各駅停車の人生でも良い

 昨日は、朝京都の自宅から大阪の日本橋、夕方に滋賀県へとややタイトな行程でした。往路は最寄の路面電車のような嵐電から阪急の準急(ほぼ各停)で日本橋まで大阪地下鉄堺筋線直通なので一度の乗り換えで乗り通しました。少し後発の特急に乗れば途中の茨木市で準急に追いつく案内も出ていましたが、そこまでほぼ各駅停車でもさほど変わらすゆったり行けました。

 青春18きっぷや、乗り放題の企画切符でついついタイトなスケジュールを組んでしまいます。快速から快速、ワープして新幹線などとすると、沢山進めるようで、駅間乗り継ぎでダッシュしたり、立って移動とハードにもなります。ゆっくりと普通電車で各駅停車の旅にも特急や新幹線にない醍醐味があります。

 特急や快速が通過する一駅一駅にできた背景があり、通学で利用する生徒や、高齢者、トイレがあり、改札があります。駅前があり、住宅やお店(営業しているかしていてないは別)があります。

 野村正樹さんという、サントリーの広告部におられビジネスや旅の著作を多数出されている著述家の2004年にだされた『嫌なことがあったら鉄道に乗ろう』という本があります。なかなか、人生の指南的部分もありビジネスマン時代から心のよりどころとしていました。

 世代交代、その引き渡す方の年齢になり、またその頃になって同年代や若い人、市井や公務員、いろんな人と会い、なるほどと再び感じることもありました。それぞれの人生は、鉄道車両や駅と一緒で新幹線もあり特急もあれば、快速や鈍行の普通も、路面電車や地下鉄もあります。

 人生のある時期は最速に駆け抜ける新幹線であっても、最高速度の世界記録を何年も続ける車両はありません。その時最新の車両でさえ5年も10年もしたら、最速の主力花形『のぞみ』などからは外され、二番手以下に格下げされ、やがて引退へ、速く多く長い距離を走った分リタイアも早いのです。

 在来線も特急や新快速車両は花形でもスポットを浴びる時期は短く、やがて普通や別の地方路線に転属もされます。鉄道車両は製造にお金もかかります。メンテナンスが良く、省エネで操作のしやすい車両は、保守点検や改造をしながら30年以上も地方の非電化区間やローカル私鉄で頑張っているものもいます。

 マイペースに、のびのびと、時に頑固なほどに淡々と毎日一つずつ駅を回っています。それを何十年とくりかえして、老いを迎える鉄道も車両もあります。

 鉄道の駅も、かつては町の中心や乗り換えの拠点、ジャンクションや大ターミナルだったものが何らかの事情で寂れて哀愁ただようローカル駅になっているところもあります。

 社会においても、花形とチヤホヤされる人もいれば、サポートに回りずっと影で支える仕事、外で汗水たらす仕事もあります。そして、どんなにエリートや花形だった人もいつか次世代に後を託す時は来るのです。長く走った、速く走った、地道に走った、多くのビジネスマンを乗せたか、ガラガラでも地元の高校生や高齢者に貢献した。それぞれの価値には優劣、何の違いもありません。

 引退する車両や廃止される路線、私のような廃線を巡るマニアも含め、そういうところに異様に人が集まるのはそういった惜別や哀愁の感情からでしょうか。

 もちろん、クルマや飛行機、夜行バスなども今は移動の手段で、路面電車や各駅停車の電車で揺られてなんてイヤ、グリーンやファーストクラスでないとという方もいます。好き好きでもあるでしょう。しかし、まあ知ってる路線でも知らない路線でも、一度ゆっくりと車窓を眺めながらの鉄道旅は非日常で心を癒します。

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