JRは公約詐欺の廃線? 読書レビュー:小牟田哲彦「日本鉄道廃線史」

 リアルタイムで東北日本海側、秋田や山形を豪雨が襲い、いくつかの鉄道が休止しています。由利高原鉄道の駅と思われるところが冠水しているような映像も見られ心配しましたが、同鉄道は運転再開、逆に内陸の秋田内陸縦貫鉄道が再開のめど立たない被災のようです。
 最近は被災から長期運休→廃止というパターンも増えています。三陸鉄道や只見線など蘇った例もありますが、経営不振と被災など、鉄道にはさまざまは廃線の分類だできます。
 新書というのは今900円ぐらいして、人気作家のエッセイやハウツー本などは当たりはずれも多く、半分ハッタリ、水増しや二番煎じも良くあります。
 この本は鉄道廃線ウォークなどというややニッチな趣味の私だけでなく、日本の政治経済、社会や、風俗、文化の近現代史を見渡せるような、良く調べられた内容の濃い本です。
 

【出版社内容情報】
野ざらしの廃車両、ぽっかりと闇をのぞかせる廃トンネル……全国に散在する廃線にも、かつては活気に満ちる時代があったはずだがなぜ廃止されてしまったのか。戦中の「不要不急路線」にはじまり、モータリゼーションや国鉄再建に伴う大量の廃止、近年の自然災害による廃線などを時代別・種類別に紹介する。そして現在、新たな廃線論議が巻き起こっているが、解決策はどこにあるのか。廃線からたどる戦後日本交通史。

 日本列島改造論では全国への新幹線網の拡大とともに、著者田中角栄は【鉄道は儲からないところで赤字を出しても良い、定時運行するのが経済発展に必要】とのべていました。
 しかし、これが国鉄の厖大な赤字にもつながり、国鉄解体、民営化となりました。
 JRの誕生した時、大赤字で廃止のまな板に上がっていた特定地方交通線以外は「ローカル線は廃止しません」「JR各社間の乗り入れは継続します」と30年前とは言えウソの公約がまかり通っています。法律や情勢も変わり、自治体が持ち出し出来ないならJRや私鉄が赤字と見捨てた線区はどんどん廃止に追い込めるようになってしまいました。
 中小のローカル線、第三セクターになった旧JRの赤字線も、一部を除き経営が厳しくかなりの数が公共交通の役目を終えてしまっています。これからも自治体に投げて協議が進むところも増えていきそうです。
 そもそも4車線の高速道路と、戦前にできた曲折の多い単線の鉄路でスピードや快適さ利便性でかなうわけがありません。イギリスが民営化した鉄道を再び国営化したように、災害時迂回なども含め国防上の意味があると言われる北海道をはじめ、三セクは地方自治体ではなく、国が絡んで国土軸、国家として公共交通をデザインし直す考えは入れるべき時代でしょう。

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