出典:厚生労働省「就労条件総合調査」野村證券編集
大卒で定年退職した人の退職金(45歳以上、勤続20年以上の平均)推移のグラフです。
少し前に問題になったいわゆる「定年後2000万円問題」60歳定年後の誰もが、年金を受け取るまでに預貯金が2000万必要とか、退職金だけではとても暮らしていけないと嘆く時代です。年金も退職金も20年以上遡るひと昔前の退職者の親ぐらいの世代ですと、今より1000万ぐらい多いのが如実に分かります。
そうです、この20年で厚生年金の受け取り額も下がり、退職金もジリ貧の体たらくです。
IDECOが導入され、企業の負担も減ったはずなのに、退職引当金は他の内部留保に回されていたり、それ以前にバブル以降そこまでの利益がない企業も多いのでしょう。
私の知識不足、リサーチ不足なので、不明を恥じる想像の部分が多いのですが、いったいなぜこんなに退職金が改定され、下がり続けることが許されてきたのかが良く分かりません。
というのは労働者に不利益を伴う退職金の改定は、労使の合意が必要で、労働組合が断固拒否すれば、おいそれとできない取り決めのはずです。
毎年毎年、春闘では賃上げを要求し、それなりのポイントで妥結しているのに、こんなに平均の退職金が下がっている。多くの大企業から中小企業までほとんどの企業の労働組合が甘んじてその改定を呑んでいるということです。
共産党や野党が選挙やらで増税論争のたびに、「企業の内部留保をやめさせ賃上げや待遇改善に回せ、増税なら法人税を」と言いながら、退職金がどんどん下げられるのはスルーされていたのです。
退職金の改定、春闘などの闘争ポイントでは直近の対象者が少ないので、全員が目先で全て対象になる賃上げや賞与ほど注目されない点があります。私も若い頃、労働組合員で職場委員や支部長などはやったことがありますが、自分にすぐ降りかかる課題ではなかったのか、記憶に薄いほどです。
しかし、今老後資金が多くの中高年の労働者に問題になる中、こんなに不利益に改定されたのは目くらましか「陰謀」でもあったのかと思えるグラフです。
多くの企業が昭和から平成にかけ、バブル崩壊からコロナ禍まで失われた30年ほどの間に、不祥事やら経営危機、合従、M&A、持ち株会社化などで平準化されたり、大規模なリストラもあり激動の中ではありました。
企業独自の、社内福利厚生などいい面があっても、平準化の中では停止されるものもありました。
AとBという会社が合併する場合、たすき掛け人事や支店の統合なども大変ですが、労働組合も、給与などの人事制度も最終的には統合されていきます。そんな中で、優遇されていたものは同水準に統一されていきます。
リストラなどは、組合交渉もまず雇用が優先されて、早期退職などの退職金割り増しの提示がされ、総じてその際の枠組みの中で、賃金、賞与、雇用が守られて、退職金の積み立ては早期退職者に回すために残る社員の分を漸次減額されていったとは推定できます。
それにしても、組合の力の無さなのか、経営陣に丸め込まれたのか、このグラフは納得できない数字です。春闘で、妥協点が最初から出来レースで分かっていても、徹夜交渉とかで、微増を勝ち取るとか悦ばせておいて、退職金はしれっと(早期退職増額を目立たせながら)改定していったのでしょう。
死んだ子の年を数えても仕方ないですが。バブル以後の労働組合などはもう頼りにも何もなりません。コンプライアンスが社会にも浸透しだしたので、あからさまなパワハラ、セクハラ、労働協約違反は減りつつあります。それは労組が守ったのでも何でもなく、監視の法律が強化され社会全体が変わったのです。
老後の退職金が時代とともに減ったことは、あからさまで分かっています。もう少ないことが分かって就職した人は自分で準備しないといけないことです。
数字で改めて見ると減っていった時代を経験した我々の世代は残念なことです。
労働組合は選挙の集票などやめ、もっと、本当の福利厚生、労働者の幸せ、退職金がこれ以上下がらないよう、努力しないといけません。