
鉄道案内の本ではなく、「ホワイトアウト」等で知られるミステリ作家真保裕一の小説です。
「行こう」シリーズとして、ミステリ要素もあるものの、デパートや遊園地など、ピンチをチャンスに変える元気を産むハートウォーミングな群雄活劇的なお話でした。
もう15年近く前に書かれた話で、宮城県の赤字第三セクターローカル鉄道のもりはら鉄道を再生するという設定ですが、モデルと思われるくりはら田園鉄道は既に廃線となってしまいましたね。
新幹線のワゴン販売でずば抜けた売上を誇ったカリスマパーサーから抜擢された女性社長と、県から左遷のように渋々出向させられた若手公務員の副社長が主人公。
バディを組んだ二人が、役所の壁や鉄道会社の経営の難しさ、古い地方の町の人々のしがらみを乗り越えて奮闘します。
❴以下ネタバレ少し❵そしてミステリ要素として、鉄道を危機に陥れる犯人と動機の謎が物語をラストへと導きます。❴ネタバレ終わり❵
女性社長は、なかなかイケイケでやる気満々のキャラですが、新幹線も全国の在来線も車内販売が無くなった時代ですから、今なら設定も難しくなります。
鉄道が専門ではなく、公務員や山岳がジャンルとしては得意な作家さんなので、鉄道の知識は参考文献かららしい感ですが、官僚や自治体とのやり取りは専門家らしいキレ味です。
自治体と一体になった地元の名産やイベントとのタイアップ、グルメ列車など、どこのローカル鉄道でもやってはいながら、赤字解消とまではいきません。
地元優先で活性化とはいえ、沿線に飲食や印刷会社はおろか、土木、建設の会社も無くなって行くのがローカル線の難しさです。
コスト優先か地元優先かというのは現実にはよくあり、一概なは言えない大変難しい課題です。
モータリゼーションがさらに進んだ中、ローカル鉄道が存続できるかは、今の時代さらに難しくなっています。
車両、線路、駅や踏切など施設は大変な資産であり、かつ維持も大変です。ただ一概にローカル鉄道をなくすと、観光資源も埋もれ、病院や買い物に行く交通弱者が困るとも言い切れない問題があります。鉄道は定時走行、大量輸送は可能ですが、観光地にも、病院や商業施設、学校へ行くにも目の前まて行くのではありません。まして自宅から駅までも距離があると負担になる高齢者もおられます。
最終的には、鉄道好きやカリスマ女性社長の魅力だけでは限界があることも、現代の現実とフィクションを比べて見ると歴然としてしまいます。
女性社長のあざとさ、客寄せパンダ的な要素も、コンプラが厳しくルッキズム批判が強い現代では通用しない面もあります。
もちろん、やるだけのことを元気いっぱいにやりきる主人公に好感が持て楽しめる物語で、元気を貰える話ではありました。
ローカル鉄道はそれでもやはり行きたくなります。
