公務員共済はなぜ別物なのか

 私も 社会保険の仕事をする前は良く分からなかったことが多いのですが、一般の方も誤解されている方がたまにいるのが国民健康保険、国民年金と公務員共済のことです。
 国民年金と厚生年金、国民健康保険か協会健保・組合健保と書かれていると、「国民とつくから国がやっているのだろうから、私の夫は国民〇〇の方だろう」や「会社で入るのは厚生年金だから私の父は国民年金かな」という誤解です。
 まずはざっくり、国民年金や国民健康保険は、自営業、農家、フリーターなどサラリーマンや公務員ではない人が入る国が運営する制度です。会社に勤めているサラリーマンは年金制度は厚生年金で、健康保険は大企業は組合健保、その他の企業は協会けんぽです。公務員が入っているのは、公務員共済という制度です。言葉としては共済イコール保険ですが、この公務員共済には「年金(長期共済)」「健康保険(短期共済)」「雇用保険(退職等年金)」が含まれています。
 社会保険の知識やら質問の選択肢が足りないのと共済組合という言葉がやや難しいからの誤解も多いです。
 さらに、年金は最終的には一元化されたと言われ厚生年金と同じよう受給期間を計算されるので、国民年金と対比して言えば大まかには厚生年金のグループですからややこしいです。1階の基礎年金の上にある2階建ての部分です。また年金と雇用保険の共済は、パートでは入れない制約もあり公務員でも契約社員は「雇用保険あり、厚生年金」という場合があります。健康保険は共済の場合と協会けんぽの場合があるようです。
 公務員共済に加入できるのは原則、完全フルタイム勤務の公務員
厚生年金に比べ、公務員共済の加入要件は独特のものになっています。
厚生年金では、
①1日又は1週間の労働時間が正社員の概ね3/4以上であること。
②1ヶ月の労働日数が正社員の概ね3/4以上であること。
という2つの要件に該当する場合、事業主は従業員を厚生年金に加入させる義務があります。
もっと具体的に言うと、週40時間労働の会社であれば、概ね週30時間以上、週35時間労働の会社であれば、26時間15分以上であれば、厚生年金の加入を考えないといけません。
これは労働契約であって、パートタイマーやアルバイトなど、どんな雇用形態でも、その契約内容の如何にかかわらず、労働時間が上記の基準を超える場合は加入しなければなりません。
しかし、公務員にはこの基準は適用されません。
 先ほど述べた通り、市役所勤務でも厚生年金に加入されている知り合いがいたり、市役所退職後に市役所再就職で「厚生年金扱い」で働いている近所の方がいたりと、公務員共済については私も基準がよくわからない状態でした。
 この12月から私もひょんな経緯で事務補助員待遇から事務官となったため、厚生年金から国家公務員共済となり、年金は共済、雇用保険は外れて退職等年金掛金と呼び名も変わります。

 しかし、この立場でやはり思ったのが、公務員共済と、年金機構のつながりの悪さ、マイナンバーカード制度でデジタル化とも言われているのに連携や記録反映の遅さ、不明さです。
年金機構の人でも、共済に詳しい人は限られるのです。ほとんどの期間が公務員の方は未だに共済組合から請求の手続きをされますし、一時的に共済期間があった方は見かけ上「消えた年金記録」!になりやすいのですが、1年に1度誕生日の前々月には両者の記録の情報を一元化して整合をするのです。しかし、これも60歳まででねんきん定期便に反映させるためで、受給見込みをわかりやすくするためです。
 逆に言うと、公務員に就職した直近はなかなかデータが反映しないのです。公務員はそれだけ秘匿性の高いものなのか、新卒でさえ半年かかるのです。健康保険の方のマイナンバーカード連携も、他の健保や国保に比べ遅いです。国がやっている事業なのですが、このあたりはブラックボックスです。
 感じるのは国家公務員の上から目線です。
 

年金制度ムズカシ過ぎ、停止者には敬意を – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

頭の良い人は人生何周目か?天命か

 大手化粧品メーカーを定年まで勤め、その後は年金事務所を中心に社会保障、厚生労働の公務を4年、その後現在は裁判所で司法系と方向の違う仕事をしています。こうやっていろいろSNSでノマドもやっていると「器用ですね」「私は今の仕事以外、他のことはできない」と言われる人もいます。
 今、ドラマなどで流行りのタイムリープものだと、「人生何周目?」みたいに言われますが、自分では不器用というかとてもそんな偉いものではありません。
 医者や学者になったとか、大会社の社長になったとか、司法試験やら難関資格を突破した人を見ると、その記憶の良さとか理解力こそ「前世の記憶」「天命」でもあるのかと思います。あるいは企業勤めから、自営に転じて家業を拡張とか、議員やアーティストに転じている人もおり異能に関心するばかりです。
 私の場合、集中力が長続きせず、記憶容量も小さく、意識が散乱・発散するのでケアレスミスは多いでし、飽きっぽいので2級ぐらいまでの資格が精いっぱいでした。今身近におられる裁判官の方など、日本でも最難関の司法試験に受かり、その中でも難易度の高い裁判官に就かれていることにはただ感心するのみです。もちろん見かけも含めてある意味では普通の人なんですが、やはり「天命」を背負ってなのでしょう。

 私に関しては60歳過ぎての働き方に関しては、特に志が強かったものではありません。ただ、興味があった新しいことに機会があればチャレンジしたかっただけです。その世界に何十年もいる人にとっは新参者でわきまえも常識もないアウトサイダーです。
 それでも新卒からの勤めと違い、ある意味「絶対辞められない」というプレッシャーのようなものは減って、慣れない仕事そのものは大変ですけれども、肩の力は少し抜けた感じの気楽さにはなってきています。
「社畜」とか「仕事中毒」というのは、本当に立場変われば抜け出せないのも良く分かります。私も若い頃、長いこと、クソみたいにブラックな会社で、さらにそんな中でも汚い上司にこきつかわれました。
 時間が限られているのだから、若いうちにもっとうまくやれたこと、主張したり、要領よく立ち回れたのではと思うことはあります。
 お酒の付き合い、ゴルフやギャンブなどの遊びの付き合いも本当に下手で不器用でした。50歳過ぎてから、ようやく美味しい店を見つけることは上手くなりました。
 60歳を過ぎ、転職して全く知らない人の中で、知らない仕事をするのに関しては「面白い」とだけ無邪気に妙にポジティブに進みました。最初は特に失敗ばかりでしたが、それもまた新入社員、雑巾がけを味わう、マゾではないけど、真新しい自分の能力を発見できる楽しみのようなものがあります。
 学生とか、まあ社会人になってもですが、英語とか簿記とかパソコンとか勉強したものを職場で役立てる機会とかシチュエーションは限られます。あっても競争が激しく他の人がやっているとそれ以下のスキルだとか、その組織では永遠にその勉強は無駄になりかねません。簡単に異動なんて無理な場合もあります。
 2周目の人生とか器用と言われるのは私の場合、何となく好きで勉強したり、いつかは役立つと信じ資格をとったり一見「無駄」をしてました。経験して引き出しを多くしていたものが、ここへ来て回収されるように役立っているような気がします。
 取れなった資格の中に「図書館司書」というのがあります。本が好きなので図書館への転職も考えてチャレンジしました。ところが、この資格は簿記や宅建などに比べ合格率は高いのですが、学生時代には取っておかないと、再入学して講義を受けないと取れずお金と時間が必要です。私は本は好きですが、図書館の中の仕事をずっとするのは合ってなかったとは思います。
 これはまあ、運命というのかやはり私にとって図書館は、趣味と勉強、癒しの空間で仕事場ではないという「天命」なのではと思います。

 勉強とか経験、失敗っていいよなあと今になって思えるのです。2周目なのか1周目かそれとも3周目以降かは知りませんが、一度の人生でガチャガチャいろいろできることを辛さも含めて楽しんでいます。
 
 

書評:「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈

 本屋大賞受賞ということで、かつて書評を上げたかなと思っていたがあまりに滋賀ローカルなので続編が出た時にSNSで書いただけでした。今回初UP。
 滋賀で何年か仕事をしていたのと、先日も書いたように西武大津店ともかかわっていたから楽しめる部分もあったかと思っていましたが、全国区の全世代で楽しめると絶賛されていました。
 連作短編で、
『 2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。
コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。
M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。
今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかり。 』
   という感じです。
 スキル的には、もう少しというところも無くはないですが、それがエキセントリックな主人公にリアリティを与えて、彼女を気になる存在にして応援したくなるのかもしれません。
 【以下ネタバレ】連作ということで、私的には全編を最初の2編と同じ出だしで『また成瀬が変なことを言い出した、、』とパートナーの島崎視点だったらとも思いますが、それぞれに味わいと爽快感はあります。
 
 膳所という難読地名が、漫才コンビの『ゼゼカラ』はじめ多く登場します。私の会社はかつて滋賀エリアは彦根に拠点があり、湖南大津地区は膳所本町に小さな営業所を構えていました。営業所といっても事務員さん1人で、所長以下4人程度の規模でした。私は彦根拠点の直轄西武大津店による際たまに休憩で訪れる程度でした。その後拠点が草津に統合されると営業所も無くなりました。
 その小さな膳所の事務所の雰囲気はなぜか今でもよく夢に出てきたり、懐かしく思い出されます。

年金より減り続ける退職金 大問題

 京都市を財政破綻寸前に追い込んだ門川大作市長だが、今般4期を満了して2億の退職金を貰い悠々退任します。リニア反対で注目され、職業差別発言で辞職した静岡県川勝知事も4期目途中なので1億近い退職金を貰って逃げ切るようです。
 優雅な話、首長は自治体トップで大変な激務だからと一般市民は納得するでしょうか。
確かに4期16年とは言え、世間では15年程度働いて自己都合で辞めれば500~600万がせいぜいの退職金相場です。
 国会議員や総理大臣に比べても、地方首長の退職金は自治体にもよりますが、改革の進んだ大阪など一部除き軒並み高額です。
 これは、戦前まで首長は公選ではなく、中央が任官していた名残を引き継ぎ改革されていないところからきているようです。
 一般の公務員や企業に働く人は大卒で37年働いても、20年前は平均3000万円もらえたものが現在では2000万円程度に落ち込んでいます。川勝氏や門川氏のような年齢で、第二の就職をしたら、1億どころかゼロの場合も多いでしょう。60歳から再就職で退職金制度があったとしても10年勤めてもせいぜい100万にもならないでしょう。よほどオイシイ天下りで、理事や顧問、嘱託に就いても現役37年の2000万を超えるような退職金は民間ではあり得ません。
 しかし、彼らの減額や辞退をアピールしても、多少溜飲が下がっても庶民が貰える退職金が増える訳がないのです。
 前にも書きましたが、春闘の労使協議でベースアップや、ボーナスでは大きく騒がれ注目されますが、この20年間でひそかに退職金規定はどんどん改悪、減額されてきたののです。
 定年後のマネーライフの不安と言われる時代で、年金では足りないことが良く話題になりますが、年金給付の増額は年金財政、少子高齢化の構造で難しいのは誰でもわかるはずです。であれば大企業を中心に、給与や賞与とともに退職金も増額しなければ安心して働けないし、良い人材も集まりません。就職の情報に、給与や賞与、労働時間は書いてあっても退職金は制度ありとしか書かれていません。
 企業にとって負担ではありますが、確定給付企業年金、中小企業退職金共済は法人税非課税です。ここらの充実で若者も含めて働く人の不安を取り除かないと社会は殺伐と暗くなります。比較的若い段階でも、退職金と失業給付でしばらく休んでやリスキリングやリカレントで次の就職に備えられるようにできるのです。

書評:柳広司「南風に乗る」 沖縄の昭和史

 リーダビリティには定評のある作家柳広司ですが、やや重いテーマを掘り起こした作品でさすがに読むのには少し時間がかかりました。
 軽い筆致で、痛快でスリリングな戦中のスパイ小説を描いてきた作家が目をつむれない歴史の暗部を社会派的な視点に移行しつつあるところです。
 この物語の主人公は沖縄というキャッチコピーです。

『ジョーカー・ゲーム』シリーズで知られるベストセラー作家が挑む「沖縄が主人公」の物語。沖縄からの風が「真」をはこんでくれる、戦後、日本は二つの国に分断されていた。
本土から切り離され、米軍支配下に取り残された沖縄は「独立」に向けた闘いを開始する。
遠く離れた故郷沖縄に思いを馳せる詩人・山之口貘、“アメリカが最も恐れた男”不屈の政治家・瀬長亀次郎、戦後の東京で私費を投じて米軍支配が続く沖縄との連帯を模索する中野好夫。


 返還までの沖縄の人々を襲った悲劇と苦闘の数々は、未だにやはり本土の人間が過去と割り切れるものではなく、語り継がれるべき近現代史です。
 私は沖縄の戦中、戦後の史実を掘り起こせば、平和世代がリゾート地として遊ぶためだけに沖縄に行くことは何となくためらわれます。

 沖縄の過去と現在をよく知らず、沖縄でたっぷりリゾートを楽しんだ後、日本人はウクライナの戦争になぜもっと主張し、支援しないというイギリスの友人がいました。
 おいおい、日本が主張すべきは、アメリカやイギリスに対してだと言いたくなります。アメリカはとうに世界の警察を辞めました。辞めたというか、化けの皮が剥がれたのです。日本人の中には戦後の占領政策のアメリカ人を紳士と全面的に感謝し親米となっている人も多くいるようですが、沖縄への戦後の「仕打ち」を見ると、アメリカ人は紳士でもなく蛮人です。
 もうベトナム戦争も中東戦争もイラクも飛ばして都合よく正義感になってウクライナウクライナと叫ぶなと反論したくなりました。

 日本の戦後は本当に終わっていないし、本当に独立はしていないのが、基地の偏在する現状と、その土地の背景、沖縄史を紐解けば良く分かります。
 ドキュメンタリー的な小説であり、今50代の柳氏の伝聞取材などの構築、創作もあるでしょう。
それを愛国、右翼系の方が、沖縄人が全て中国とつるんだ左翼のように批判するのもどうだかとは思います。
 基地や日本の中央とつながり、多くの沖縄人も日本のカオスと一体化した今、瀬長の生きた頃の投票率90%だった熱い時代と今では市民の感情も変わってきています。差別ともいえる賃金格差も昔ほどではないでしょう。
 それでも、基地があること、国境近くにある要塞の島であり、日本政府に半ば見捨てられ多くのリスクを背負う宿命の島に抗いながらも、なすすべなく無理やり替えられたことには違いはありません。
 
 柳氏の地の分に、現政権批判のようなところがあり、そのあたりはちょっと不要かなと思います。保守系の神経をあえて逆なでする必要はなく、日本人の愛国心に「親米一辺倒」は少し違うよと訴えれば良いことです。
 瀬長亀次郎については、少し別の視点と表現で、小林よしひろが「ゴーマニズム宣言沖縄論」でも詳しく熱く絶賛して描きあげています。
 沖縄人に関して暴言的な発言をした百田尚樹も、近現代の人物をモデルに小説を書いています。右と左に両極端とも思われがちですが、愛国者、親米保守、右翼といえども瀬長が傑物であることに間違いはないですし、アメリカの占領政策に、日本政府の吉田茂、佐藤栄作らが無力で弱腰だったのも否定はできないでしょう。
 歴史は、書く人の立場によって、右にも左にも動きます。しかし、歴史事実に右も左もありません。百田尚樹にしろ、採り上げる人物がゼロ戦の操縦士だというピックアップの仕方と技巧が右寄りであり、大きな歴史のうねりは変えられません。


 自民党政権が弱まり、日本もまた変化の時代、国際情勢も不透明な現代、沖縄がまた戦争の基地に使われる時期が来そうです。
 

「虎に翼」 寅子にも負けず 社会の変化

 このトシで家で六法を置いて勉強するとは、夢にも思わなかった私の机に今の現実です。朝ドラヒロインに負けずに勉強です。
 先週からの朝ドラ「虎に翼」ではヒロインの母親役石田ゆり子が娘の決意と「時期尚早」との言葉に逆切れし、振袖の替わりに六法を書店で購入する場面があり、今週から伊藤 沙莉演じる寅子が法曹界に進むのでしょうか。
 私自身は、今の時代なので職場でカンタンに六法はじめいろんな書籍を貰ったり、ネットで手に入れられる恵まれた時代です。そして、働く周りの半数は女性であり、昨年卒業した同じ大学の法学部出身という女性もすぐ横にいますし、今年裁判官になったピカピカの判事補、司法試験に受かった司法修習生もやはり半分女性の時代です。
 産休明けの若い女性の裁判官も限られた時間ですが、働いておられます。そういう面では戦前、昭和のはじめ、戦後直ぐぐらいとは時代が変わったとはつくづく思います。
 

 そして、女性の生き方、価値観、ドラマのネタバレになりますが、当初ヒロインの母親は娘が学問に秀で、成績も良く勉強熱心なのはわかっていながら、女性は馬鹿の振りをしてでも、お見合いをして結婚して家に入り子供を作っていかないと幸せになれないと譲らない。失敗すると、とてもみじめになる危険があるからと古い価値観、戒めを押し付けていました。
 

 ただ、一見古い考えにも思えますが、この考えがほぼ絶滅危惧種になった現代、子供を自由にさせ過ぎて育てて、結局は若い世代で仕事も家庭も子育ても十分にできないままの人間が増えているような気がします。人口が右肩上がりの時代では中途半端な人間が多くても良かったのですが、今はそれが少子化、人口減少に直結します。
 女性差別して、優秀な方だけをというと、今の時代はすぐ文句を言われ炎上しますが、女性の中にも、昔のように結婚して子供を産んで家庭を守っていくだけの生き方でいいと思っている人もいるはずです。いろんな職業の女性進出を描く朝ドラ的な考えが、逆に伝統的な考えを差別し追いやり結局は結婚し無い人が増え、少子化にもつながっていくのではとさえ思います。
 女性が能力もあり、ともすれば男性よりも優れている人は多くいます。それでも子供を産んで母親として育てることは女性にしかできないし、それがなくなると人類は減り続けることになります。この大前提を学んで、仕組みとして、産休、育休、保育園や手当があるということを男も女も肝に銘じないといけないのです。
 
 女性が働くこと、自立すること全てが少子化ということではありませんが、何かこのあたりに少子化対策のキーがあるのではとは考えます。

 他に勉強することも多すぎるので、これ以上は他の人、AIにでも考えてもらいましょう。
 
 

年金制度ムズカシ過ぎ、停止者には敬意を

 2024年度4月から、少しだけ支給金額や、厚生年金の加入要件が変わり、在職老齢年金の停止額も変わりますが、マイナーチェンジであり来年の答申で2026年度からは大きく変更が予定されているようです。
 ネットを見ていても、年金に関しては「わからない」「難しい」のさまざな問合せや説明があります。それにしても、私も3年ほど年金機構の直轄年金事務所にいましたが、制度の煩雑さで問合せが多く説明の難しいことが多い職場でした。
 国家公務員であった組織を公務員みなしに替え、年金問題を解消して制度への信頼を取り戻すための組織変更でできた機構ですが、官民どっちつかずの宙ぶらりんな組織になっています。
 年金機構から送られてくる、資格や給付に関する案内、正直言って情けなくなるほど、「悪文で、言葉も難しく、難解」なのです。機械的に文言を当てはめた難解な文章で、未だに昭和61年に厚生年金に統合された「船員年金」などの文言がくっついている割に、常人には理解しがたいものです。
 過日、私のSNSでも少し厳しい言葉を投げましたが、在職老齢年金を支給停止する際に、あまりにもリスペクトがない、失礼で機械的な文言と対応なのにもあきれました。一定以上稼いで働いたから反則、犯罪でも犯したような印象です。
 「わからなかったら、事務所に来るか年金ダイヤルに電話して来い」これではまるで国民をバカにした横柄な姿勢です。
 お客様に合わせて、窓口の接客や電話の対応など、当然分からないから問い合わせも増えます。「わかりやすい文言で」と組織内の対応マニュアルには書いていますが、そもそも社会保険の言葉が難しいい上に、制度も良く変わるので適用も計算も煩雑です。
 
 その上で、巷にも「繰り上げ繰り下げ」「年金支給停止、税金や保険料負担の【〇〇万円の壁】対策」いろんな玉石混淆の情報が流れます。
 そもそも何歳から貰った得だ損だというものはありません。法律に触れないからと言って、それほどお得な裏技も存在しません。
 そんな情報が錯綜するだけ、年金制度自体も迷走しているのと、何だか年金を貰う人が肩身が狭くなって申し訳なくなるようなスタンスはどうしたものかと思います。
 
 厚生年金を長く収めた人が、今の時代高齢でも働いています。働くことを片方では勧奨しておきながら、一定以上に稼げば支給を止める。働かずに貯金で食いつなぎ、繰り下げをした方は年金が増えるなら、高齢者の就労意欲など、奇特な人以外無くなります。財政が厳しいから適当に働いて食い繋げという感じです。
 いくら年金財政が厳しくても、目先の給付を惜しみ、働く人が減れば結局保険料は入ってこないのです。
 ある方も言っておられましたが、在職老齢年金の支給停止は直ちにやめるか、せめて停止した人には財政協力の意味で感謝状のようなものでも贈ればと思います。そういうスタンスがないことで、古い権威主義にふんぞり返っているので、年金制度の理解も協力も得られにくいのです。

明日から新年度となります

 近所の公園や川沿い、学校などのソメイヨシノがまだ咲いていない珍しく遅い桜の開花時期というこの春です。それでも明日から否応なしに4月、新年度です。
 年度が変わっても、あまり影響の無い人もいらっしゃいますが、季節と同じで社会も確実に変化を迎えます。
 学年の同窓たちは、また一つ誕生日毎に年齢を重ねていきます。
 明日の新聞では教員や公務員などの人事異動だけでかなりの掲載があります。民間の企業の入社、異動を含めるとかなりの数の人が新天地、新たな学校、学年、組織に変わるのです。
 私の所属している裁判所で仕事をされている人びとも、裁判官、事務官など全国で入れ替わります。


 社会全般で、公示されている法律の改正、制度や基準も年度で変わるものがあり、ほぼ全ての人に大小影響があります。
 話題になっているところでは労働法で、残業労働時間の業種、職種での暫定猶予が終わり、運転手や建築作業の業界が、人手不足や配達・納期、工期の遅れが懸念される2024年4月問題があります。お医者さんも対象です。すでに対象なのに現実は上限超えでブラックのままという業種、職場もさらに厳しく処分されそうです。
 働く側からはサービス残業、サービス休日出勤が当たり前で、有給も産休も育休も取れなった昭和から見ると隔世の感ですが、それはそれで経営や管理側からは難しい面が多そうです。
 
 年金世代の私などの興味は社会保険ですが、年金も、給付金額が変わるのと、10月に向け厚生年金の小規模事業所でも短期労働者に社会保険加入が義務付けられます。
 これも経営者は負担でしょうし、最終的にはパートの人の年金は負担が減り貰える金額が増えるのでしょうが、大きく増えるものではなさそうです。
 年金を貰いながら働く人のいわゆる在職厚生年金も、支給停止額基準(標準報酬額+年金支給月額)が48万円から50万円に上がります。
 それでも、なかなか就労意欲の境目とは言い難く、高齢者に働いてもらうなら早急に撤廃すべきと思う案件です。

 遅い桜を今年はゆっくり愛でながらも、世知辛い慌ただしい4月になりそうです。

書評:町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」映画化レビュー 声の届けられない人達の物語

 2021年本屋大賞を受賞した町田そのこのベストセラー小説。タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラが聞き取れないほど高い周波数で鳴く、世界で1頭だけの孤独なクジラのこと。

 自分の人生を家族に搾取されて生きてきた女性・三島貴瑚。ある痛みを抱えて東京から海辺の街の一軒家へ引っ越してきた彼女は、そこで母親から「ムシ」と呼ばれて虐待される、声を発することのできない少年と出会う。貴瑚は少年との交流を通し、かつて自分の声なきSOSに気づいて救い出してくれたアンさんとの日々を思い起こしていく。
 現代と、傷ましい過去が錯綜し、深い傷みとなった因縁の謎も解かれていきます。家族の暴力や、心の病、LGBTなど深く重苦しい問題が少し軽妙でユーモラスな筆致で描かれます。

 以下映画の公開されている情報から、ネタバレはない程度に。


 映画では演技には定評のある杉咲花が貴瑚役で、彼女を救おうとするアンさんこと岡田安吾を志尊淳、貴瑚の初めての恋人となる上司・新名主税を宮沢氷魚、貴瑚の親友・牧岡美晴を小野花梨、「ムシ」と呼ばれる少年を映画初出演という桑名桃李が、少年の母親を西野七瀬が演じています。
 やはり映像化と興行的には厳しいところもありました。杉咲さんはすっぴんに近い体当たり的演技も素晴らしいですが、やはり重すぎる映画に沈めてしまい勝ちです。他の役者さんも売れっ子が多く、役作りが難しいのと時間が錯綜し、作りこみを鑑賞する方は少しシンドイでしょう。原作が映像2時間程度にはおさまらないのです。
 若手男性俳優も悪くはないし、まあ頑張っています。志尊君は戦隊ヒーローの凛々しさではなく「半分青い」以来のジェンダー難しい役、宮沢君はこの映画では「いい人」ではなく新境地的なチャレンジでした。
 映画から先に観た人は原作を読んで欲しい典型です。

ホラーは怖くない  書評「七人怪談」

 最近の選集、いわゆるアンソロジーは、編者が権限強く構成のイニシャティブを持ち、テーマを指定して作家を選び書下ろし中心という企画ものが増えてきました。
 昔は、既読の短編がいくつかあると購入するのを憚られたりもしたし、かといって好きな作家が入っていないのもという感じでアンソロジーはイマイチな印象でした。まして出版社の事情で、人気のある作家のシリーズを選べばない大人の事情もありました。

 その点では最近は面白く、とくにこのアンソロジー、ホラーの名手のが名手の書き手を選び書下ろしが競作という企画そのものが面白いです。
 アンソロジーの楽しみは、初読みの作家や読まず嫌いの作家を掘り起こせることです。今回も何人か発掘できて楽しめました。


 ホラーは確かに、怖いもの、後味の悪いものもありますが、基本私は書き手側に回りますから、結末を推理し、そう怖くはないです。実話風というのも、よくそんなにもと感心はしますが怖くはありません。
 ミステリやSFとも同じで、あくまで殺人が起こるわけではなく、謎の構成や展開、結末などのストーリーテリングが面白いのです。おどろおどろしい部分はある程度、ミステリや最近の政治討論などでのフェイクやミスデレクションでありレッドへリング的なものです。
 実際にスピリチュアルなものを信じないことはないです。それでも強力な力をもった妖怪や物の怪のようなもの、悪霊や幽霊が恨みの力で存在しているとは思いません。それなら戦争や大震災などの大量の死者が出ているのにそんな力は発揮されていないからです。
 人間の死の世界、輪廻でもあるとしたらそういうのは、こんなホラーの世界の恨み事的なものとは違う次元のように思います。
 この本の中にもあるように、人間のやることの方が怖いかもしれません。