書評:米澤穂信「冬季限定ボンボンショコラ事件」

 米澤穂信さんのミステリ「冬季限定ボンボンショコラ事件」書評です。2024年に刊行で、このミスなどのランキングでほとんど2位以内に入りました。その前の年が『可燃物』で1位を独占したのですが、昨年は青崎有吾「地雷グリコ」が1位独占で、僅差ですがその次のランクでした。
 作家としても評価は高く、アニメ化もされた人気の小市民シリーズ、4作目にして完結編です。シリーズを知らない人にはなんのこっちゃの題名ですが、春夏秋冬とスイーツ名を冠したタイトルの中高生の男女が主人公のミステリです。

 受験を控えた高3の冬の物語。主人公、小鳩常悟朗のひき逃げ事件と、3年前に小佐内ゆきと出会うきっかけとなった同じ堤防道路で起きたクラスメートのひき逃げ事件を、それぞれ抜け道のない密室状況からひき逃げ車はどこへどうやって消えたのかという謎を軸に、「2人にとっての最初の事件の時間と最後の事件が輻輳しながら綴られる構造」の作品です。
 恋人同士という甘さはないけれど、謎を解く理屈っぽさでウマが合う2人の微妙な距離感と、進む考察が論理的でいいです。

 完結編ということですが、シリーズを読んでなかってもそれなり、楽しめます。【以下ネタバレ】
 学園に通う主人公であり、日常の謎的な事件が多かったのですが、今回は本人が狙われた件で、ロジカルな犯人探しと、犯人消失ミステリを解きます。
 狙われていた主人公で、入院して不自由なところでスリリングな展開でもあうのです。
 犯人にはなるほどの動機もあり、それなりに納得のエンドです。ちょっと病院のところには、動機の心理は上手く描いていますが、その状況に至った背景とタイミングに偶然が多くいところはあり、1位になれない原因かもしれません。
 実際に入院した経験のある人から見たら、最初の偶然はあったとしても、現実味が薄いところで、その後までアレが続くのはどう考えても無理があり私は不満が残ります。パズラーとしてロジックができていれば、背景にあんまり宇宙人だろうと未来人だろうと、リアルな設定を求めないのですが、何日か入院して経験のある人には、サスペンスというよりはそれはないよなあという感じでは少し抱くと思います、

 「僕が思うに○○○で片がつく」恋が成就するわけでもなく、高校生の時期が終わり、シリーズが終わるのは残念で、何かの機会に米澤穂信ワールドに登場して欲しいキャラたちです。

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