NHK懲りない朝ドラアイドル路線

 橋本環奈の主演したNHKの朝の連続テレビ小説「おむすび」は視聴率的には惨敗で、歴代ワーストとなりました。CM本数ランクでもトップ3を争う、千年に一人の逸材と言われる人気アイドル俳優の橋本環奈を使ってもNHKの威信は回復しなかったのです。むしろそんな方向だから視聴率も取れず、受信料拒否も増えて迷走するのです。
 今放送中の「あんぱん」も、橋本環奈に負けない映画にテレビにCMに出まくる売れっ子女優の今田美桜さんの主演です。何だか食べ物名が続きますが、実力派の大物俳優も脇を固めますが、オープニングは今田さんのPVみたいなあざとさです。

 NHKの連続テレビ小説というのは、ヒロインがかつてはオーデションで選ばれ、若手俳優の発掘、登竜門の場でしたが、まさに国民的俳優が生まれる場でした。むろん無名の新人では当たりはずれもありました。国民の視聴習慣も変わり、目先の数字をとりたいという、テコ入れの路線変更で最近は忙しい超売れっ子を使うようになりました。
 少し前までは、今は売れているとは言え当時は無名の原石のような太が主演でした。石原さとみさんあたりも放映当時は完全に無名で、「梅ちゃん先生」の堀北真希、「あまちゃん」の能年玲奈(のん)さんなどもそうでした。その後低迷期に入りついに無名新人路線を転換し、2019年広瀬すず主演の「なつぞら」あたりからは既に映画やドラマの主演を務めたこともある人気も実力もある俳優を主演させ、確実に数字をとろうという方針に変わりました。

 若手なら、十分な拘束時間をとって撮影できますが、橋本環奈クラスの人気者では他の撮影のスケジュールを調整しながらになり、外国の舞台にも出ていた橋本は出番そのものが主演なのに減っていました。これでは羊頭狗肉で、ドラマそのもが詐欺です。
 スケジュール調整がつかないから出番が少ないのはもう視聴者をバカにした話です。どうしても制約が増え、脚本に無理が来て、演出も雑になりがちになったと言えます。
 一人の主人公の成長を描くドラマなのに、視点が別の登場人物のサイドストーリーが続く時もありました。最初からスピンオフ作品のようなストーリー、視点がバラつき過ぎていくらキャストを増やさないといけないという営業的大人の事情があるとはいえ、アクロバチックな脚本に無理が来て問題が発生します。

 NHKという組織は、カネと女、人脈に汚い終わりかけた組織になってきているのです。国民的番組で、そこで妹や友人など脇役でも出れば人気が出ると共演者を増やすのもあくどいやり方です。
 視聴率を上げないとこの権力構造が維持できない。そのために焦って売れっ子を起用し、キャストにも無理な脚本にしてしまうので、歪なストーリーになるのです。共感が生まれない雑なドラマになってさらに視聴率を下げるという悪循環です。

 かつて、私は勤めていた化粧品の業界でも、昔は春と夏に2大メーカーが競い合い、世間も知らない人のいないぐらい大きなキャンペーンをぶち上げ、CMソングは大ヒットして、無名なモデルをスターダムにのし上げました。
 モデルさんは、取引先の有力百貨店や販売会社に小まめに回る販促も行い会社を上げて、ライバル会社と競い合って席巻していました。ところがある時期から、広告代理店との戦略も変わり、自前に近い無名モデルを厖大なスポットで盛り上げるよりも、すでに売れた著名人と大型モデル契約して最初から話題をさらっていく方向に変わりました。
 当初は誰がモデルになるか話題にもなりましたが、化粧品の尖ったセンスのCMは影を潜め、飲料や薬品、銀行や、商社、生保、日用品、建設、IT業界、結婚式場のCMと何ら変わらない差別性のない平凡なものに成り下がりました。
 それだけが原因ではないでしょうが、それとともに大手化粧品メーカーの寡占体制は崩れて、参入もしやすい乱立の時代になっていきます。
 売れっ子のモデルはタレントとしてCM契約数ランクを競いますが、結局毎日何社ものCMを見る同じ顔なので、宣伝としての効果は契約金ほどなく、業界自体が広告代理店や芸能事務所にぼったくられているのです。

 NHKもまだしっかり制作できる人がいる間に、こういう無駄な売れっ子重用のお金を抑えて、いい脚本と芝居ができる体制に戻すことが、受信料の不払いなどの悪印象をかわせる手段です。
 報道とドラマ制作、スポーツ中継などは部門が違うという方もいますが、結局根は同じです。覚えておられる方もいると思いますが、北朝鮮の独裁者と揶揄されたワンマンの会長がいたぐらいです。改革をするには、その構造を根本から解体しないといけないでしょう。

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