書評:貴戸湊太「図書館に火をつけたら」

 タイトルはインパクトはある比較的若い作家の作品、このミスの上位というわけではなかったが、カバーと帯の煽りでつい手にする。

 バカミスっぽいので、やはり図書館本を待つことにして、貸出時に図書館の人からタイトルに怪訝な顔をされたような、されてないような感じでした。

【紹介文】
 市立図書館で大規模火災が起き、焼け跡から死体が発見された。
焼死と思われたその死体の頭部には何者かに殴られた痕があり、火災と同時に殺人事件が起きていたことが発覚する。
さらに、発見場所である地下書庫は事件時、密室状態にあったという。
炎に包まれた密室は、誰がどうやって作り出したのか。
 刑事・瀬沼は真相を探るなかで、図書館に救われた自身の小学生時代を辿ることに――。

 本格的な密室トリックと、読者への挑戦というロジックパズルめいたところと、
 不登校だった3人の小学生が刑事や司書、大人になって再会というドラマ的な面もあり、バランスは悪くなくリーダビリティにも優れています。
 司書や図書館のお仕事や役割が良く分かる面もありますが、トリックの前提となる部分含めて、リアルに可能かというと無理もありますし、司書の人数などにも急に取材不足かなという点もあります。ミステリなので、お約束だといえばそれまでですが、動機も好きではないです。

 本が好きで、図書館にはよく行くのですが、司書という仕事は個人的には何というのか好きでも嫌いでもありません。本にまみれるので、本屋や図書館の仕事がいいなと思う時もありましたが、好きと仕事は違うというのと、どうも「司書資格」の制度、中身や受験の仕組みが気に入らないのです。

 他の資格制度でも似たり寄ったりですが、実際の図書館実務とも乖離しつつあり、図書館そのものも一部で検討されているように、変容を迎えつつある時期です。
 個人情報は守られつつも、自分の貸し出し履歴すらデータが見れず、次の情報へのリコメンドもないのは、法律や仕組みがおかしく、他の娯楽や研究に比べ融通が利かなさ過ぎです。

 図書館はどの町にもある公共施設で、進化によってはさまざまな用途として市民に活用されるはずです。それまでに、図書館学から、司書の仕事の中身もそろそろ変わらないといけないでしょう。

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