読書レビュー:橋本惠「誠と謀略」岩畔豪雄の知られざる日米和平交渉の記録

戦後80年という節目の年で、「戦争を知らない世代」の割合が増え、ましてその深層まで掘り起こして知る人は限られてきています。
このところ太平洋戦争が開戦前に日本人によって敗戦確実と研究されていた「総力戦研究所」の話が取り上げられ、ドラマのモデルが訴訟する件も話題になっています。
同じ昭和16年やはり、日米間でもワシントンで繰り広げられた知られざる交渉があり、悪化した日米関係を修復しようと外交努力があったことを伝えているのが本書です。
岩畔豪雄、井川忠雄の名前は私もついぞ存じませんでした。近衛首相や、松岡外相、東條英機ら戦争を止めず前に進めた名前の方が知られています。
成立しなかった交渉に奔走した男の挫折を、太平洋戦争の裏歴史として、史実に基づき著しています。
外交はつくづく伝えられる歴史だけでなく実らなかった裏があり、埋もれたものがあります。
状況の変化もあり、ゼロか1かの成果では語れないものがあります。
改訂版として、著者のご子息が、重い内容を現代にもわかりやすくされ、使命感を持って令和の時代に再度上梓されています。
現代でも、世論の勢いだけでは危険であり、国際社会の外交は一筋縄では行かないものがあります。
敵対的とされる中国やロシアにも、毅然とするだけではなく、人間的な外交努力もしていかないと国益は保てません。
先の戦争以来、現代の戦争は多くの火器を使い一般市民の多くも巻き込み大変な国土と国民を消耗させる悪手です。
単に厭戦、平和を望むことを軟弱・お花畑と保守層は揶揄しますが、やはり国と国が戦いもじさぬ時には、その裏ではあらゆる妥協点を見出す外交努力が必要です。
戦後「戦争を知らない世代」と言われましたが、戦争を知る世代に育てられ多くの生き証人の話を聞けた世代する少なくなっていきます。
歴史を現代から未来に活かすためにも、保守もリベラルも書を読み、学び、感じて次の日本の舵を取し、行き先を間違わないよう見極めないといけないでしょう。
