月まで行ける自転車 (生涯最大の危機と運命の再会)  #コイバナ#運命の再会#ラノベ#剣道少女

マジックリアリズム風ラノベ2、叙述トリックとリアルを少し混ぜて、なぜか、イメージ西野七瀬

 【プロローグ
 長く生きていると、思いもかけない危機に遭うこともありましたし、そこで運よく助かったこともあります。また思いがけない人に奇跡的な確率で再会することもあるものです。
 危険に遭うことは命を落とすかもしれなかったのですが、それでも生かしてくれた運命に感謝するとともに、その巡り会わせの妙には驚きます。
 化粧品会社にいたので、大変美しい女性ともたくさん出会いました。
 男性が悪い、女性が悪いということではなくて、人の運命というか、美人すぎる〇〇的な人もいれば、美人薄命という感じの人もいました。「傾国の美女」という言葉もありますが、そういう間違いで堕ちた人は男女ともいましたし、私は踏みとどまった方なのかもしれません。


 【再会
 十何年ぶりかにかつて在籍した県に戻り、全くの偶然に随分前に退社したある女性、久我カズミ(仮名)を見た時、年齢を重ねた以上に老けて、やつれてやさぐれた姿に衝撃を受けました。清楚で美しかった姿から、想像もつかないくらい肌にシミや皺が増え、整形痕のような線凹みが目立ち、中途半端な毛染めで髪の毛の手入れがされていませんでした。その人のあれからの人生の厳しさを想像し胸がつまりました。私は気づかれないようにその食堂の隅に座り定食を頼みました。目は合ったはずですが、私に全く気付かないのは、視力が元々良くないのもでしょうが、観察力や想像力が足りないような彼女らしいといえば彼女らしいところに思えました。
 いや、自分の目が衰えての錯覚、すべては夢だったのでしょうか。

 【誘惑
 私もさまざまな誘惑というのか道を誤りそうな危険はありました。彼女との話、それは生涯でも最大の危険に見舞われた時のことです。
 それは私が結婚して何年か経ち、子供が小さい頃に部下だった人との話です。当時私はある県に赴任して間もない頃です。私の配下のチームに、名前は久我カズミさん、カズミは、タイプとしては別の有名アイドル女優Kに似ていて、実際にはそのKよりもキレイじゃないかと思われるくらいの美人でした。私が出会った女性の中でもトップクラスには入ったでしょう。
 かといって、とくにをひいきするとか、親密になるようなことはなかったですが同僚は妬みなのかどうも一線ひく感じで孤立していました。
 カズミは私の担当の中でも、取引額も大きい、難しい拠点に入店し堪えていました。取引先で見るカズミは清楚で凛とした美しさでしたが、彼女の評判は「キレイなんだけどね、」と妬み半分の辛口が多かったようです。
 夏の終わりで台風が通過した頃のある日、カズミの方から、どうしても今夜食事をしながら大事な相談をしたいと誘われました。内容は詳しくは食事しながら話すが、家族や仕事にも関わる複雑な案件と言いました。それも彼女の家の近くを指定されました。
 取り留めない話をして、なかなか要件を話さないうちに食事を終えると、自分の家に来て欲しいといって、自分の車で案内するからと半ば強引に誘いました。台風で増水した川の近くにある、少し著名な観光地を過ぎ、家の近くで降ろされました。
 私は家には入らず観光地に通じる道路に歩き、やはり外で話そうと提案しました。彼女はどうしても家に来て欲しいと言いますが、私は独身女性の家には入らないと拒否しました。川沿いの適当なベンチを見つけると、そこで話そうと言いました。しのぶは家から見せたいものと渡したいものがあるので、そこで待ってくれと一度家に戻ります。携帯も圏外で、少し待つのも寂しいようなロケーションですが、地元の中年女性がジャージで一人でジョギングしているぐらいなので、そう危ないほどでもなく、不審な目で見られるのはこっちかもしれないと思いました。

危機
 しばらく経って戻ってくると、カズミは洗剤、鍋、サプリメントを持ってきて、
「自分の大事な弟が困っているのでどうしてもこれらの商品を買って、今すぐには現金でなくても、クレジットカードで契約だけして欲しいの、どうしても商品が気に入らなれれば解約はできるわ」
 私に顔を寄せ、手を握り懇願した。悪名高いマルチ商法の商品でした。
「今夜中に契約がないと私も連帯保証で会社を辞めて身体を売るような水商売で働かないといけない。
 契約してくれたら、何でも言うことを聞く。そうでないとは自分はあなたの前からも会社からも消えてしまう」
 と涙声で訴えました。契約は1年で170万ほどになる内容でした。一部上場企業の中間管理職が払えない額ではないです。
 私はカズミと距離をとり、視線を商品と彼女の交互を見て時間をとりました。さっきのジョギングの女性がもう一度通過してくれたおかげで、もうしばらく考えをめぐらす時間ができて助かった気がしました。私は最終の電車時刻と、現在の時刻を確認し、徒歩で帰らされて歩いて帰るとしての時間も計算しました。
 彼女の女優さんのような美しい顔の誘惑に勝つほど倫理や理性があったというよりも、他の可能性を考えると躊躇いが生まれました。
 今日のところは大きな金額でもあるし、こちらも家に帰って検討したいというとカズミの顔色が変わりました。
「どうしても今夜でないと、私は連れていかれる。電話で交渉して確認するから少しだけここで待ってくれ」
 と慌ててカズミは家に戻ったのだったが、ほどなく家の方からきたのは人相のあまりよくない若い男が2人だった。後ろにカズミがおびえた顔で従っている。
「お前が女の上司なら、潔く責任とれ」という意味のかなり汚い脅しの言葉が飛び、カズミは涙声で「お願いだから、私のために契約して」と繰り返す。
 私は男たちの前に1万円札と千円札数枚入った財布を投げつけた。あらかじめ何枚かの札とカードは抜いておきました。私はカバンの中にわりと大型のカッターを持っていました。店頭で段ボールやPOPを切ったりの作業をするためで持ち歩くのは違法ですが、護身には心強い相アイテムです。
「これで勘弁して解放くれ、彼女にもこれ以上からむな」
 そうとう心臓バクバクだったが強がっている様子まで悟られまいと啖呵を切って、カッターをカバンの中で持ち構えた。財布の中を見て男の一人が激怒した。
「こんなハシタ金で、逃げられると思うな」
「それで勘弁してくれないなら、私も命懸けて戦う、勝てるかどうかは分からないが怪我はするかもな」
 私がカッターを向けて構えると、男が合図をした。残念ながら、仲間はもう二人いた。しかも二人ともいわゆるバールのようなものを持っている。得物の長さでも人数でも不利、我ながら、生涯でも最大級、かなりピンチだとは思った。
 大声を上げても近くに彼女の家以外には明かりのついた家はない上、携帯電話も圏外のままだった。騒動を聞いて通報してくれそうな期待も薄い河川近く、このまま頭でも殴られたら一巻の終わりか、子供と妻、両親や友人の顔が浮かんだ時でした。

奇跡
「あんたら、そのへんにしときなさい」
 男たちの野蛮な声を断ち切るような凛とした声。
 自転車を降りて助けに入ってくれた人がいました。
 自転車をおりるや、気合のこもった「タァーッ」という叫びとともに疾走してきて私の前に小柄な女性が立っていました。
「なんや、おばはん」
 先ほどから、ジョギングしていた女性が、自転車に乗って戻ってきたのでした。台風で落ちていた太目の枝をバールに対抗する竹刀のようにして上段に構えています。
 女性でもお構いなしに、バールを振りかざして迫る男たち。
 流れるような早い動きで、バールをかわして間合いを詰めます。
 あっという間に二人の男のバールを小手で打ち払い、胴も打った。もう一人も腕を小手で叩きましった。いきがっていた首謀者もそのスピードと気合に完全に圧倒されていました。それでも手加減しているほど実力差が明らかで、すでに戦闘意欲はなくなっていました。
 中年女性は明らかに剣道の有段者で、不審な動きを察して防犯パトロールと篭に貼られたママチャリを家から駆って戻ってきてくれたのでした。
「女はグルやろ、騙されたらアカンよ」
 カズミは首謀者の弟?とともに舌打ちしながら逃げるように去っていきました。
「井上くん。危いとこや。気ぃつけな。駅まで送ったげるわ」
 まさかと思ったが、助けてくれたのは、かつての高校時代の同級生でした。高校時代剣道少女だった彼女は、同じ大学に進みはしたが、学部もサークルも違い、卒業する直前に就職探しの掲示板の前で一度だけ最後に会ったキリでした。
 その後は同窓会に出た友人に結婚して他県に住んでいるとだけ噂に聞いていました。
 十数年ぶりで、よく自分だと分かってくれたものだと感心しました。彼女は私が化粧品会社に就職したことは知っていて、最初にベンチで見かけた時から気付いて見ていたそうでした。相手のカズミは町内でも派手で色仕掛けの悪徳商法に関わっていることもわかっていて、そこにまんまと、同級生の私が呼び出されているという構図だったようです。

同級生
「ありがとう、何とお礼を言っていいか」
「かまへんよ。地元の恥や、情けないい連中よ、静かな田舎やのに」
 たしかに、かつてのほのかに想いを寄せた美少女とは気づかなかった。でも凛々しい女性に変わりはなく、その顔にはかつて憧れた面影がはっきり残っていました。化粧をばっちりした若いカズミと比べても、天使か菩薩の神々しさを持った輝きがありました。
 お礼をしたいと言うと、もう遅いから駅まで最終列車に乗るには急ぐはずだといい、自転車を使っていいから早く帰ったらと、固辞された。
 自転車まで借りるのはさすがに恐縮したが、駅までは夜道で距離もあります。
 彼女は、自転車を乗り捨てても困るから、二人乗りで後ろに乗っていくことを提案しました。さすがに私が後ろに乗る訳にはいかないのと助けられた立場なので、その提案を飲まざるをえなかったです。
 近所に見られたらまずくないかといったが、笑い飛ばされました。
「いくつやと思てるん」
 恋心があってもなかっても十数年前、もうお互い40の大台になる年齢の中高年ペアの相乗りでした。私は元剣道少女の腕が後ろからしっかり胴に回され、抱きつかれた格好で走り出した。
月までの自転車
「〇△神社の前を回って、近道、段差に気をつけて」
「月が綺麗、満月やのに星も良く見える」
「田舎やしね、明かりが少ないさかい。それっ、月に向かってママチャリ、このまま行けっ!」
 慎重に、でも段差の揺れで二人はますます強く密着してしまう。
「井上くん、昔と全然変わらへんしすぐわかった。私なんかすっかり真っ黒な田舎のおばさんになってたでしょう。さっきから全力で走ったし、汗だくや,お化粧もせんで恥ずかしいわ。ごめんね、いっぱい走って暑かったし、汗臭いやろ」
 元剣道少女が結婚して変わった姓は、そこで初めて分かりました。
「〇〇さんこそ、変わらへん、キレイやで」
「お世辞やん。エエおばはんになってもた思うてる」
 それでもつい旧姓で呼んでしまった。坂道で段差があり、バウンドするぐらいに揺れて、柔らかい彼女のお腹やら胸が何度も当たってくる。結構なアップダウンが続いた。
「ごめん、汗臭い、汚いおばはんに抱きつかれて堪忍や。井上くんも、もう結婚してるんやろ?奥さんに怒られるわ」
「うん、結婚はしてる」と応えると、
「幸せそう、井上くん優しいから奥さんも幸せやろね。私も幸せ、旦那はそんなにかっこよくはないし、もうデブのおっさんやけど。面白いし、ああ私もチビデブか。ダイエットのために走り出して、マラソンにも出てるんよ」
 月明りに照らされた神社の参道付近の道は、ますます段差がありいつ終わるのか見えない長い道に見えた。揺れを抑えるというよりも、転倒しないように慎重にしっかり漕ぐことに集中した。しっかりつかまっている元剣道少女から何か暖かいような、柔らかなふわふわしたような感覚が伝わってくる。
 何だか、いつまでも終わらないような時間と空間に来ているように思えてきました。
 いつの間にか、自転車のタイヤが膨らんできて、まるで空を飛んでいるような感覚になりました。いつの間にか、月が巨大になり自転車は上空まで浮かびあがっています。
 自分がどこで何をしているのか、夢をみているような感じで、卒業した高校に通う若い自分の姿を第3者の視点で見ているように、脳裏に浮かびました。
 授業中や通学途中の姿、バイクやバスに乗り、友達と他愛なく喋り、授業に難渋してノートを取り考え込み高校生の自分の姿、それを見つめている思念が脳裏に転送されているようなのです。
 そして、次に場面が変わると、チヤホヤされながらの仰々しく暑苦しい結婚式場。その後は、何だか古く大きな家で、掃除や洗濯を延々とこまごま叱責されながら指南されているような女性目線の世界でした。親戚一同が集まる中で旧家で行われる葬式であいさつから接遇に気遣いしながらまわる、辛く平凡で味気のない日常、昭和から平成時代への主婦の体験の記憶なのか、思念のようなものに覆われました。
 漕いでいるペダルの感覚だけが続き、段差の多い坂からやっと平坦な道になったようでした。
 気が付くと〇〇駅にたどりついていました。
「やっと、到着、井上くん、疲れたやろ」
 足やお尻は痛かったですが、私は改めてお礼がしたいと言ったが、
「絶対にいらない。もうお礼はしてもらっているやん」
 とピシャリと言い返されました。
「えっ?」
「あたし、高校時代に井上くんのバイクの後ろに乗せてもらいたかんよ、見たんよ、誰か乗せてるとこ。風切って気持ちよさそうやったし、かっこよかった。こんなに後になってかなうなんてね、オバハンの昔の夢がかなってこの上ないお礼やから」
「ウソやん!?」
「ははは、さあウソかな。で、奥さんに報告するん?今夜のこと」
「ははは、ちゃんと報告する」
「それこそ、ウソちゃう。キレイな若い子にひっかかって、昔の同級生のおばはんに助けられ、二人乗りしたてとこまでやで」
「ははは、どやろね」
「ああ、でもさっきはウソついた、あれ近道やなかった。〇△神社の神さんに、今日の偶然の出会いを報告しな思うて、まだ時間あったしな。ちゃっとあの坂と段で試してみた。あの時、井上くんがあの坂にちゃんとまっすぐ踏み外さんと、耐えて走れるかなって、ちょっと、、」
「ちょっと、何?」
「ううん、何でもない。ちょっとでも、そう長いことお尻痛いくらいやと、今度からもっとキレイな人の事警戒するやろと」
「はいはい、痛かったで。漕ぐのもシンドイし、今度からもっと注意します」
「はっはは。長生きすると、いろんないいことがあるもんやね。あの女の人もあんな別嬪やのに人の道間違うたんやけどね。やり直せるんかな。私もね、けっこう辛いときもあったんよ。知らない田舎に嫁入りしてん。でも道だけはまっすぐ踏み外さんかった。負けたなかった。剣道で根性鍛えてたから負けへんねん。本当にお互い、生きてて会えてよかった」
「うん」
「SNSとかはやってへん、連絡取り合えるよ」
「やってない、メールも、うん、井上くん、本当にいいの、もうエエよ」
「そやね、わかった」
 何か、全てではないが、分かったような気がしました。
「あたし、ホンマにおばはん、元気やけど顔も体もホンマに真っ黒のチビのおばはんで田舎の片隅でまっすぐ生きてるさかい」
 カンカンカンカン 
 最終の1本前の電車に間に合いそうでした。
「よかったやん、最終の前やし。あたしも家帰らな、」
 自転車に跨る彼女でしたが、思うようには進みませんでした。なぜなら荷台に私が乗り後ろから彼女を抱きしめたかたからです。
「神社までもう一回行って、戻ってこう」
「エエよ」彼女はうなずいて、その後は無言でペダルを踏みだしました。最初はゆらゆらと、その後はまっすぐに道を走れました。私は彼女の後ろに座りピッタリ身体を寄せました。そして高校時代ずっと憧れていて、好きだという気持ちで、いつも見ていた彼女の情景を思い出していました。そして、その後社会人になって、さまざまな悲哀、苦楽があったことも振り返りました。自転車はゆっくりと、揺れながらもまっすぐ前に進んでいます。やはりちょっと、ふわふわと浮くような感覚も生まれ、さっきとは逆の姿勢で、まったく逆の流れで自分自身の記憶や思いを脳裏に浮かべました。それ以上に何かの方法、手順があるのか分かりませんが何が正解だったのか確かめようもないことです。
 満月だけが、すべてわかって、笑って見ているようでした。
 2回目の、逆パターンでの神社への往復以降は、ほとんど会話を交わさずに、それは話題が尽きたとか気まずいとかではなく、あまりにも脳裏に入った情報の量が多く、声にもならないし、陳腐な言葉にすることは難しかったのです。ようやく口を開いた方は彼女でした。
「月までは、行けへんかったね」
「ママチャリやしな、30年かかるかな」
「じゃあ、またその頃」
「うん、そのトシやと電動アシストは要るな」
「ははは」 
 二人とも泣き笑いみたいな感じの表情で見つめ合った気がします。最後の電車がくる近くの踏切音がしました。
 カンカンカンカン
 結局連絡先も交わさない、また会う約束もしないで、最終電車で帰りました。
 
 【エピローグ
 久我カズミはその後、1カ月くらいは在籍していましたが、ほどなく退社しました。金髪になり歓楽街で働いていいるという話を聞きました。冒頭に彼女に似ているアイドル女優がいると書きましたが、そのKがその頃飛び降りで自死してしまいひどく驚いたものです。
 私もこの県にその後2年半ほどいましたが、元剣道少女の同級生とそれ以後会うこともすれ違うことも無かったです。
それ以降私が昇進しても、いや昇進するほどに女性からの誘惑のような機会は増え、人の道から外れるような甘い誘いはたびたびありました。
 でもあの夜のことを思い出すと、二重にそんな気にはならなかったのです。ひとつはどうせ色仕掛けの罠のようなものかという疑いからでもあるのと、もうひとつはやはり、まっすぐな道を漕ぎ続けたいというあの自転車を二人で乗ったときの不思議な気持ちからです。
 地味でも、世の片隅でもまっすぐに生きることで、素晴らしい奇跡が起こることをあの月が教えてくれたようだからです。

 さらに十年以上を経て、その県でまた仕事をして冒頭の話の食堂で久我カズミを見かけた時代となりました。その食堂で、この地区であった劇的な出来事を思い返さずにいられませんでした。
 昼前に通った、あの時の観光地近くの川沿いは、キレイな遊歩道になっていました。
 その県のスーパーやドラッグストアで仕事をしている自分を元剣道少女がどこかで買い物しながら見守ってくれているような気がしました。
 その遊歩道をジョギングするジャージ姿の女性を見かけました。ちょっと期待しましたが、それは同年代の女性ではなく、中学生か高校生の女の子でした。
 でも、クルマの中からチラリと見えた顔は、高校時代の元剣道少女とそっくりの美少女でした。慌てて見返そうとしてもクルマはもう遠くまで走っていました。
 引き返すこともなく、〇〇駅の踏切にもひっかることもなく、滔々と流れる川を横目に走り去ってきました。
 そして、入ったのが新しい遊歩道には似合わない、昔からあった食堂です。
 やはり、すべては錯覚か夢うつつのことだったのかもしれません。
 もうこの地区に来ることもあるまいと思いました。気を取り直して、昼の定食を食べようと届いた盆の上の皿を見ると、焼き魚が他の人と違い倍の2尾あり、コロッケも2個のっけてくれていました。
 振り返ると、カズミが私を見て、サムアップ。指をたてて、笑っていました。

剣道少女は負けない #コイバナ#ラノベ

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