書評:阿部曉子「金環日蝕」

 梅雨の時期だから、リーダビリティのある面白い本の紹介です。
 題名はやや難しい気象用語で山崎豊子の政治経済のインサイドストーリーのような印象ですが、女子大生と男子高校生が主人公というティーン向きのような語りと展開です。
 (帯にある程度のストーリー紹介)
 知人の老女がひったくりに遭う瞬間を目にした大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに咄嗟に犯人を追ったが、間一髪で取り逃がすします。 犯人の落とし物に心当たりがあった春風は、ひとりで犯人探しをしようとするが、錬に押し切られてバティを組むようになります。
 (以下ネタバレあり)ひったくりの背後には社会の闇が見えてきて、日常の謎かと思われた話は交錯する物語となり別の不幸な少女を中心にストーリーは重い展開になります。老女は
いわゆる特殊詐欺のターゲットのリストに載っていたのです。そのリストをめぐり、暗い過去を持った男女の思いが入り乱れます。
 決してイヤミスでも、社会派でもない、謎解きやサスペンスを含んだミステリです。
 イヤミスではないということで、安心してください。サクッと展開もはやく、天気も気にせず読めます。
 犯罪と底辺にある社会問題を描きながら、家族や青春という要素も含んで爽快な読後感があります、

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