昔の漫才ブームを席捲した一組「今いくよ・くるよ」のくるよさんも先ごろ亡くなられました。お二人とも京都市生まれで、いくよさんは胃がんで9年前に亡くなり、くるよさんは76歳膵臓がんということでした。
奇抜な衣装とアンパンのように丸い顔、太い体形で身体をはったお笑いでした。今の女芸人のようにこじゃれたセンスも生き方もないです。昭和の芸人ということで、女芸人は結婚したら終わりと師匠や先輩筋に言われたことを守ってか生涯独身を貫かれ、晩年は闘病でそのふくよかだった身体もすっかりやせ細り小さくなって車いすで舞台に立たれていました。
生涯を芸に捧げたのでしょう。ねじ伏せられるような力で自分の使命、生きる意味を感じ取られます。
「何のために生まれ、何をして生きるのか わからないまま終わるそんなのはイヤだ」
アンパンマンの歌詞にこういう節があります。
まさに芸に身をささげた漫才師は己の生き方に自信を持ち、他にないと燃え尽きたのでしょう。
訃報に接するとついつい自分の年齢や親の享年と重ねて比べたりしますが、全く意味はありません。生きた時間に重要な意味はないでしょう。衛生状態がよく、医学や薬も良くなり、平均寿命がのびたのですから、全体に世代で伸びていて個人の自慢にはなりません。
戦中から戦後すぐは「生き延びることと、子孫を増やすこと」が生きる目的にもなったサバイバルの時代でそれでも良かったのです。しかし、戦後恵まれた時代に、ただサバイブだけが生きる意味では何かもったいなく空しいでしょう。戦争や大災害、ガンから生き残った意味は必ずあると、わかる時が来ます。
「何のために生まれ、何をして生きるのか わからないまま」生き続けるのは、それでいいとも人もいますし、ヒーローや天才でなくともその意味はあるのですから、そこへの道筋ぐらいは生涯の間に気づきたいものです。
アンパンマンの作者やなせさんは、それゆけアンパンマンはじめOP、ED、多くの挿入歌の作詞をされ、軽快で躍動感のある曲にのって大人にも人生を問いかけるような深い意味の歌詞が多いです。
東日本大震災で多くのテレビラジオが被災状況や安否、訃報など暗いニュースでCMさえ流れなくなった時、NHKラジオが震災後初めて「それゆけアンパンマン」を景気づけに流し、被災地などの多くの大人も子供も感動し、涙を流しながらも勇気づけられてた逸話もあります。
「愛と勇気だけが友達さ」という有名な少し意味深部分があって、よくツッコまれています。「アンパンマン友達いないんか?実は暗いやつかな」というもので、テレビ局も問題視して採用するか悩んだそうです。アンパンマンにはカレーパンマンや食パンマンなども戦友のはず、ジャムおじさんバタコさんはじめカバオくんら多くの仲間もいます。
作家の意図は、悪を倒す戦いの際にはそういう仲間をまきこまないで、愛と勇気という使命だけで孤独に戦いに臨むのがヒーローなのだということだそうです。これは最近知ったのですが、確かにちょっと難解ですね。
来年春の朝ドラはそのやなせたかしさんとその奥さんをモデルにして今田美桜さん主演で放映されるそうです。やなせさんの人柄にも興味は生まれました。
多くの人生は「愛と勇気」だけが支えで戦うのかもしれません。孤独でやりきることで、何のために生まれ、何のために生きるのか分かる時が来るのかもしれません。