アスリートの性暴力問題

体操の杉原愛子

 WBCにも出場した大物野球選手が、強制性交で書類送検となり騒がれました。
 他にも年俸ウン億の人気球団の有名選手が女性スキャンダルで昨年は散々な成績でした。
 私の卒業した有名私大のアメフト部員たちも酒場で声をかけた女性への集団暴行で公判が始まっています。
 そこそこの体育会系大学生から、超金持ちで遊び金もアスリートまで加害者にも問題は多いでしょうが、どうも週刊誌から事件が表に出るのには大きなお金が動いているというのもきな臭いところです。
 こういう事件が起これば、組織を上げて謝罪とか陳謝、再発予防とか良識派が言われますが、「性」の問題というのは、がんじがらめにすればもっと爆発は大きくなります。
 私の大学の関係の書き込みでも、現在の学長、理事長体制への批判派と相まって、厳しい対応、廃部などを望む投稿もあります。しかし片方でスポーツが弱くなると大学の知名度やひいては偏差値まで下がるのでスポーツ推薦などは枠を広げて優遇しないと多様な才能ある選手が集められないというジレンマもあります。
 正直、マンモス大学で、さまざまな学生が入ってくるのに、OBが校祖の教えだ校風の浸透7がとか言っても現実的には無理です。不祥事、事件があって、学長や監督が開き直る訳にもいきませんので言葉は選ばないと難しいですが、要するに適切な性知識、性処理ができていないということなんです。
 それも、どのケースも、夜の街で知り合った関係であり、合意かどうかは判定の難しいような感じです。
 見ず知らずに痴漢をしたとか、夜道を襲ったとかではありません。
 女性にも、それなりの期待可能性があったかどうか、等というと怒られるのでしょうか。今回のケースとは別に、アスリートの年俸などが分かると、有名俳優などと同じで有名税的な、ハニートラップも当然増えます。
 有名人のスキャンダルは、驚くほど高いものです。慰謝料や示談金、賠償金よりも法外に高いのも問題です。

 


書評:ネットポルノを止められる本

 科学の本の書評です。世界中の人たちのエッチをガマンする禁欲体験談が読める熱い力作ともいえる、なかなかのボリュームの本です。日本語訳雑でです。原書読めるひとは原書オススメ。
 スマホ脳や、ゲーム中毒と並んで、インターネットでカンタンに猥褻なサイトに行けること、またやりとりができることはドーパミンを異常に分泌させる、現代を生きる人間の宿痾とも呼べる疾患でしょう。
 詳しい内容なネタバレなので避けます。

 インターネットポルノ中毒は、裸やエロスに対する中毒だけではないのです。「画面上の目新しさに対する中毒だ」だとすると、ポルノに限らず、インターネットそのものが、中毒と言えます。常に提供される膨大な新しい情報。特にSNSやコミュニケーションツールの通知は、大したことがなくても、それなりの刺激を受けます。動画などにしても、再生回数を競う中で心が荒む内容で、結局皆と同じような刺激であって、大衆迎合になるのです
 特に寝る前は、脳を休めたいものですから、更新や通知を気にしないでぐっすり寝ることです。
 まあ本当にはまっている人は、絶ちができれば、いいことずくめです。
 外向的になり、良心的で、愛他的で、神経質でなくなるそうです。
 持続的な満足を生む活動に目を向け、よい会話、整理、抱きしめ合い、目標設定、誰かを訪ねる、何かを作ったり庭いじりをしたりまあ人生枯れたような行動に見えます。。

上方芸人の鑑 上岡龍太郎さん逝く

 昭和の著名人の訃報もこのところ多い中、また一人。関西で人気の司会者、漫才師だった上岡龍太郎さんが5月に亡くなられていました。
 2000年に、人気絶頂の時期に芸能界をスパッと引退されたので、昨日ある会合であった若い人は彼のことを全く知りませんでした。
 Mー1が始まったのが2001年ですから、20歳ぐらいの人は生まれてもいないし、知らないのは当たり前ですが、知らないことが残念だと思えるほど稀有な天才です。
 今はテレビ時代に入ってからのお笑いが第7世代なのか、第9世代なのかℤ世代なのかよくはわかりませんが、その世代分類に従うと、コント55号、てんぷくトリオ、ドリフターズ、笑福亭仁鶴、立川談志などの第1世代の一角を占めた漫画トリオという漫才師の一人でした。
 ピンの芸人になり、立て板に水のようなトーク、司会が冴え、関西中心にテレビ、ラジオのバラエティを席捲しました。引退前は東京進出も果たし、報道でも代名詞の関西の名物番組「探偵ナイトスクープ」に続き「鶴瓶・上岡パペポテレビ」などで全国にもその名前と話芸が知れ渡りました。
 京都出身で、皮肉屋で拘りの強い性格、芸風で共感もあり、好感を持って注目していました。テレビで人気モノになっても、昔からの関西ローカルのラジオにも長く出ていた頃がマイナーでしたが面白かったです。ラジオ大阪や、ABCラジオの番組に1990年代には、何度かリクエスト投稿をしてハガキを読んでもらったことがあります。関西のこういう番組は面白い内容を読むのがメインで音楽はほんの刺身のツマで一瞬流れるだけで、延々と上岡のマシンガントークが聞けました。
 引退前のパペポのトークも良かったです。しかし、彼が影響を与えた笑福亭鶴瓶や島田伸介、明石家さんま、その系譜のダウンタウンらがこれからのテレビでウケる芸あり、自分の芸の役割は21世紀のテレビには合わないというのが、引退の理由だとも聞きます。最後は好きな役者として舞台でその活動を終えています。
 その前年1999年に親交の深かった落語家桂枝雀が自死しています。爆笑王として上方落語のトップランナーで高い人気を誇った彼も同時期に、21世紀以降現代の若者にはナマの至芸を見せることなく消えています。
 

 ともすれば、洗練されていてもやや素人的なアドリブ芸が主流のMー1以降の笑いと、質的に相容れないようなところがあったのか、想像するだけで詳しくはわかりません。
 
 以降、ビッグネーム的なお笑い王者が続々と現れ、河原乞食の代表のようだったお笑い芸人は、第〇世代と数を重ね爆上がりにステータスを上げます。成功者はニュース番組のコメントどころかMCも務め、地位もお金も結婚相手もIT長者なみになります。
 上岡龍太郎が反骨とか正義の代表とか、そういうことではなく、また裕福になった芸人たちもハメを外し、不倫や反社とのつき合いなどで浮き沈みもあります。そんなことも、もちろん元々「ありあり」なのが芸人の世界です。春団治や藤山寛美の例を出すまでもないことです。
 ただ、そこから出てきたこじゃれた人達が、もう「人生の成功者、勝利者」みたいな本を出し、動画再生回数を誇り、大学の卒業式や成人式でエラそうな話をする。そんな21世紀の芸人というのが、たぶん相容れないようなものだったのだと、これも個人的には想像します。
 
 

女のモテ期、オトコのモテ期

 昭和50年代頃まで、女性の適齢期を揶揄して、「クリスマスケーキ」と言われ、大学の同期や後輩たちは、焦るような感じもあり、遅くとも30のやや手前で、多くは結婚の便りを聞きました。
 24ぐらいが売りの最大のチャンスで、26を過ぎるとたたき売りになるケーキに例えられたののです。
 今の女性の雇用条件とかの制度もまだ整いきれず、社会全体の風潮も違いう時代でした。女性は優秀でも仕事は腰かけで寿退社か、せいぜい出産まででした。
 今はアラサー、アラフォーも当たり前に活躍され、40ぐらいで、グラビア出して、その後結婚する人もいますし、盛りの時代は長くなったと思っていました。
 ところが、現代でもあるニュース番組の企画コーナーを見ていると、モテ期を感じた時代を男女別に集計したデータが紹介されていました。男性が10代から60代ぐらいまで若い頃から、なだらかに分散しているのに、女性は圧倒的に20代に集中していました。
 これを見た30代の女子アナが、20代の後輩アナにしみじみと、「これ、絶対その通り当たってる。私も30代になって、本当にパタリと声もかからなくなった」と嘆いていました。
 やや、男性目線的な話で申し訳ないですが、確かに、その方は大学のミスだったのですが、続々入る強力で旬な女性たち、顔面偏差値の高い後輩には、圧倒されてる感じでした。
 昭和の化粧品CMで25歳はお肌の曲がり角と言われていましたが、アラサーで頑張っている人も、確かによほど改造してるか上手く化粧していないと、油断して映る肌は、10代後半とは比べ物にならないぐらい衰えています。
 男性のモテ期が年齢を重ねてもそれなりなのは、どういう面なのでしょう。イケメンとかビジュアル、ルッキズムではやはり20代でしょう。
 まあいろいろ問題ありのジャニーズ系も、それでも40代ぐらいでかなり第一線ですから、集団坂道系とかの女性アイドルに比べここでも、男性はアイドルの寿命やモテ期に幅があります。
 IT社長や、お笑いで稼いでる人が、年齢、容姿とはず若い女性と結婚しているのは、やはりお金なのでしょうか。
 ただ、お金、ルックス関係なしに、人間が落ち着いてきて、異性を尊重して上手く付き合える年齢になった人はモテるのかもしれません。自信をもって、つき合える安定感、相手の気持ちを推しはかれるような気配りを、年齢を重ねて身につける人が多いのかなと思います。
 まあ、モテ期は感じ方なんで、若い頃はモテていても自身で感じてなくてというのはあるのかもしれませんが、私もモテ期だなと思うったのは40過ぎてからなのです。
 そう考えると女性も、この先は年代が分散していく時代に入るかもしれません。

最もエライ働き方は無報酬、低賃金か

 理系の推理作家で「すべてがFになる」等で著名な森博嗣さん、今はセミリタイアにして悠々とたまにエッセイを書く程度ですが、生き方の指南書のようなものも良く書かれていてとても参考になります。
 比較的、さっぱりと論理的に割り切る生き方を進めるパターンの多い著者ですが、「諦め」に関して、一方的ではなく、よく分析されています。多くの方がその対極というべき、「こだわり」にとらわれてしまうことからの解放を諭しています。
 あとはネタばれになるので、大まかに彼のエッセイ全般に受けた印象からの話にしておきます。

 もちろん、印税だけでも大金持ちで、若くして国立大学の准教授にもなられて、片手間で書いたミステリのシリーズはベストセラーになるような天才的な成功者であり、多くの啓蒙書や成功の秘訣話同様に、凡人が読んだり聞いて真似できることと、全く無理なことも確かにあります。それでも論理的な思考や発想は影響を受けます。
 彼の論説の中に、「働くことはエライことでも何でもない」というのがあります。お金という報酬を貰うわけです。
 お金を必要として、他に手段がないなら割り切って働くしかないから、諦めを促し、「働き甲斐」というものは基本的に否定されます。
 結果好きになればいいけれど、好きになれる仕事がないから働けない、働かないというのは違うよということです。労働=苦行説ではなく、あくまでその人ができる仕事を割り切ってやって、多くの職場が成り立ち社会が営まれていることがわかります。苦しいから賃金が高いのでもなく、そこにあるのは仕事という対価のあるものだというだけです。
 これには、いろいろ異論というか、逆説もありそうですが、一つの考え方としてはスパッと悩みを断ち切れます。
 森さんは相談の投書などで、救いのないほど冷たく、夢のある仕事に就きたいとか言う人をバッサリ斬られます。
 夢を追い続けるなら、死ぬほど努力して追い続けてみて、ダメだと気付けばあきらめろと、要するに、熱血的な答えと同じになってきます。
 それほど、夢や憧れへの執着がなく、才能もない人で、お金が欲しいなら、悩む必要もなく働けば良いという、実も蓋もない論理的結論です。
 こういう辛口になれないでややオブラートに包む回答者の方が人気があるのかもしれません。
 大金を稼ぐとか、高額所得者がエライというのも否定しています。年収や時間給が高ければ高いほど、それに見合う対価の仕事をしているというだけで、偉くなるわけではありません。
 立派な仕事をしておいて、お金を貰わないとか、最低賃金しか貰わない方がエライと言う定義には当てはまります。それは論理的には全くその通りです。
 高額報酬を何に使おうともちろん自由です。
 そうなると、ボランティアで無償で汗を流し、お金を貰う人よりも社会貢献するなんていうのは、さしずめすごくエライことです。
 これ以上はネタバレになりますが、森博嗣さんの本は書名とは営業上しっくりあっていないですが、ハマる人にはすごく面白く、参考になります。

1972年ヒロシマ 原爆同等の被害という封印設定 #ウルトラマン#特撮

 広島でG7サミットが開かれ、各国首脳が原爆資料館を訪れたことで思い出したお話です。 
 1972年4月、「帰ってきたウルトラマン」の後を受け、昭和の第2期ウルトラマンシリーズ第2作「ウルトラマンエース」第一話「輝け!ウルトラ5兄弟」が放映されました。
 当時、私はもうそろそろ怪獣から離れだす、中学1年生だったと思います。兄にはいつまでそんなの見てるみたいに言われたのを覚えています。
 この「エース」という番組は、難産で、呪われたと言われるほどトラブルも多く、設定も直前で変わり、路線変更もあった作品です。長くなり、多少端折りますが、初めてウルトラ兄弟という設定が現れた記念すべき作品ですが、元々円谷も連続でこの枠を受け持つのではなく、1回休んで次の作品をじっくり作ろうという案すらあったようです。
 主人公の男女がタッチしての変身で、敵は怪獣よりも強力な生物兵器の超獣、そしてウルトラシリーズ初のシリーズを通しての悪役で超獣を送り込む異次元人ヤプールというチャレンジングな設定でした。
 初代のマンやセブンに比べ低調と言われた「帰ってきたウルトラマン」を超えようという意欲には満ちていましたが、実際には迷走したようです。
 当初はセブンのように「ウルトラ」のあとはマンがつかない「ウルトラエース」という題名の予定でしたが、商標の関係で使えないことで急遽、「ウルトラマンエース」と言う名前になり、これがウルトラ兄弟にもつながりました。エースだけ何となく造詣はウルトラマンには似ていません。後の兄弟も商標問題は無ければ「ウルトラタロウ」や「ウルトラメビウス」などになったかもしれません。
 そして、何と撮影がスタートして直ぐにヒロインが事故で大怪我を負い降板となります。主人公南夕子さんを演じたのは、急遽の代役さんなのです。
 そして、やはり男女合体変身というのがそもそも分かりにくいし、子供が遊びで真似しにくいという問題もあり、初回以降は視聴率は低迷したようです。後半のテコ入れ、路線変更で男性だけの変身となり、そのヒロインも唐突に月星人だった月に帰るというトンデモ後付け設定で降板させられます。後半好調だった前作「帰ってきたウルトラマン」の流れを受け初回はウルトラ兄弟というコピーもあり20%後半を叩きましたが、以降大台はなく低迷します。前番組で心躍った、マンやセブンの兄弟のゲスト登場も、今作ではゾロゾロ出てきてもかませ役に回され不満と不信が溜まる内容で子供も離れたと思います。

 ここまでは、昭和特撮ファンには比較的有名なエピソートです。他にもいろいろありますが割愛して本題の広島の件。
 これはこの「ウルトラマンエース」第一話「輝けウルトラ5兄弟」で、男女二人の主人公、広島県福山市のパン屋の配達運転手で実直で熱血漢の男性と、福山市民病院の優しく元気な看護婦(当時の名称)の女性が、超獣の攻撃に街が襲われ際、「ウルトラマンエース」に助けられ、エースへ二人で変身できるアイテムを貰い、新しい地球防衛組織TACに入隊するというところです。
 初回としては盛りだくさん、てんこ盛りでツッコミどころも多い感じで、不完全というのか、何だか子供心にも消化不良の印象はぬぐえませんでした。
 その、テンコ盛りの第1回なのですが、なぜ、広島県福山市?という実際の地名でローカル都市になっているのか不思議です。後でヒロインの夕子が月の出身だとされると、ますます「何で福山?」という話が出ます。
 実はここに封印された部分があるのです。次にベロクロンが現れるのは首都圏K地区(なぜかイニシャル)、地球防衛軍が壊滅状態にされ、新たに結成されたTACの竜隊長が、「地球防衛軍を壊滅させたベロクロンはもはや、怪獣とは言えない異次元人が送り込んだ生物兵器、怪獣よりも強い超怪獣、超獣だ」と語るセリフがあります。
 その前に実際に竜隊長がすでに収録した場面のセリフは「広島市を襲ったベロクロンは、広島に原爆と全く同じ規模の被害を与えた、原爆を落としたのと同じ、異次元人の悪魔の所業だ」細部は違うけれど大意はそういう内容で脚本通りだったそうです。
 広島の市民に原爆を、怪獣番組で想起させるのはケシカランと言われたか、原爆投下を悪魔とよぶのはアメリカに忖度したのか、何か他に事情があるのか、この部分は封印され、急遽広島県の第二の都市福山市にお鉢が回りました。
 広島の原爆ドームが崩れ、このセリフがあれば、衝撃で、社会問題的なものも訴えた、かなりハードな展開、重い内容を抱えて新機軸の第一話となっていたはずです。昔なら許されたこともあれば、子供向きにそこまでは遠慮されたこともあるものです。
 被爆したケロイドを連想させる宇宙人を、登場させて謝罪して永久欠番になったウルトラセブン第12話の件もあり、設定を慎重に再考したとも思われます。
 原爆ドームを怪獣が壊すことはやはりタブーだったとも思いますが、世界の核を取り巻く状況もまた50年を経て不穏でもあります。現実世界にはエースもヒーローもいない上、やはり政治的な大人の裏事情であたふたと庶民は振り回されるだけです。

学生時代 通り過ぎた人、初体験話 #コイバナ#ヰタセクスアリス 

 赤裸々すぎて、ためらうのと、もう忘れてることも多いし、記憶の隅っこに眠ってたものですが、コイバナと言えば初体験のお話。
 結婚後のコイバナだと、不倫みたいに思われるので、かなり創作を交えたり時系列を誤魔化して、物語化していましたが、今日は普通に大学時代の逸話を、暇つぶし程度に。
 これと言った劇的な出会いも再会も事件もない、ただのコイバナです。

 大学時代にバイト先で知り合った人。
 大学時代は中高に比べ、毎日声をかけられる範囲が少なく、その割に性欲が強くなる大人になる時期で、出会いを追い求めたような気がします。何だか授業受ける集団は人数は多くても距離がある気がしますし、いきおいゼミとかサークルとかバイト先の中で比較的限られた中で、好みとかの選択幅少なく、競争率激しいような感じでした。
 
 大学のバイトは、演劇の部活動があるので長期はできず短期的なものばかりでした。会場設営や、交通量調査、試験監督や、映画のエキストラとか短いものが多かったです。少し長かったのは塾か予備校の試験の採点、添削でした。ある夏休みでした。
 何人だったかたぶん10人前後かの大学生の男女が数日、多少入れ替わりながら採点や添削を受け持ちました。
 そこで私の近くにいた女子大生が、初体験の相手はマサミ(仮名)さんでした。少し特殊な苗字で今でも覚えています。ややぽっちゃりした感じの丸顔でした。私にはかなり美人に見えましたが、担当職員には、すぐサボって寝てるとボロクソに言われ、化粧もしていなので私以外の男子たちも地味に見える存在で、男子は別の女性グループと元から親しかったのか、関心も持たれずいつも一人でした。昼休みも外には出ず、持ってきた小さなお弁当をささっと食べるとすぐ何か勉強を始め、途中で寝て、みんなが戻ってくるまで爆睡し、小突かれるまで起きないし、作業中もひと段落するとすぐ居眠りをしていました。
 他の男子や担当職員は、「眠り姫起きろや!」と言われ、女の人からも馬鹿にしたように言われ、寝起きに唇が濡れていて「よだれ姫」と陰で呼ばれてる時さえありました。
 時々、起こしてあげる役になり、居眠り中にあった指示をフォローもしました。
 少し、話すと国立大学の歯学部で年齢は2つ上でした。大阪まで通っている上、勉強量が多いので、慢性的に睡眠不足なのだそうです。
 国立大学で歯学部とというのには、私立の大学で内部進学で受験もせず在学中も勉強していない私には異質の存在、勉強好きの高尚な、雲の上のような人に思えました。
 それでも、漢字や計算はお互いに確認し合い、ミスもすることが分かりホッとしました。
 私もこのバイト先ではツレがいなかったので、外に食事に行かず、買ってきたパンか何かを食べて昼休みを本でも読んで休憩していた時です。読書中に仕事に使う鉛筆をひっかけて机の下に落してしまいました。
 机の下をコロコロ転がっていった鉛筆を探して潜り込むと、そこに爆睡しているマサミさんいて、スカートから伸びたナマ脚と、少し開いていたので股間のピンク色の下着がばっちり見えてしまいました。夏なので、ストッキングも履かない白い肌の太ももの肉が生々しく、
 ドキドキしましたが、興奮は最高潮に達しました。悪い気もしましたが、当分職員や他のバイトも戻らないし、本人は叩かれないと起きない性質ですから、もうちょっと見てもいいかなとも思いました。しばらく、机の中で時々動く足にびくびくしながらのぞき込んでいました。ガードルもしていないピンク色のパンティを飽きるほど見つめた上でさらにその奥の部分を想像しました。
 机に向かうと、大胆で無防備なマサミさんの寝顔をどアップで、鼻の穴まで隅々まで見てました。
 そうなると、もう火が点いたように、男のスケベ心は燃え上ります。爆睡中の唇をティッシュでふき取り、気づかれても机が淀れそうだからと心の中で言い訳しつつ、マサミさんの垂らした涎を自分の舌で味わいキスできた気になりました。何食わぬ顔で午後からのバイトの採点は始めました。
 その夜はもちろん、そのティッシュを大事に持ち帰りました。その日からずっとマサミさんのことばかり考えるようになりました。
 バイトの最中ずっと、彼女を意識して、その思いは何気に伝わっていったのか、二人で作業する時間は増えていきました。
 何とか、バイトが終わってしまうまでに、デートの誘いができないかと思い、映画でもと思いましたが、昼からの半日のデートは勉強に差し支えるので、夜の食事ということになりました。
 歯科大学なので、家が歯医者でお金持ちかと思いましたが、実家は岡山で仕送りは少ないといい、どうやらサラリーマンの家で自分は歯科医になりたくて挑戦したそうです。
 年下のバイト学生仲間におごらせるも悪いし、割り勘でも外食は高いので、食材を買って彼家で食べようということになりました。大阪寄りの京都府の安いお風呂もない、当時で古びた文化住宅を「広いけど、安かった」と借りて住んでいました。京都に住みたかったそうで、通学もそのため大変で京都で短期のバイトを探し、いつも眠たいんだと言ってました。
 歯科大学は6年までで、1年留年しているため、私より卒業は遅くなるという話がでました。
 食事が終わるとお礼を言って、帰る間際、目が合うと、抱きつきキスしました。「〇〇さん、好きです」と言うと「私も」と言って帰してくれました。
 唇の味と匂いは以前に、黙って寝てる間に先食いしたのと同じでした。
 今のバイトが終わっても時々こうして会いたいと次の約束をして、その夜は、そのまま帰りました。
 次も、また家での食事でしたが、その時は食事の後、彼女の行く銭湯に一緒に行き、帰りにワインを買って飲みました。お泊りしていくことを、お互いが理解しました。
 マサミさんにかなりリードして、導いてもらいながら、私は初めては告白していませんが、初体験は終わりました。たぶん、彼女は私が初めてではなかったと想像はしました。
 それからは週に二日ぐらいは、会って、会えば長く何回も愛し合うようになりました。
 休みの日、泊まると夜通し愛し合い、次の日も朝からなんていう時もありました。
 避妊はしていましたが、彼女に任せ、大丈夫だというときはつけずにしました。
 雑誌や本でいろいろアダルトな知識、マサミさんを悦ばせ、楽しむ方法を考えて実行しました。今だとネットで正しい知識が簡単に入手できますが、当時は難しい面もありました。
 回数を重ね、やり方を工夫するごとに、マサミさんはあられもなく大胆になり、とても悦んでくれました。
 いくらか経ったある時、生理が無くなったからすぐ来てと言われドキッとしましたが、ほどなく少し遅れて来たようでした。何だか、その時の私の反応が頼りなく、冷たく感じたと言われました。
 それ以来なのかその頃から、何となく私が会いに通う回数が減っていきました。彼女からは会えないのが不満で何度か電話や手紙は来ますが、部活や就活も始まりだす忙しい期間と重なり、何となく鬱陶しくなっていました。

 マサミさん自身、私なんかと遊んでいるよりも勉強優先にしないといけないのに、あの寸暇を惜しんで勉強をするか、睡眠をとっていた頃より、何か歯科医になる意欲が薄れているような感じでした。
 何週も会えない後、だいぶたって最初の就職内々定が決まった頃、お祝いを言われ簡単な食事をしただけで、もう会わないでおきましょうと言われ、振られました。結局、私が就職を決めた頃、マサミさんは京都にはいなくなっていたようで、行く先は全くわかりません。
 社会人になるとすっかり忘れてしまっていた思い出です。
 昭和の文化住宅は今はもうそこにはありません。

流星への願いと涙 悲劇の姫 子連れ中年が禁断の星空デートへ2 #コイバナ#星空デート#能恵姫#ラノベ#星に願い

 前回↓のつづきです。化粧品メーカーに勤めていた私は、大型モールのイベント準備が進行する中、家族の重篤な病状も進み、人生の激流の時期に突入します。その時、北日本の美しい女性と出会いました。

子連れ中年が禁断の星空デートへ? #コイバナ#星空デート#能恵姫#ラノベ – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

 【暗転する家庭】
 妻の病状は嫡出手術後、抗がん治療のサイクルを繰り返し、やっと回復してきたと思えば、別のところに影が見つかり、「転移」ということで極めて生存率が下がったステージを迎えました。
 長男の病気もまた、そんな状況でも容赦なく、難しい治療をしないといけない難病、家族状況を許してくれない厳しいお医者さんの言葉でした。何度か妻の実家からヘルプに来てもらいましたが、限界もあり、正直私も仕事に行くのにも、看病と長女の子育てに毎日疲れた時期でした。
 そんな中、Aモールのイベントはさまざまな困難を克服しながら回り出していました。モール内の派手な広告、デジタルサイネージの投入も、現場担当責任者主任の上芝氏能恵(かみしばうじ・のうえ)さんの協力で順調に進みました。彼女の信頼をもう一度メーカーとして失えば取り返しがつかないということで、何とか夜遅くとも、その時間だけは、長女や義母に無理を強いても仕事に費やしました。
 上芝氏能恵、呼ぶときはノエさんで、一度迷子になった私の娘を助けてくれています。
「ハルちゃん、お母さんいなくて、お父さんがこんなに遅くまで無理して大丈夫?」
「ノエさんこそ、毎日もっと遅いんでしょう。ウチのイベント無くても、ルーティンで深夜残業ばかりで、いくら若くても不規則だと身体に悪いですよ」
「私はね、もうこんな仕事だから慣れてる。気分転換に山登り、ハイキングに行くのよ。ハルちゃんも仕事ついでのドライブだけじゃなくどっかに連れて行ってあげなさい」
「これ、私作ったおかず、うちの総菜コーナーじゃないから、持って帰って、ハルちゃんと井上さん野菜不足やろから、食べて」
 それから時々、タッパーに入った煮物やらのオカズを持ち帰らせてくれました。

 入退院を繰り返す妻は私の実家に、自分が醜い身体になり家事もままならず足を引っ張るので離婚してくれて構わないと電話があったと聞いた。母は妻を諫めたと聞いたが、私もその話を聞き、絶対離婚しない、何があっても支えると妻を抱きしめました。妻は精神的にも落ち着かない時がありましたが、病めるときこそ支えるのが夫婦の誓いです。

 【星空デート?
 イベントが成功裏に終わったある日、ノエさんから、次の土日はオフなのでハイキングとキャンプに行くがメンバーの欠員ができたので、私とハルに是非来て欲しい、食材が余ると困るし、流星群が見れるからと強引に誘われました。
「井上さんと、ハルちゃんの気分転換になるしね。キャンプ用品はすべて用意してある。夜少し寒くなるから着替えと重ね着ぐらいだけでいい。クルマで迎えに行く」
 こういうところは言いだすと譲らない性格の人で押し切られました。
 噂によると、彼女は主任から一気に課長に昇進する内示を受けているとの話で、企業内でもやり手として女性幹部候補に挙がっているらしく、取引先としてもますます断れないパートナーになる存在でした。
 私と娘は朝、妻と長男の病院に見舞いに行き、取引先の付き合いで二人でキャンプに参加しに行く話をしておき、明日お土産を持て帰ると告げた。娘は自然大好き派で喜んでいたので、妻も快諾してはいました。
 仕事場と違い、派手めのメイクとワイルドで露出の多い衣装で現れたノエさんに驚かされました。特徴的な目蓋に見事に赤いアイシャドウを入れ、赤いタンクトップにシースルーのカーディガンをかけ、お腹と背中が丸見えの短いローライズのデニムには目を奪われそうでした。キャンプに行くアウトドアのアクティブさよりも明らかにセクシーな美を狙った感じがしました。
 そして、最初から確認はしていないことで、あえてツッコミもしなかったのですが、メンバーの欠員という表現はもう少し大勢のキャンプのイメージでした。参加のハードルを下げて実は最初から二人だけを誘ったのだとは思います。
「どう、ハルちゃん、今日の私キレイ?」
 娘もちょっと、リアクションに詰まりそうな感じです。子どもが見ても今日のノエさんはお姫様のような輝きだったようです。
 山道を飛ばしたせいか、娘が少しクルマ酔いをしました。
 ノエさんは、気功に詳しいらしくツボを推したり、いくつかストレッチをさせ、すぐに娘の気分を回復させてくれました。
「ごめんねハルちゃん、つい乱暴な運転しちゃった」
「ありがとう、ノエさん。すっきりした。もう、元気。今日のノエさんはとてもキレイ。ウチのお母さんよりキレイで、お父さんが変な気にならないか心配になってたよ。私もノエさんみたいなカッコいい大人になりたい」
 テントも今のモノは簡単にでき、娘も大喜びで手伝いました。確かに準備も万端でてきぱきと進み、楽しいキャンプにはなりましたが、ノエさんの後ろ姿はローライズは動けば動くほど、デニムのパンツがずり下がり、いわゆる半ケツ状態ヒップの谷間まで下がっていきます。目のやり場に困るというか、さすがに見るしかないというかくぎ付けになりました。
 BBQも盛り上がり、多少焦げた肉も美味しく食べました。
 高級そうなワインを傾け、ノエさんは耳元で囁くように語りました。
「いつもは一人か、同性のツレだしね。こんな派手なかっこ普段はさすがにしない」
「女一人で山歩きって危なくないですか?」
「大丈夫、あたし護身術、合気道やってるから、襲われた方が危ない。気を付けてね」
「そんな」
「あたし胸に全然自信なくて、下半身デブでお尻大きいしね。ちょっと、今日は勝負服に気合入れ過ぎた。山に慣れてるようで失敗、虫よけスプレー忘れて足刺されちゃうし、慣れないカッコはだめね」

願い星と能恵姫
 娘とノエさんは友達のようにいろんな話をしています。ノエさんは時々、神妙に聞き入り考え事をしているようです。
 しっかり、食べて片付けをして、空を見上げると、街中では味わえない満天の星で、8時を過ぎると流星群が見えだし、世紀の天体ショーが始まり出しました。
 これには3人とも大興奮でした。美しさにしばし見とれ、その後すぐに娘は必死に願い事を呟いています。
「あ、また流れた。自分のお願いが終わったら、ノエさん!ハルのお母さんと弟に病気が治るように願って!3人で何回も祈ったら、きっとかなうよ」
 何度も願いながら、娘は涙を流していました。
「ノエさん、今度ウチのお母さんにもツボ押しとマッサージしてあげてノエさん上手いからきっとお母さん元気にできるはずだ。お医者さんよりうまい」
「わかった。約束するよ。ハルちゃんもう遅いからね、子供はそろそろ寝よう」
 あまりにもよく流れる、輝く光のシャワーのような流星をさんざん見て、ようやく子供が眠たくなる時間になりました。いっしょにしばらく願っていたノエさんの目にも涙があふれていました。彼女がこんなに感情的になるとは意外なほどでした。
 娘が寝付く頃には、ノエさんのすすり泣きは激しくなり号泣のようになり、そっと背中を押して落ち着かせるしかなかったです。
「私、課長にはならない、もう会社は辞めるんです。お金もそんな偉い職階もなくてもいい。どうせ人間死ぬんだから、あんなに無理して働きたくない。もうどうでもいいの、私の人生なんて、どっかで野垂れ死ねばいい。
 私の名前、能恵姫って、この土地の伝説のお姫様からとってるらしいけど、親恨むたくなるほどとんでもない話なのよ。子どもの戯れで白蛇と結婚する約束をしたお姫様が、玉の輿に乗ろうとしたら、約束を破ったと龍に邪魔され、さらわれてしまい、水乞いの守護になるという伝説。
 男運なんて、ある訳ないってあきらめてた。20歳くらいで、カッコいい恋人と結婚する約束していたけど、交通事故で死んじゃった。それだけなら悲しいのは悲しいんだけど、その彼が死んでから分かった。とんでもない嘘つきで、あちこちに借金やらして、女にだらしなく結婚の約束も他でしてたり、子供も産ませてた。私はもうそれから、男なんて信じて愛するのイヤになって、今までずーっと仕事ばかりしてきた。
 私もでもね、ハルちゃんみたいな子供がいたらなあと思ったら泣けてきた。
 もうわかってるでしょう。私は勝手に勘違いしただけ、恨んではいない、私が馬鹿なだけだから、最初に会った時から、思い込んでいた。お母さんと弟がいなくなってお金がいるとかハルちゃんが言ってたことを誤解してね。ハルちゃんにはもうお母さんがいなくって、井上さんは奥さんに逃げられたバツイチだと思ってたの。
 奥さんがいて、闘病中だと知ってたら、誘いはしなかった。そんな不謹慎な誘いをするつもりは毛頭なかった。本当にごめん、申し訳ない」
 そっと、ノエさんの肩に手をかけた。
「こんな素晴らしい星空を見られて、誘っていただいた私も娘も感謝しかないです。私こそ謝らないといけない。イベントと家のこと以外に深く考えが及ばず、鈍感だったのです。好意に気付かなかった。でも仕事に利用するつもりじゃなかったです。まさか私みたいな中年の冴えない男とその子に、あなたのような人がそこまで好意を持ってくれているなんて想像できなかったんです」
「もう、最低よ、そう本当の最低、なんでよりによって、こんな平凡な草食系の男にコテンパンにフラれるなんてさあ、どうしてくれる。カッコ悪いし、きまり悪い笑うしかないよ」
「次の流れ星にノエさんが幸せになるよう祈ります」
「はいはい、そういうの一番うざい」
 ノエさんは、ワインをたっぷり二つのグラスに一つを私に勧め、いっぱい注ぎ、自分ががぶ飲みした。
「流れ星に乾杯、流れ星聞いてるか、ちゃんと願いかなえろ!」
 叫ぶとノエさんは、もう一度グラスにワインを手酌します。
 組み立ても比較的簡単だった4人ぐらい寝れるテントで間に子供を挟んで、3人は川の字にで寝ていた。いびきがうるさいし、何といっても大人の男女だから最初は遠慮していましたが娘という緩衝地帯があるし、広いのでテントに寝ることにしました。何と言っても寝ながら、透明な天井から星空まで見える今夜のもう一つのハイライトです。
「キレイでしょ、この天井、いくらお金だしてもこんな寝室買えない」
「本当に素晴らしいです」
「ずっと、この時間が続いたらと思うわ。でも時間は残酷、朝が来なければいいのに」
「酔ってなかったら、このまま朝まで星を見てたいですね)
「うん、でも飲みすぎたし、泣きすぎた。起きてるのはいいけど、寝顔をあんまり見ないでね、襲ってきたら投げ飛ばすしね」
「はい、もう寝ます」
 背中だけが少し痛く、大蛇か龍のような怪物に親子で襲われ、ローライズのノエさんが剣を持って戦い助けてくれる夢をみた。朝方、夢の中でか唇に柔らかいものが重なってくる感覚があった。
 少しすると、夜が明けノエさんがテントを出て、朝食の準備をしているのが分かった。さっきは娘が寝ぼけて乗っかってきたのだと思った。
 朝食も珈琲も、空気が美味しく絶品のように美味しかった。帰りの車ではノエさんは、これからいろいろ好きなことをやりながら横沢という雪の多い地元で、家業を手伝う話をしていた。
「Aモールより、ずっと小さいA系列のスーパーあるけど、それのおかげで商店街もすっかりシャッター通りになったのにね、そのスーパーももうすぐ撤退でね、レジ打ちのパートもできない、まあもうあの会社はいいけどね」
 別れ際やはり涙ぐんでいた。送ってもらい、家でシャワーを浴び終わると、娘が反省していた。
「私、昨日の夜ノエさん泣かしちゃったのかな。ノエさん好きだから、ずっと友達でいたいのにもう会えないのかな」
 それ以降、上芝氏能恵さんをAモールで見ることはありませんでした。


 【奇跡は起こるか
 妻の自宅療養というのも完治ではなく、むしろ最期が近づいての緩和期間の手前、当初の余命期間ではあと一か月を切っているときでした。
 妻は、万一の時の友人やらへの連絡、葬儀時の写真の選択まで話だし、娘に父と祖父母以外に頼れる親戚や何かと教えてくれる友人の話をしだす。これからの子供の中学、高校、大学の入学卒業、就職、結婚、孫、全てのライフイベントに立ち会えないことを謝り、悔しさをにじませてさめざめと泣いていた。妻との出会いからの思い出が走馬灯のように浮かびそうになった。娘が泣きながら駆け出し、外へ出た。
 雨の中、携帯電話をかけながら、どこかへ走っていった。
 なかなか帰ってこない娘は、何時間か後、雨に濡れた格好で上芝氏能恵さんを連れて戻ってきました。ノエさんは、メイクもせず薄い絹の作務衣か胴着のような上下を着て、Aモールの責任者時代とは全く違った慎ましい淑やかな印象でした。
「ハル?どなたなの。ああお父さんの知り合いの方」
「ノエさん、お父さんのお仕事の知り合いで、私のお友達」
「貴女ね、おかずのタッパーとかキャンプで何かと面倒見てくれた、そうこれから娘と夫のこと、お願いしたいと思ってお会いしたかったの」
「違うよ、お母さん、そんな意味じゃない、お父さんとノエさんはそんなのじゃないの。本当はノエさんすごく気まずくて、来るの辛かったはずだけど、私がお母さんを元気にしてもらうためにお願いしたのよ。私が車酔いした時、ノエさんがすぐ治してくれたの、あれならお母さんも良くなると思った。3人でお母さんの病気が治るように何度も流れ星にお願いしたから、お母さんは死ぬことなんて考えないでいいのよ」
 娘がこれだけはっきり言うことに大人3人も驚いた。ノエさんが凛とした感じで語り出した。
「上芝氏能恵と申します。ご主人には仕事で大変お世話になりました。実は私の父方は、合気道と気功の道場のようなものを田舎でやっていてます。上芝氏流整体術というものを心得ています。男の子には恵まれず、私が二十歳までに一通りは受け継いでいました。病はすべて、人間の『』から来るとも言われる通りです。少しだけ、お時間を頂き、私がハルちゃんに約束した通り、奥様の『弱気』を退散させ、『元気』を取り戻させます」
 ノエさんは、気功中は二人だけにして、見ないで欲しいと言い、私と娘は別室リビングで待った。何度か呻きや叫び、気合の声が聞こえた。何時間もかかったが、深夜になってノエさんは汗だくで疲れ切った表情で扉を開け出てきた。
「ハルちゃん、今の私にできることはみんなやった。お母さんの弱気を取り除き、瘴気(しょうき)をかなり吸い取ったわ。あとはお母さんの頑張り次第よ。お父さんと一緒に励ましてあげて」
 妻は顔色良く休んでいた。逆にただでさえ細いノエさんが青白く頬がこけたようになり、足元もおぼつかないほど、顔から生気が抜けていた。「元気」を全て移してしまったのではと思われた。
「ノエさん、ありがとう」
「井上さん、うまく言えないけど、たぶん瘴気がたまるのは、風水とか土地の気の流れに合っていない何かがあるの。もう井上さんは北日本で十分頑張ったから、できたら地元に帰してもらった方がいい。これは井上さんの因縁かもしれないし、北日本の持つ何かかもしれない。それも早くしないと、何かもっと大きな悪いことがおこるかもしれない。私を信じて、最後のお願いです」
 彼女は、それだけ言うのにもかなり息が上がり、たどたどしくなっていた。
 能恵姫が伝説の通り、龍の湖に帰ってしまうのか、そんな伝説を思い出すほど、上芝氏能恵の後ろ姿は儚く思えた。
「お父さん、ノエさん大丈夫かな」
 私は妻を娘に任せ、能恵さんを追いかけた。豪雨と落雷がかき消すように、行く手を阻んだ。稲妻が龍に見えた。

【奇跡 現代】
 2023年5月、私は娘の新居に荷物を運びこむ手伝いをしている。
 私は2010年転勤で関西に戻りました。その翌年2011年の3月には日本を揺るがす大災害が起こりましたが、個人的には次第に険しい運命は落ち着き、当時に比べれば平凡な日々で、双方の実家の親にも面倒をかけ子供もどんどん大きくなりました。
 子どもの頃、自分の家族が激流のような時期を過ごした娘も、今良縁を得て巣立とうとしています。
 めっきり会話の少なくなった父と娘だが、さすがに結婚となると感慨は深いです。
 ふと、小学生の時、よく父娘で北日本の大自然の中を遊んだことを思い出す。もう都会では見ることもない、満天の星空、あの時、娘は自分の幸せも流れ星に祈ったのだろうか、
「早く、片づけないと、食事の用意できてるって、お母さんからLINE来てるよ」

 そうあの夜から思えば、見違えるほど今はすっかり元気になった妻に尻に敷かれ疎んじられ、夫婦は幸せな倦怠期に入っています。
                        完

モテ期を逃す人、逃さない人 #コイバナリンク集

 昨日、自伝風のコイバナを「つづく」としたのですが、後編があまりに長くなり、現在編集、校正に手間取っています。もうしばらくお待ちください。エピソードに登場中のわが娘がもうじき結婚するので、メッセージも込めて全力で仕上げ中ですので、乞うご期待です。
 実際に多少美化して、切り取りや盛りはあるものの、ほぼあんな恋愛未満みたいなことが多かったのです。
 化粧品会社で女性が多く、モテたとか女性と悪く遊んでばかり思われるでしょうが、そんなことはありません。たしかにスゴイ遊びまくる伝説的逸話のような人、不倫しまくりの噂のような人もいましたがそんなことはなかったです。
 モテる人、すぐ恋人が見つかる人とそうでない人に分類されるなら、圧倒的にモテない方じゃないかと思います。独身の彼女いない歴長かったです。若い後輩に抜かれ何でこんな年上のおっさんがモテて不倫の噂まであるとぐらい、30代で未婚の頃は焦りと選り好みとかでもう典型的なモテない男でした。
 妻帯者がモテるのは、ある種独自の安定感や父性へのあこがれと、母性本能かとも思います。その頃に、一時的にモテ期はくるのかもしれません。顔がイケメンとかお金を持ってるとかも、要素ではありますが、お笑い芸人などでもそうですが、ユーモアとか機転のきいた優しさ、相手を思う敏感さなどがモテる要素、要はモテ期を見逃さないことのような気がします。
 その点でも私は鈍感でした。ただ、また敏感な人はモテすぎて、コントロールできないと誘惑に負け墓穴を掘るのです。
「月に行ける自転車、運命の再会」↓でも、ものすごい偶然に助けられましたが、次回「星空デート」の結末はもっとリアルに切なく感動的になる、なおかつ最後に叙述トリックを仕掛けて、エッ?となる予定です(笑)
 通算の閲覧がそこそこに伸びだしております。今後ともよろしくお願いします。
 コイバナリンク集↓

子連れ中年が禁断の星空デートへ? #コイバナ#星空デート#能恵姫#ラノベ – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

すずらん 「ふたたび幸せはめぐる?」 #コイバナ特別編 – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

月まで行ける自転車 (生涯最大の危機と運命の再会)  #コイバナ#運命の再会#ラノベ#剣道少女 – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

剣道少女は負けない #コイバナ#ラノベ – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

子連れ中年が禁断の星空デートへ? #コイバナ#星空デート#能恵姫#ラノベ

 これは私が化粧品の北日本販売の支社の時のお話。
 引かれるかもしれない前後編になりそうな長さですが、コイバナ?というより人生でも最大の激流に呑み込まれそうなエピソートでした。お時間のある時にお読みください。


 北国には美人が多いと言われています。赴任した時はもう結婚して子供もいましたので、結婚相手として出会えなかったのが残念なぐらい美しい人も沢山いました。雪の多い冬は厳しいですが、自然は美しく、少しクルマで走れば、野鳥のいる森や清流もあり、夜は都会では考えられないほどの数の星は見えました。ところが、この時期、最悪なことに妻と下の男の子が同時に病気になり入院してしまいました。妻が癌の切除と抗がん治療を決めた時、長男も小児としては難しい疾患で緊急入院となり、実家が遠方のため、取り残された私と小学校低学年の娘にも試練の時期でした。
 
 大手スーパーのAモールがもはや全国を席捲しだしていた時期です。勤めていたメーカーもA(当時の小売商号名はまだJ)での売上依存は大きく、大きなイベントを基幹店で企画して成功させるミッションが本社からもありました。ところがその地域の私の前任者やその上司が、出来の悪い人間ぞろいで、A企業に対して、まともな商談もできず、約束不履行やミスばかりで、関係のとても悪いまま引き継ぎもなく転勤してしまいました。
 Aのエリア内最大のモール内の部門責任者が、とんでもなく怖い方で、怒り心頭でもう我が社にもあってくれないというのです。元々厳しい方で、「女とは思えない鵺(ぬえ)」と周りから怖れられる人で、それでもしっかり現場を強く握った存在で、つむじを曲げられるとアポすらとれない情勢です。これでは大型モールのイベント商談のきっかけすらつかめない困った案件となりました。最悪、本社からのトップダウンで店長から下ろすとかの手段もあるのですが、モールは組織も複雑で現場がノーとなれば、最後はこじれて結果はさらに悪くなる可能性が高いので、手詰まりのまま丁寧なあいさつメールを送って反応を待ちました。休日にも時間があればそのモールを訪れ、客層など人の購買の流れを知り、商談の引き出しを増やして準備になればと思っていました。
 家の看病を抱えながらも、小学生の娘ハルを連れて商圏調査や小型イベントの巡回をしました。ハルが良くできた子で、母と弟のいない寂しさをこらえて我慢して気丈に明るく商用ドライブにつき合ってくれました。
 仲睦まじい父子の姿は、化粧品の現場には微笑ましく映り、また母性を擽っていたとは思います。子ども連れだと、こちらも時間を切りやすく、一人で留守番させているよりも気楽でした。
 ただ好奇心旺盛な子なので、マグロの解体とか呼び込み販売など。物珍しいものを見ると目を離した一瞬にフラフラとどこかへ消えてしまい、モールの中で迷子になるのが玉に瑕でした。ある時も、別のイベント会場に魅入られて、随分長く探し、迷子案内まで行きました。モールの職員であろう若い女性に連れられて、戻ってきました。やっと見つかった時は、嬉しいやら、周りに恥かしいやらでした。
 恐縮しながら、保護してくれた従業員にお礼をしていても、横でハルは「ウチはお母さんと弟がいなくなって、お金があまりないもんで、ノエさんお父さんを許したげて」と父を庇う発言までしてくれました。これにはノエと呼ばれたその若い女性も大笑いでした。すでに娘は名前を知り、友達になっているのかようでした。よく見るとキレイな女性で、こちらが恥ずかしくなりました。
 そんな情けない土日の休日の繰り返しでしたが、翌月曜日になって、ようやく、問題のAモールの現場責任者からアポの返信メールが来ました。
 会って話す前に前任の問題を謝罪し、かなり詳しい提案資料と、実際に詳細を面と向かって話すメリットを書き込んで、魂を込めたメールを送っていたため、さすがに無視はないとは思っていました。前任者が無能で出来が悪いほど、一時期は後始末は大変でも、しっかりカバーすれば実は後任にとってはオイシイことの多いのが、営業の常です。

 店の担当者や巡回の女性教育担当すら、脅すのか、本当に怖れを成しているのかの緊張感で、どんなコワイ人かと身構えて商談の応接室に向かいました。お茶を持ってきた女性がそのまま向かいに座りました。先日ムスメの迷子を案内してくれた女性でした。
「Aモール 〇〇店〇〇部主任 上芝氏(かみしばうじ)能恵(のうえ)です。井上さんハルちゃんのお父さんですね」
 真正面から見ると、能恵さんは色白で華奢で、目元が特に印象的な目蓋をされている北国美人の典型のような別嬪さんであり、この方がそんななかなか会えない厳しい商談相手だったとは驚いてしばらく見つめるだけでした。
「かみしばうじ、、さん。その節はお世話になりました」
「ははあ、変な長い名前でしょ、うじまでが苗字なんて変で私もこの苗字嫌いなんです。ハルちゃんと同じノエと呼んでください」
「まさかご担当の上芝氏様、、ノエさん、、だとは気づかず、ご挨拶も遅れてすみません」
「いろいろ悪口ばかり言われてて、どんな女だと思われてたでしょう。実際よく、コワイとか近寄り辛いと言われてるんです。でも前の方、名前も忘れたけどさすがにひどかったあれはビジネスマンじゃない。あんな人がいる会社はダメだと思ってました。井上さんのメールはよくわかりやすく書いてました。ハルちゃんにも先に話を聞いて、仕事に熱心で真面目な人と出会えたと思ってます。イベントのことですね、一緒に考えていきましょう。こちらこそよろしくお願いします」
 その後、驚くほど彼女はイベントを協力的に推進していただき、他メーカーが羨むほど優先的かつ精力的に動いてもらえたのです。確かに厳しい面もある人ではありますが、全て正論であり、仕事への情熱、現場への意欲から来るもので、順調に課題をクリアしていけました。
 私は家族二人の看病を抱えながら、大型モールのイベントが大成功に向かっていた時です。
妻の癌のステージは、最も難しい段階と医者から告げられました。
 人の運命とは、、人生の激流を感じた時期でした。
                                 (つづく)
 

                       次回、星空デートと能恵姫伝説