音楽、芸術の難解と困難

ミステリ作家の作品で、死の真相が謎として追われるものの、音楽家を描いた青春、職業小説的な色が強いです。

 マンガ喫茶で働く、チェリスト坂下は奔放な演奏の由佳に魅入られ、その死の真相を追いかけて、鵜崎四重奏団のオーディションに挑むます。

 死の真相に立ちはだかる、鵜崎の芸術や音楽の既存の価値観の否定と、激論する主人公の戸惑いも面白いです。

 有名な演奏家、高価な楽器が本当にいいものなのか問いかけられます。

 芸能人が出る格付けのテレビで、ワインやグルメ、楽器などの本物と安物を当てる番組があり、実際それらしい描写もあります。たぶんテレビはヤラセが多いでしょうが、まさにそれを揶揄しています。

 大衆は実は高級品バイアスにかかり、有名音楽家の演奏もまたそれにとらわれたビジネス、因習が成り立つ世界になっている。

 感覚や技量を磨き、経験を積んでも結局は、それぞれのレベルでのバイアスからは離れられないものなのか、本当に価値のあるものがあるのか。それは誰にわからない境地でしょう。

 一般の人は、高価な料理や、ブランド品、崇高な芸術よりも、目の前にある安いランチに満足するのです。

 音楽なども、好みや、聴く環境、その人の状況で全く価値観は変わります。クラシックなど、何を聴いても違いがわからない人が多数いて、さらに名前や雰囲気だけで違いがわかったような気になる層なまた沢山いる。そして、本当に音楽がわかっていそうな人も結局はかなり名前や権威のバイアスに囚われている。

 芸術の価値観は伏魔殿のようなものです。芸術の世界は、ビジネスや学校、行政よりさらに古くドロドロとしたものにも思えます。

 私の妻も音楽大学を出て、それなりの努力はしてきていましたが、音楽家で生きていくのは難しいのは当然です。元々の金銭面でもそうですし、才能やコネでも超一流になるのが厳しいのは分かります。

 音楽界の酷さもよく描かれているのか、本当のところはわかりませんが興味深く読めました。

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