北九州で関門海峡、九州鉄道記念館を見た後、今回の旅のメインは芸備線の完乗と、特急やくも新型車の初乗車でした。
長らく国鉄型381系で、酔いそうな乗り心地だったのが、273系新型車両はシートも内装も素晴らしく、心地よい車両でした。JR西日本は国鉄の車両を多く抱えこみ、他の本州JR東海や東日本ほどドル箱路線がないですから、JR化後にすでに2世代交代している他社に比べ、一周遅れの更新です。「パノラマ」や「ゆったり」と銘打ち、小手先の体質改善はしてきましたが、この岡山から陰陽連絡というポジションに令和で新車投入というのはそれなり英断であり、内容も良いです。山陰の気動車の新型特急がデザインや機能で今一つだっただけに、273系やくもはフラッグシップと言い切るだけの評価はできます。
しかし、新型特急に光りが当たれば、逆に陰も暗く見えます。中国地方には存廃を危ぶまれる赤字ローカル線が本州の中では特に数多く存在します。陰陽連絡と言いながらも、中国地方全体でも経済や人口は衰退する中で、都市部と周辺、郡部、過疎地との格差はどんどん開いています。
昨年、広島県三次と島根県江津を結んだ100キロ以上の路線三江線が廃止になり、今営業係数が最悪で次の廃止が噂される芸備線の末端部に乗車し、完乗しました。広島~三次までは本数も含め、それなりのローカルでキハ47系が2両で快速も含め1時間に1~2本はありますが、三次以降の新見までは、もうマトモとは言えない本数、線路状況で厳しい状況がわかりました。
何しろ、この芸備線、備後落合以東は早朝5時台の回送のような始発を除くと1日2便です。備後落合駅は伯備線新見方面からと、広島県の三好からの芸備線と、島根県からの木次線が【落ち合う】ジャンクション駅です。駅員さんもいますが、昔はSLの転車台まで活躍した賑わいは程遠い侘しさです。備後落合から備後神代は日本有数の過疎ダイヤで秘境区間です。
夏休みで18切符族や、廃止前に乗っておこうとか激励のファンもいますが、通常利用するのには無理のあるダイヤです。
その上、この前後の山の中、森や鉄橋の中を25キロ以下の速度でトロトロと生い茂った夏草や木の枝や葉に掠りながら進みます。少しの雨でも運転見合わせは納得いきます。1日数便のためにこの広範囲をメンテナンスし続けるのは、驚異的な不経済にも思えます。
ある鉄道ユーチューバーが指摘している十市、芸備線に超有名な観光地、名所があるのでもなく、観光路線としても難しいと思われています。アドベンチャーのような区間もありますが、基本は山岳路線と平凡な田園風景です。本数を増やすにも、線路や施設の強化や増備も難しいでしょう。
三江線も100キロ以上の廃線遺構がそのままですが。鉄橋やトンネル、高架橋、川の閘門などもったいないのですが、廃止の決断となるともちろん維持するのにそれ以上ムダなお金があかるのもよくわかります。
新型特急や、新幹線に光が当たれば必ず陰の闇は暗くなるのは良く分かります。山陽新幹線でも50年経ち、乗降客の少ない駅の老朽化、不便さは目立ちます。かつて、華々しく躍動し賞賛された場所が、時代とともに忘れ去られるのを見ると寂しいものです。備後落合駅の関係者が、淡々としっかり仕事をされているのに少し安心しました。