WBCあえてアマノジャクに問題を語れば

 WBCは予想通り日本では盛り上がり、準決勝で劇的なサヨナラ勝ち、決勝でも本場アメリカに競り勝ち、ドラマや漫画のような展開で予想以上に盛り上がりました。
流れに竿さす逆張りでもなく、コロナ禍や物価上昇などで元気のなかった日本に侍ジャパン世界一のニュースは素直に良かったと思います。

 最後に勝ったのが日本なので、これ以上の興奮はないわけです。日本は史上最強のメンバーを選りすぐり、決勝ではもう登板しないと言われていたダルビッシュ、大谷がリリーフ登板して締めくくりました。

 誰もが日本の優勝に快哉を叫んでいる時に、繰り返しですが水を差すつもりはないですが、少しだけアマノジャクとも言われるかもしれません。課題点というかあれっと疑問に思ったことを挙げておきます。
 まず、大会のレギュレーション、組み合わせが準決勝になって急に変わった件はやはり問題です。結果としてアメリカと日本の決勝戦、まして大谷とトラウトの夢の対決が最後で良かったという向きもありますが、それを許しちゃうともう、大相撲やプロレスレベルになります。優勝候補同士が、決勝までで潰し合うのも真剣勝負でのレギュレーションで仕方のないところのはずです。サッカーのW杯でこんなことは考えられません。まだまだ、花相撲的な大会だという印象を強めた今回の突然の対戦変更でした。日本の21日祝日準決進出は決まっていたと考えてしまうと、全てが〇百長でないにせよ、この決勝戦を主催者側が強く推したっぽく感じられてしまいます。

 メキシコはメジャーの主力投手2人が日本戦前に所属チームとの申し合わせで離脱しています。メキシコの3番手や4番手は正直力もコンデションも今一つで日本の逆転劇に繋がりました。あそこまで日本のメジャーリーガーが身体を張り、気力を漲らせ、決勝まで出まくっていることを考えると、限られた条件の相手と一方的にガチンコしているようで、これはと思います。もちろん、日本が最強メンバーをそろえガチに優勝を狙い勝ったことで、大会の価値は上がり次回以降相手もメンバーを揃え盛り上がる成長過程の大会であれば、それはそれでいいのです。
 シーズン前という期間も問題はあります。プエルトリコのクローザーでメジャーのメッツの守護神でもあるディアス選手がドミニカとの激戦を制した勝利の後、大怪我をしてしまったのも難しい問題を浮き彫りにしました。競技に負傷はつきものですが、メッツとは5年135億の大型契約をしたばかりの選手の負傷は、シーズン前の大会の位置づけを難しくします。試合中ではなく、終了後のアクシデントなので何ともですが、1シーズン棒に振った選手も球団も真っ青です。
 その他の選手、日本チームも、鈴木誠也外野手、栗林投手が体調面で直前辞退、源田遊撃手が負傷しました。その他の選手も普段の年とは違う時期から違う環境での練習や、移動、試合を経験しました。日本は優勝しましたし、今回集まったメンバーがこの経験を活かし成長するとは思いますが、今シーズン疲労蓄積での故障や、不調にならないとは限りません。逆に温存した国の代表や、辞退した選手が代表選手を上回るケースも出てくると、大会の評価は変わってきます。

 栗山監督は、選手時代は決してスター選手、大選手ではありませんでしたが、マネジメント力は大いに評価されています。元日ハムの監督だった彼でなければ、大谷やダルビッシュを招集し、あそこまで投げさせられなかったとも言われます。
 しかしそうなると今大会の優勝というのは、選手の力量や監督の采配というよりも、折衝力や政治力の意味合いが強くなってしまっています。予選リーグから準決勝まで日本の選手層は他国チームを圧倒していました。良い選手をリミッターなしで集められれば、へぼが監督をやっても勝てます。かつては胸を借りた大リーガー、日本なりの弱者の戦術などが入る余地がない感じなのは、複雑な思いです。
 潤沢なメンバーにしたため、パ・リーグの本塁打王がほとんど代打だけの控えに甘んじ、セーブ王もほとんど出番なし、追加召集選手もほとんど出番なしで終わりました。ある意味そういう冷遇がイヤなのと、チームとの調整で辞退した選手もいます。今回選ばれて使われなかった選手も文句は出ない雰囲気ですが所属のファンとしてはやはり失礼な扱いと言えます。連携を試し、調整をはかるオープン戦の大事な時期にほとんど出番なく終わった主力を迎えるNPBの球団も、本人も複雑なはずです。興行的にも、活躍した一部のNPB選手はいいとしても、出番のなかった主力の球団は難しいイメージがあります。
 野球というのは、攻撃と守備がある程度力量が合わないと、全く試合が終わらないし、面白くない難しい面を持つゲームです。世界大会に、国籍では強い選手でチームが集まらず、メジャーから日系などルーツ選手を貸し出す許可をするなど伝導の意味合いもあるのです。それもゲームや大会を面白くするためです。

 それならば、勝つだけではなく、召集した選手はちゃんと出番を作らないと、疲労など関係なしに連投とか出番が偏るのでは、勝った方はいいですがその場限りで誰もが面白いゲームになりません。
 球数の制限もなのですが、せっかく細部をレギュレーションで決めれば、もう少し突っ込んだものがないのかと思います。
 何だかもどかしいことが多く、そうなるとつまるところ、WBCの優勝ってどれだけの価値があるの、代表を選ぶところでシャカリキになった国って日本だけじゃないかとなります。大谷が真剣な表情で必死になり叫ぶ、村上が苦悩から立ち上がる、近藤や吉田の冷静でもスゴイ技量、佐々木をはじめ投手陣の粘投、どれも否定するものではないです。選手が頑張っただけに、その周りの人も含め、今後もしっかりした大会にしていくように関係者が熟考していくのと、少なくとも今シーズンはWBC選出の選手たちが怪我無く活躍することで、優勝の価値をさらに高めるのだと祈念します。
 個人的には私は実力世界一を野球で決めるのは一発勝負では難しいような気がします。サッカーのような多くの国に広めたいこのような大会はエキジビション的な意味では必要です。それとは別に、どうぜ強豪国の数は限られるので、ラグビーのような対抗戦にしてホームアンドアウエイの数試合戦い雌雄を決するガチンコの実力世界一決定戦が良いのではと思います。

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