カネボウと資生堂がしのぎを削っていたころに入社して、元いた化粧品メーカーを今さら身びいきするつもりはないです。もう良い商品や安くて機能がかわらないものは元ライバル社でも平気で買うようにはなりました。
ですので、やっかむも何もないのですが、少し心配な会社があります。昔からあるメーカーですが、資生堂と花王グループに割って入り、最近は人気モデルの契約やCMでは業界どころか、全企業の中でも注目されるほどの露出の量を誇る会社です。
大谷翔平さんまで契約し、フィギュアスケートの会場の看板広告もして、男女の有名俳優や、アスリートまで多くのタレントを抑えているコーセー化粧品です。
元々小林コーセーという非上場の同族企業だった時代が続き、バブル期までは資生堂、カネボウ、花王ソフィーナ、コーセーなどの後塵を拝していました。
化粧品メーカーは、資生堂がリーダーで無名のモデルを圧倒的なスポット量で、スターを作り出すような時代があって、カネボウがそれをミートして古手川祐子、夏目雅子、松原千秋、沢口靖子など新人起用でスターへの登竜門だったのです。
ところが、松田聖子、木村拓哉などすでに大物になったスターの著名度に頼る時代になり、リーダーの資生堂は多くのタレントと契約して、花王カネボウに対抗しました。コーセー化粧品もこの戦略を真似て、頭角を現したのです。
しかし、この背景には大手広告代理店、芸能事務所の暗躍もあり、バブル後は、資生堂も大手タレントの契約料が結構な足かせとなり、利益に苦しむ時期を迎えました。海外に強い資生堂は何とか、外国人頼りでしのぎ、インバウンドの恩恵もありましたが、国内での地位は相対的に下落しました。
カネボウはもっと酷く粉飾決算や白斑問題で凋落しましたが、もうそれほど、CMやタレント契約に大金を投じても、商品や消費者に還元できないことに気づき始めました。花王グループも元々日用品には莫大な出稿をする会社でしたが、資生堂に比べ利益率は高く、とくにソフィーナを含めてもそれほどCMに力を入れていません。
そんな時代を経て、コーセーの回帰のようなバブルぶりは、懐かしくも、危なくも見えます。消費者がCMだけで買わないで、同じ機能のPBや無名メーカーでもチョイスする時代に広告代理店に踊らされて、売上は上がってもCM契約料に見合うペイはあるのか、他人事ながら心配です。
現場や営業の社員はジレンマがあり、複雑です。ジャンジャン宣伝し、有名モデルと契約してもらうのは社員の誇りで営業も販売もしやすいのですが、自分の待遇に還元できなければ、モチベーションは下がります。それだったら、宣伝しない商品を、苦労して売るのが営業、それを評価して自分の待遇を上げて欲しいと考える人もきっといます。
まあ、風の便りにしか、知らない会社もことですが、株は間違っても買いません。