【「絶対的貧困」と「相対的貧困」とは】
貧困には大きく分けて「絶対的貧困」と「相対的貧困」があります。絶対的貧困とは、生命や生活の維持が深刻に脅かされる状態を指し、これは一部の途上国などで見られるケースが多いと考えられています。衛生状態が悪いとか、教育も就業も難しく内戦など治安も悪いと言うようなことは日本ではありません。
一方で、国全体の平均的な生活水準を下回る「相対的貧困」は先進国でも起こりうる問題で、日本ではこちらが特に注目されています。相対的貧困に苦しむ貧困層が増えると、教育格差や将来の虐待リスクなど、さまざまな形で社会的損失が生じる可能性があります。
日本の相対的貧困率を示す代表的なデータとして、OECD(経済協力開発機構)の統計があります。2021年の日本の相対的貧困率は15.7%で、。G7(主要7カ国)のなかでは最も高い水準となっており、加盟38カ国中7位という結果で日本より率の高いのは中米や東欧の数ケ国のみでした。その割合を見ると深刻な状況と、長い経済の停滞とともに、格差が大きくなった社会がうかがえます。
この「貧困率」は、国で設定される貧困ライン(中央値の50%以下)を下回る世帯の数を示すものであり、多くの方が生活のベースとなる可処分所得を十分に得られていない可能性を示しています。
確かにまだ円の為替価値で、日本に出稼ぎに来る人もいるので、日本人が途上国に行けば相対的には富裕な国の人間にはなれます。また、こんな数値はまやかしで、戦後、高度経済成長期なまではもっと食うや食わずの貧しい人がいたし、大学も行けず、スマホもコンビニもウォシュレット、ウーバーもなかったと反論する人がいます。
それは「相対的貧困」の本質を理解しない、まさに時代錯誤の反論です。
生活保護などの時に、憲法25条で保証された「健康で文化的最低限の生活」とよくいわれる生活権の問題と、相対的貧困は違うのです。時代や国によって見方は違うけれども、その国、その集団の中で貧しく虐げられれば、やはり貧困の対象となり、日本は今その率が高いという問題です。
【貧困の要因は経済の失速と、労働の失政】
これには、ここ20年~30年の日本経済の失速の主因となる、本当に沢山の社会的な要因が複雑に絡んできています。
労働法の改正、人件費節約のため非正規雇用が広がり、その割合が増えたこととは比例しています。配偶者が柔軟に働けて、家計や子育ての助けになるはずが、家計の柱になる人がリストラや就職氷河期などで、キャリアの柔軟なチェンジどころか、一度非正規沼にハマると抜け出れずに貧困層のままになっているのです。AIが進化し、広がるともっと非正規雇用は多くなり、現在の正規雇用の人さえ貧困側に回るかもしれません。
税や社会保険料が上がり、食料品や消耗品、生活に必要な家電などはどんどん高い方へシフトしていって、節約をしているようでも可処分所得はどんどん下がっていきました。
ギャンブルや飲食、買い物に贅沢をして貧困になるというと、本人の自責を問われ、だらしなすぎるも論外ですが、誰もがやっているちょっとした趣味、娯楽を一切できずに社会に参加するのは相当リテラシーも必要で難易度は高くなります。
政治で助けようにも、例えば10万円配ろうとか、高校の授業料を無償にと言っても、効果は見えず、焼け石に水なのは、経済を知らなくても分かりそうです。
【雇用と賃金の大きな改革】
ドラスティックな改革としては、雇用の形態を変え、賃金の上昇しかないのです。払うのは公務員以外は国ではなく、企業ですから、人件費が上がれば苦しいからなかなか難しいところです。
「同一労働、同一賃金」この法律が決まりながら、運用は抜け穴だらけで、本来の年功序列、終身雇用の日本の環境を変えないと、この改革は進みません。今の企業や公務員の30代の若い人を見ていても、大卒で家業の無い人は、生涯その職場にいるつもりの人がかなりいます。スキルを磨いてのキャリアアップも無ければ、椅子取りゲームもありません。
一度転職するとかなり厳しい環境とも思われています。ましてや、そこそこの年齢になると、市場価値の低い総合職の人間でも賃金や役職が上がり、実は非正規と同じレベルかそれ以下の仕事しかできないのに、厚遇され続ける傾向は強いです。「転勤がある」’「管理のシステムを使う」とかだけが総合職と非正規の差で、実務などの能力は逆転の場合さえあります。
人件費が苦しいのではなく、これでは生産性も当たり前に上がりません。
簡単に言えば、「同一労働、同一賃金」の原則で均せばいいだけの話です。社長の決断で、組合などとの最終調整です。非正規でも組合に入れるところなら話は早いのではと思います。時間はかけてローンのある人を補助するとか、総合職の人はリスキリングして、本当に役立てる能力を磨ければ残れて、あとは現在の非正規社員と待遇を同じにするのです。
全体の人件費が変わらない程度で、劇的に生産性も上がり、格差を解消できるはずです。
多くの昭和からの大企業も、バブル崩壊以降、倒産や合併、リストラと変革期を超えましたが、今一度労働を変えていかないと、日本の低迷は救えません。