財務省や政治家こそ国際会計基準に

 
 私が大卒で勤めた明治以来の日本を代表する企業が粉飾で事実上倒産し、日用品最大手の傘下となりました。辛酸と感じた人も多いですし、仮にも商学部で簿記を学んだものには残念だった面もあり、この機会に新しい会計基準、IFRSやEVAという進んだ考えを勉強しました。当時50歳代でそんなものを親会社の若い経理部門や管理職と並んで、子会社のおじさんが学ぶのは奇異にもとられましたが、個人的には本当に良い学びでした。
 残念ながら、このことは元の会社系の人事には全く理解も支援もなく、知識を使って貢献することはできないまま定年を迎えました。しかしその後、意外なところで役に立つ機会があり、学ぶことや知識を持つことで損はないのだと思います。

 グローバル展開でもしない限り、IFRSなど意味がないとも言われた時代もあります。しかしたとえ国内だけの企業でも、外資からのM&Aは容赦なく来ますし、何より誤魔化しのできない客観的な基準の面でIFRSの方が優れている面があります。

 私がIFRSが好きというか、相性がいいのは、目の前の損益計算に拘らず、貸借対照表重視で、細則に捕らわれる日本の会計基準と違い、原則主義でいわば大雑把に善悪を問うからです。前例にとらわれ、何法の何条とか、マニュアルの何ページとかを、メガネかけたインテリエリートがキリっとやるのが日本の会計ですが、それが意思決定を遅くして、事務を増やして、効率も下げています。

 中小企業でも公的機関も、IFRSや価値を生む投資を長いスパンで考えるEVAの考えは必要です。

 裏金やパーティー券で問題になった政治家は、献金などの収支を全時代的な小遣い帳レベルの単式簿記でやっているそうで、2周遅れになっています。

 財務省も企業にはIFRSを奨め、優秀な人材がどんどんはいっているのに、今の予算提案は単年度収支に固執しすぎです。見せたくない、わかりにくくするごまかしの意思もあるかもしれませんが、国の事業、政策の評価があいまいになります。

 子育て政策であるとか、国土の強靭化計画、年金の改革のようなものは長期にわたる事業であり、20年とか30年のスパンで投資を考え、予測するレベルです。それが単年予算の分捕り合戦にさらされ右往左往し、政権の交代でも影響を受けるのはおかしいのです。

 昨日「昭和16年の敗戦」という本のことを書きましたが、多くの優秀な官僚はこれからの日本に未来の破綻を予測しているはずです。10年後か30年か50年か分かりませんが、それを避けることこそ、最重要のプロジェクトです。
 このことは多くの高齢者には、直接関係のない未来ですし、若い人にも現実感は少ないので、今の直面する問題の方が分かりやすく、未来を見る目を曇らせて先送りされやすいです。
 しかし、子供たちは未来では、高確率で破滅か、著しい衰退した国で生きねばなりません。

 そのためには、かなり大胆に発想を変え、今の予算をつけた事業が30年後に必要な価値あるものかで再構築しないといけないのです。

 今までそれに連なってやってきた人は痛みますが、そんなことは企業では当たり前です。数年前に業績を上げ花形だった事業はあっという間に不採算になってリストラされています。国もそれができないと、恐竜と同じなのです。逆に今はまだそれが十分できる税収も積み立てもあるのです。国債を発行するのが未来に借金を残すのではなく、意味にない事業、天下り先を沢山活かさず、30年後の国家、50年先の未来のための政策、投資ができるかです。

 財務系の考えをこう変えるだけで、日本の未来は明るくなります。

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