で考えれば、中国とロシアは国境を接していて従来からは仲が悪い。中国とインドも国境を接しているので、揉め事が多く、逆に国境問題のないインドとロシアは経済的に結びつきが強いのです。日本はできる限り、ロシアと中国を追い込まず、かつ分断を考えた方がいいのです。妥協点は見出しつつ、経済連携など政治を絡めて結びつくのに越したことはありません。一党独裁でカントリーリスクがあるように思われますが、アメリカの方が2大政党制で、政権が変わると経済や行政のやり方が急変し、人も替わり取り付く島もない時が多いそうです。

 親中派とひと括りに、国賊やスパイのように揶揄されますが、要は親米派と同じです。特に中国が強大になれば、その存在は必要です。台湾有事やチベット、ウイグルの問題

、アジア太平洋戦争以来恨んでいるとか、脅威にされがちですが、中国とはもう経済や観光で深く結びつき依存しています。中国が一方的に、日本を破壊し、皆殺しにしたりすることはありません。

 日本が本当に戦場になるのは、アメリカが何らか戦争を影で誘発して、台湾有事が起こり、米中が火花を散らす代理戦争となった時です。米本土は離れていますが、地図で明らかな通り、戦場は東アジアになります。

 アメリカが戦争誘発というのは、やはり日本の右翼や愛国者をうまく焚きつけ、おそらく今のウクライナ以上に正義のため、聖戦として戦争になるはずです。

【防衛費は適正に】

 防衛費問題では、最近も元大臣や幕僚が、銃弾も少ない、演習の時間も少ないとかいろいろ戦い以前の問題で、予算増額を叫ばれていました。事実が、露見しているなら対敵国への情報漏れとしてもおかしな話ですが、現場のホンネなのかもしれません。ただ、日本の予算というのはどの役所でも増額しても本当に必要なところに適正に下りず、結局こういう現場の声は絶えないような気がします。

 イージス艦に5000億も使うことには、当時ハト派の自民党元幹事長野中広務氏は猛反対で憤っておられました。その他のミサイル迎撃システムにせよ、いかにもスペックは素晴らしくプレゼンに騙されそうな最新兵器でしたが、野中さん曰くの通り、現場で訓練の弾薬にさえ回せないのに、大見得を切っても敵に攻撃対象を与え、なおかつメンテナンス含め莫大な経費がかかるのは事実でした。

 【軍隊はあっても戦争をしない憲法】

 戦争をするために、仮想敵国に対し兵士や組織が常に臨戦態勢でいるということは非常に難しい問題をはらんでいます。自国愛と敵国への憎悪は一触即発を生みやすくなります。まして、兵士たちは戦い、武器屋は武器を作り売るのが仕事、ずっと仕事がなく、褒められることもないと、何らかのきっかけを求めたくなるものでしょう。だから戦争は放棄したものだという憲法は必要なのかもと思います。

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