
ミステリ作家はほぼリタイアされ、印税だけでも悠々自適でしょうが、その飄々とクールな思考には、いつも唸らせられます。
確かに、頭も良く成功した人だからの余裕から、優雅に、子供のような庭園鉄道などにハマり、田舎でまったり暮らせるのでしょう。
私も影響を受けた面が多いですが、田舎に住んでここまで孤独でもいい境地にはなれないですし、いろいろ割りきるここともできません。
しかし、愚民政治や劇場政治で世の中に不幸な価値観が広がるのを、もう少し彼のようなクールな頭で、リテラシーを持てれば、随分現状の閉塞を打破できるのでしょうが。
森博嗣さん的には、作家として研究者として、成功していなくても、大して変わらずに、生きていったでしょう。もしそうだと、これらのエッセイでこういう生き方が世に伝わらなかったと考えると、この本を読める私たちは幸せです。彼の成功によるものでむしろその運命は妬むどころか感謝すべきです。
私の兄の世代で、体力がアラ古希で年齢とともに落ちてきたことも、本当にさらりと、良く理解されています。健康雑誌や医学誌を何冊も読まなくても、自分の動作への観察が半端でないのでしょう。
そして、私も含めたいわゆる凡人、愚民がやりがちな、見栄や妙なこだわりや、他人への協調の習慣が、時間やお金を浪費することの多いことが良く分かります。無理をしたり、ウケを狙った逆張りではなく、ほんわかとしているところが、成田悠輔なんかと違うところです。
先輩や兄の世代の著名人が、高齢になっていくのもつくずく寂しくは感じますが、少しオジン臭くもなりながらも、いつまでも飄々としていて欲しいです。
