秋の読書 書評:#熱源 翻弄され続けたポーランドとアイヌ

 ポーランドもウクライナの隣国としていろいろ事件にもなっています。

 ポーランドと日本のアイヌを描いた力作です。上梓は3年前で、ロシア人も出てきて、ロシア人よりもソビエトの体制や階級、人種などの今も続く問題も出てきます。そして何より、今も嫌悪され脅威となるロシアの姿であり、第二次大戦末期の哀しき動乱期です。

 写真は直木賞候補になっていますが、162回2019年の直木賞受賞された、大変熱い作品です。アイヌと和人のハーフ、日本人も出てくる点ではロシア人ばかりの「同志少女よ、敵を撃て」より読みやすいような気もしておすすめなのですが、やはりロシアやポーランドの長い名前は苦手という人は結構いるようですが、後半は一気に読めるという感じの熱い話です。このような歴史と海外の設定を日本人が紡げることは驚異だと思います。プーチンさんもびっくりではないでしょうか。

 「ラーゲリより愛を込めて」が映像化できるなら、日本人の登場はやや少ない比率ですが、何とか映像化して欲しいものです。

 アイヌとポーランド人の二人の主人公が平行して物語を進めます。周辺の強国に蹂躙され、国家が何度も滅ぼされた悲惨な歴史を持っているポーランド。かつては北海道や樺太に棲み、広大な平原を自由に生きていたアイヌ。

 樺太のアイヌ達とアイヌに魅了された人達の、自分達が何であるべきなのか、翻弄されながらも生きるための熱源を追い求めていくのがテーマでしょう。「アイヌとは人という意。強いも弱いも、優れるも劣るもない。生まれたから、生きていくのだ」降伏したことを知らずに、それでも“立派な日本人”であらねば、自分が自分達の存在が消滅してしまうと思っていたオロッコの日本兵の末路は切ないです。

 だいぶネタバレになりそうですが、このあたりで。

 登場人物の端の方に金田一とありますが、探偵ではありません。言語学者になる京助さんの方です。

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