「年収の壁」1 分断を増長する話

 「103万などの年収の壁」問題、国民民主党がこの壁をとっぱらうという提案をし、選挙で苦戦して少数与党になった自民党、与野党が、官僚、経済界、マスコミ含めて何かと騒がれています。

 年金部会からの情報や、その後の報道や提案含めて、年金の話を書こうとしていたのですが、どうも長くてまとまりにくいのでゆっくりと、何回かに分けて書きます。今日は細かい数字の話はなしで、次の機会にします。

 これは、そもそも壁があって分断する制度そのものがいいのかということと、その壁のラインを引く地点が正しいのか、どう動かすべきかにもかかってきます。

 わかりやすいのが「生活保護」です。この最低限度の文化的生活に、今は地域にもよりますが約15万円の生活扶助、支給があります。地域間格差も少しあります。働けないし、年金収入なども少ないなど要件はそれなり厳しいですが、多くの場合、住宅や医療費、教育の扶助があり、住民税まで非課税になりますので、実質は最低賃金でフルタイム働くよりは、はるかに裕福になります。パートやアルバイトで働いて減額されても、生活保護は美味しい面もあり、不正受給も後を絶たないのです。

 生活保護不正受給はおいておいて、私の思いとしては、今の基礎年金が財源の構造などもありしかたがないとはいえ、低すぎるのです。満額で7万程度ですから、最低限の文化的生活が無理です。生活保護に至らない人は、高齢に鞭打ってパートなどで働くか、貯金を切り崩し不安な生活の落ちるかです。これでは、国民年金を真面目に払っても何だかおかしいです。

 それと、物価も上がって、介護保険や健康保険料なども上がり、モデルケース的な厚生年金年金受給者でも

生活が苦しいという、対象者がより多い問題があります。

 年収の壁以前に大きな話題になった、「老後2000万円」問題です。60歳で定年退職して、65歳で年金受給するとして、退職金と年金では2000万以上貯金がないと暮らしていけないという大まかな試算です。投資や資産運用、高齢者の雇用も促進する狙いもあったのでしょうが。これが話題になった数年前よりさらに物価は上がり、年金生活は苦しくなっています。

 今回、年金部会で取り上げられている在職老齢年金の「月収50万円の壁」を緩和するという話は、ここにつながります。お金持ち優遇とかの批判もありますが、年金だけでは暮らせないから、働いたらと勧奨しておいて、働き過ぎたらと少し多く働いたらとか、年金を減額するというのは全くおかしな話で、上と下に妙なラインや壁が存在して振り回される感じです。

 どうしても政治家が選挙に勝ちたいので、妙に多数に迎合して意見を聞き、そこに財務官僚の思惑が複雑にからむので、難解な妥協点のようなところにたどり着く「悪手」の政治になるのです。

 本来、壁などはなく、分断はせず、金持ちは稼ぐだけ稼ぎ、一定割合の税や保険料を負担する、どうしても生活できない人には一定の審査で受給をするというシンプルな制度でいいはずです。賃金、物価や生活費、保険料が改定されるのに、常に壁を意識して、所得を調整したり、ごまかすなどを考えること自体おかしなものなのです。

 制度を無くそうとか、変えようとすれば、得する人、損する人にどうしても分断され、不毛の議論がおきます。

 

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