営業の倫理 残念なスクープ

 政治やドラマ、10月での半期、季節の替わりなどいろいろ語りたかったのですが、ちょっと最新のニュースで気になったものです。

 共同通信系の新聞に掲載されたスクープですが、
【ドラッグストアを展開する「スギ薬局」が、不適切な免税販売があったとして、名古屋国税局から2023年2月期までの5年間で消費税計約7億円の申告漏れを指摘されていたことが28日、スギホールディングス(HD)への取材で分かった。追徴税額は重加算税を含め8億5千万円。既に修正申告を済ませたとしている。
 スギHDによると、消費税の免税要件を満たさない外国人への販売や、本人確認時の誓約書の管理が不十分なケースが確認された】

 修正申告をしたとは言え、8億5千万とは大金です。ぼろ儲けしているのかもしれませんが、メーカーのわりと大きなブランドの売上に匹敵する金額です。スギも化粧品メーカー勤務時代から、副社長はじめ良く知る企業で、化粧品の社員教育などにも熱心だっただけに、報道に接し複雑な思いです。

 メーカー時代にもあった葛藤ですが、営業などはどうしても売上の金額、コストを差し引いた利益の短期的近視眼で評価されます。
 メーカーにとっては返品さえされなければ、流通に商品が渡ればそこで実績が上がります。現場の販売員でも、目の前で商品がレジを通る金額が大きいほど、自分の評価は上がります。それが丁寧に接客した積み重ねの1万円であろうが、転売ヤーが上手く金額を小分けした10万円✖10であろうと、遠目にはわかりません。

 私がドン・キホーテという深夜早朝含む24時間営業の店を持つ企業を受け持っていた時も、大阪ミナミの道頓堀などで、当時シートマスクや酵素洗顔が外国人の爆買いが始まった時代でした。

 万引きさえされずに、混雑や人目の少ない深夜にうまく品物をバックから、顧客に渡せば売上は青天井に上がることを分かっていた者がいました。独身で夜の時間に融通が利き、それなりに自分や担当部署の営業数字を上げたい知恵なのですが、深夜出勤ということもひっかりました。それとやはり、転売の疑いというモラルの問題も大ありです。

 私はその者を許容し、評価する上司とは意見が真っ向から食い違いました。昼間一日、百貨店で丁寧に接客しようが、POPの工夫をしようが何日もかかっても作れない売上金額を一晩の2時間ぐらいで叩きだすのです。賛否が分かれるのも当然で、私の意見は当時やっかみのようにとらえられました。

 しかし、そんなものがいつまでも許される時代ではないです。それ以前からの取引先に在庫を抱えさせる押し込み商法と何ら変わらないモラルでは、長期的な営業の力も、ブランドの育成もできないのです。

 スギ薬局の報道を見て、ふとそんな少し昔の話を思い出しました。

 人間の運命とはそれなり不公平にもできていて、運不運で実力や努力が評価されないときの方が多いです。それでも自分が頑張ったのかズルいことをしたのかは自己評価できます。時間が経てば、案外不公平はないことがあります。

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