
朱川湊人さんは好きな作家で、以前は短編集はほぼ読んでいました。この原作もかなり前に読んでいたのですが、ここまで映画化されるという強い印象はなかった気がしました。
予告編を見たり、封切りからも随分経っていたので、原作とはだいぶ変えているというのは分かりました。映画の出来は素晴らしく、原作を盛ったというより、素材にして大きく飛躍したという感じです。朱川さんは同世代作家でホラーテイストの昭和の下町の人情や奇跡的な偶然を描きますが、昏いイメージも強く、そこを現代にうまく加工しています。
【ネタバレ】というか、ほぼ原作は回想時間に使い、後日談のような現代がメインです。令和の今年のカレンダーのようなので、30年後という以前の設定すら、原作の昭和40~50年代よりも今よりにずらしているのではと思います。
少し、もやっとした気分の時期に、映画館に行き、隣にポップコーンを頬張る女性とカップルみたいな感じで、その横は車いす用スペースで、前が通路のゆったりした席で鑑賞できました。
冒頭から近鉄バファローズの三角帽子の主人公になる少年、大阪の昔の下町の象徴なのか、それでも当時少年は巨人か阪神に憧れる子が多かったのですが、そこは近鉄推しにはにやりです。関西以外の人にはどうかなとも思いますが、大阪から、京都の大学、滋賀彦根とロケもいいですし、キャストもほぼオリジナルで、関西のおばちゃんと看板娘の間くらいの、ファーストサマーウイカさんとか、オール阪神巨人が関西の下町感を出しています。
鈴木と有村もですが、カラス言葉をしゃべれるヒロインの婚約者で学者を、鈴鹿央士が好演しています。彼方側の家族もみんな好演、六角精児、キムラ緑子ももちろんいい味なのですが、父親役のキーマン酒向芳が素晴らしい。個人的には妻のお父さんを思い出しました。娘を結婚させるのは、大事なイベントです。
近江鉄道もロケに全面協力で、蹴上のツツジ園、同志社の大学も出てきます。
最後は、感動で隣の女性とともに涙ボロボロ。