
「同志少女よ敵を撃て」で一昨年本屋大賞などを受賞した逢坂冬馬の、海外を舞台にした歴史と戦争の第2弾となる作品です。海外が舞台で、日本人は一人もでないで、登場人物に外国人の長い名前ばかりでとっつきにくい方がおられそうで、そこは残念です。
まあかくいう私も前作に比べ、人物への思い入れは遅れ、結構読了まで時間がかかりました。アーリア人とユダヤ人の問題や、名前などはわかっているようでも日本人の肚にはなかなか落ちないのかもしれません。
以下、ネタバレにはならない程度ですが、話の紹介は含みます。
ナチス統制下の時代を生きていたドイツ市民と仲間たちで結成するグループの青春群像劇的な感じの話です。格闘や戦闘、爆破などスリリングな展開もあり、友情や恋愛、人種などの問題もスピーディに描かれます。
第二次世界大戦末期の過去のしかも太平洋戦争ではなく、ドイツの敗戦前の出来事を描きながらも、本作に掲げられたテーマは、少数派への偏見・差別、社会体制への大衆の迎合・欺瞞、日本でも現代人が今まさに直面している問題かと思います。
ナチスドイツが行っていたことは、日本と比べるものでもないですが、民族的な偏執、差別意識は強く、得も言われぬ不条理への怒りがこみ上げます。
いつの時代も戦争は理不尽で、未来から見れば愚かな暴挙もその時代ではなかなか止められないものなのです。