高齢者のマラソンではなく、高齢者が子供の頃見ていた特撮の中のお話。
『ウルトラセブン』第26話「超兵器R1号」(初回放送1968年(昭和43年)3月31日)。兵器開発競争を皮肉ったウルトラセブン史上に残る重いエピソードです。当時は冷戦やベトナム戦争の真っただ中であり、このエピソード自体が核抑止による終わりの見えない軍備拡張を風刺したものであるといわれています。
ソ連は崩壊したはずなのに、大国が武器供与をし核をちらつかせて局地戦が続く緊張は今も同じです。
劇中、ウルトラ警備隊が属する地球防衛軍は侵略宇宙人への対抗策として、新型水爆8000個分の破壊力を持つ惑星破壊兵器「R1号」を開発し、ギエロン星で使用実験が行われることになったのです。セブンであるモロボシ・ダンは参謀たちに実験中止を進言に行くが、途中でフルハシ隊員に制止されます。
「忘れるなダン、地球は狙われているんだ。今の我々の力では守りきれないような強大な侵略者がきっと現れる。その時のために···」
「超兵器が必要なんですね」
「決まっているじゃないか!」
「侵略者は、超兵器に対抗してもっと強烈な破壊兵器を作りますよ!」
『我々は、それよりも強力な兵器をまた作ればいいじゃないか!』
「·········それは、血を吐きながら続ける···、悲しいマラソンですよ」
生物もいないだろうということでR1号の実験に使用され爆破されたギエロン星には生物が存在し、R1号の放射能の影響を受けてウルトラセブンのアイスラッガーも通用しない凶暴なギエロン星獣に変異し、復讐の為に地球へ降り立ち放射能の灰を吐き地球に甚大な被害を与えます。
最終的にギエロン星獣はセブンに倒され、事件の反省から新型兵器R2号の開発も凍結され、物語はカゴについた回転車で、延々走り続けるリスの映像で幕を閉じます··
·地球の平和を守るという口実の元、人類が科学を暴走させてしまう警鐘めいた話はこの後の特撮アニメ作品にも登場します。
ウルトラセブン自身が人類よりも優れた超兵器を持っている矛盾、星間戦争が本当に一方が正義で相手が悪いのかという問題もシリーズの他の作品にも見られるテーマです。反核とか、安保と自衛隊とかを揶揄しているなら当時の子供には難しい内容だったようです。この放映から50年以上経っても人類は当たり前に言い訳しながら苦しいマラソンを続けています。