少数与党に転落した石破自民党が、財務省ら官僚主導で密に立憲民主党と大連立を組もうとしているという噂が真しやかに流れているそうです。
財務省びいきで、消費税増税のもしてきた野田佳彦率いる立憲ですし、石破さんとも政策で共通するところもあり、あながち火のないところの煙と言えなくもなさそうです。
そんなことになれば今の国民注目の「103万の壁」論争で、国民民主党と協議してきた内容など完全に反故にされそうです。
党則、主義主張は違っても政権を取るためには野合するイメージの大連立ですが、過去にも似たケースがありました。今の自公政権も広い意味では政権維持のために当初は主義の違う公明党を抱きこんで自民党が強固な連合を作ったのが始まりです。
戦前の大政翼賛会はもちろん知りませんが、何度か戦後、大連立の話は浮上し、またそれに近い連立も組まれています。
今の自公政権の元は、1998年自民党が参議院選挙で惨敗し、いわゆるねじれ国会となり法案成立が難しく安定した国会運営をはかるため、小沢一郎自由党と、その後公明党を引き込んだ自自公政権が今の自公政権の原型で、これはまあ大連立というよりは数合わせの意味あいが強かったです。自由党の小沢一郎は何かと小渕首相に要求して困らせ、すでに公明党の参加で過半数を取っていた自民党は、自由党を切り崩した上離脱させて、保守党という形で残らせ、やがて自民党に彼らも合流します。扇千景党首、二階俊彦や小池百合子はこの時に保守党経由で自民党に参加しています。自由党から保守党に移ったメンツも政権を手放したくない甘い誘惑に負け、一度政権の利権の甘い汁を吸った公明党はその後、主張をどんどん保守自民党寄りに変え今も政権にしがみついています。
それ以前には1994年、あの30年前の阪神大震災の時の村山首相を生んだ、自社さきがけ政権という今聴いてもとんでもない政権を奪うためだけの野合政権がありました。自民党が下野した日本新党、新進党、さきがけ、公明、社会党などの細川連立政権時代に、さきがけと社会党がまさかの自民党に寝返り社会党の村山首班指名で政権を奪い返したのです。力技もいいところで、その後、社会党は離脱させられます。この辺になるともう歴史になるうかもしれません。
自民党は、この歴史で見るといつも権力を奪い返すには手段は選ばず、時には主義も政索も二の次で数合わせに走ります。何とか、安定した政権を握りたいのです。悪夢と罵った民主党政権がこけて自公政権に戻り、民主党はバラバラにあり、安倍さんの第二次政権以降安定した盤石の体制が続くと思いきや、裏金問題や物価高などであっという間に転落でカオスの状態です。
近年の政治体制でも珍しい、少数与党です。予算は通しにくく、委員会も野党に議長をいくつか取られ、何かあって野党が一致すれば不信任案が可決する、不安定な政権地盤です。まして石破首相は党内でも派閥やグループに属さない弱い地盤です。
それでも、野党の意見を聞きながら、細々と政策を進めています。参議院で過半数割れや、衆院選での不利予想が出る際や、あるいは憲法改正など重要法案を仕掛けたい時、これまで「自社さ」「自自公」以外にも、自民党は野党との大連立を模索しています。小泉内閣時代に前原民主党、麻生内閣時代には小沢民主党に、それぞれ大連立を持ちかけています。民主党政権時代にも、東日本大震災の時に、菅直人政権で谷垣自民党と連携か連立してみればという話も出ています。
いずれも小選挙区制の二大政党による政権交代を否定したような大政翼賛会、大野合のような企みで、現実には至りませんでした。民主党政権誕生の少し前、麻生内閣時代は、もう次の選挙で負けるのは分かっていたので、自民党は小沢代表を抱き込み実現寸前まで行っていましたが、小沢一郎が党に持ち帰えるや党内では真っ向批判され、結局破談となりました。小沢の思いとしては、今の民主党の若いメンバーで政権を担っても、当面人気はあっても、とても海千山千の官僚や外国相手にまともに運営できないので、一度自民党と組んでも政権運営の練習をして、その後単独政権に結び付けた方がいいという意図もあったようです。
この話が本当であれば、民主党政権未熟からの崩壊、分裂を読んでいたわけです。ある意味、実現していれば、民主党の中で能力のないモノ、思想があまりに左巻きは淘汰されていたでしょう。自民と民主が適材でポストを担い共同して官僚にもモノを言い、より良い政策に結びついたかもしれません。そこは少し残念に思うところで、その中で多くの民主党議員が結局陰が薄くなり、自民党に仕切られるケースもあったでしょうが、切磋琢磨して、しのぎを削れば案外良い政権運営ができたのではと思います。
今噂されるケースは、あまりにも官僚主導で、大連立を組まれ、国民民主あたりの積み上げたものが反故にされるなら大変なことです。枠組み自体は大きな指導力とリーダーシップを持つなら大連立はありかなとも思います。
過去の連立や実現しなかった大連立の時代よりも、ネットによる市民の意見の醸成も顕著な時代になっています。
憲法改正もやがては必要とは個人的には思いますが、今はそれ以前の課題が多すぎます。まず物価や景気賃金、社会保障の問題を落ち着かせ信頼を取り戻さないと、防衛や少子化対策すら進めないでしょう。結局、政治が淀み「民」を見ることがなくなり、税や社会保障の負担割合があまりにも上がりすぎて、多くの人の信頼を失ったのです。他の国なら野蛮な革命につながってもおかしくないのですが、日本人の多くはおとなしい事なかれで進んでしまった、でも不満、でも生活できない状態で政治や行政にNOがつきつけられているのです。
大連立もいいですが、何かをきっかけに「民」を見る政治に戻らないと、静かな沈没は止まりません。