書評:「早朝始発の殺風景」青崎有吾 青い日常ミステリ

 本格ミステリ作家の高校を舞台にした青春日常ミステリという感じです。
 どんな世代にも、読みやすく、短いけれども、しっかり5作品全編が伏線回収される本格的な謎も良いです。

 BSとネット配信のドラマにもなって、そちらから入った方もいるようです。

 少し紹介するだけで、ネタバレになりそうな短編ばかりなので、レビューも難しいですが、表題の「殺風景」が何と最初の短編に登場するドラマではヒロインにあたる女子高生の苗字なのには度肝を抜かれます(というほどでもないが、驚かされます)
 それでも、何だか早朝始発の男女の気まずい感じや、その他全編の謎にかかる「殺風景」さが良いタイトルです。

 私のように、とうに青春を過ぎ去った世代にも、ちょっと一息、推理とともに楽しめる作品です。
 その昔、北村薫あたりが「日常ミステリ」を上梓しだしたころやはりミステリには「殺人」というおどろおどろしいテーマがあって、犯人と探偵、読者はが全知全能をかけて謎を解くからこそ面白いという説もまことしやかでした。

 今は当時よりも「日常ミステリ」が進化して、某少年探偵のような世界こそ、いくら何でも荒唐無稽過ぎるという説の方がいきおいがあるようです。
 それにしても、甘酸っぱいこういう青春時代に戻って、少しだけやりなおしたいものです。まあ小説やドラマは神のような第三者的視点で、相手の気持ちも読めるぐらい洞察できるのですが、現実は謎は謎のままで考察を検証する勇気も機会もないまま甘く切なく流れていく時間なのでしょう。それでもまあいい時代です。

カテゴリー

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください