余生は要らない

 江戸時代に日本中を測量して歩き回り正確な国の地図を初めて作ったことで知られる伊能忠敬、その名前と偉業だけは歴史で覚えている方は多いと思います。

 その測量は実は56歳から始め、17年の歳月をかけて、73歳に伊能は没しています。

 昔の短い寿命からすると、大変長生きに分類され、遅い年齢での偉業であり、完成は弟子に引き継がれものです。

 死ぬまで、仕事に、打ち込んだ彼が遺した名言があります。

「歩け、歩け、続けることの大切さ」そして

「人間は夢を持ち、前へ歩き続ける限り、余生は要らない」

 というものです。

 還暦を過ぎ、勤めは定年で引退となると、夢や希望、生きる目的を失って急速に老ける人がいます。

 50代以降、確かに、記憶力は悪くなり、足や腰が痛い、目や齒が悪くなり、身体の衰えは誰もが抱え始めます。

 そして、輝かしき若い頃を懐かしんでしまい、だんだんと身体の衰えとともに、集まる人、交わる人も少なくなることに寂しい思いを感じる時代かもしれません。

 伊能忠敬は確かに歴史上の偉人です。60や70になってそんなやり甲斐のある仕事があるなんてあり得ないと嘆かれる人もいます。

 現実には、年金や貯金も計算すると厳しく、身体は衰え、会社時代の仲間も亡くなったり、だんだん疎遠になるものです。仕事やお金、家族、仲間、健康に恵まれている人、そして若い人と比べるとやっかみも生まれます。

 しかし、交通機関もない江戸時代に日本中を高齢で歩いて回るような人がいたのです。

 そんな大それた夢でなくても、小さな夢を持ち歩くことが大事だと思います。

 ただ漠然と時間を過ごすのではなく、役に立つ目標を定めて進むことではないかと私は考えます。何かを伝え、情報を発信し、地域だとか、家族、友人など、何らかの形で貢献し、リアクションを頂くことが、前を向いて歩くことではと思うのです。

 伊能の時代に比べ、交通機関もですが、勉強するとかの手続きや情報入手は格段に進化し、簡単になっています。

 今から、夢を持って歩き出すことに、遅い時期はないのではとさえ思います。

 

 

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