家業を継ぐかどうか

 私は商店街の化粧品店の次男として、高度経済成長期に生まれました。平成の初めに改装をした両親の店、商店街や個人商店というものもその辺のバブル期が最後のピークでした。
 商店というのは、ある程度知識やら技能もいりますが、個人で経営していくのではやはり大手が有利になっていく時代になっていきました。再販の撤廃、大店法緩和など新自由主義が結果としては小さい商店を追い込み、少子化の後継者不足で止めを刺されました。

 化粧品、本、電気屋、レコード店、八百屋、豆腐屋、私の知る実家の商店街もどんどん廃業する店が増え、こじゃれた雑貨やスイーツ、カフェなどが残る感じになっています。

 兄も私も、業界に近い就職をして、家業を継ぐか思案する間に、お互い老いていきました。両親も後継者の状況ふまえ、この商売がこの立地で到底無理であり、跡を継ぐことは考えず、自分の時代で店を閉めました。

 小学校、中高、大学とそれぞれ友人たちも、家業を継ぐか、就職するか、就職しても途中で家業を継ぐなど、いろいろな選択し、いろんな人生を歩んでいます。順風満帆な人もいれば、波乱万丈な人もいます。

 センチメンタルな小説や映像作品などに、理髪店がたまに出てきて、会話術や人間関係力が重要な職業として描かれています。技術の必要な職人という感じですが、跡継ぎのいないケースの話もあれば、紆余曲折で後継を得る場合もあります。この業界も時代や時節で、激安の量販型のチェーンのカットハウスも出てきて、昔ながらの床屋さんは減ってきています。
 休みも少なく、当然土日なども休みではないため、他の業界の人と友達付き合いが難しくなったりする上、混んだらそれはそれでハードな仕事で、今の若者がやりたがるとは思えない職業にも思えます。

 それでも、ちょっとしたこだわりの男性は理髪店を変えず、同じ店に高くても通う場合もあり、ある地方では政治家が秘書の運転する高級車で乗り付けて、順番をぬかしてカットをしてもらう光景も見ました。

 与党の参議院の上のクラスまでいった世襲政治家ですが、その後継は現在途絶えたようです。
 政治家も世襲は大半を占めますが、上手な後継はそれなり難しいのでしょう。安倍さんもそういう面ではサラリーマンから切り替えて長く続け、命まで捧げて大変なものです。散髪で順番をぬかすような政治屋ではあんなに長くは無理でしょう。

 バブルを挟んで、家業を継いで商才もあったのか、大きく伸ばして儲けた人も、バブル崩壊、不況の影響で老舗や業界ごと苦戦を強いられた人もそれぞれ知っています。

 何代目とか、名門、老舗、お寺さんなど、好きか嫌いかとか合う合わないに関係なく、男子一人ということで子供の頃から、跡継ぎを選らばないといけない人生がどういうものだったのか、次男で自由に職業を選べた自分には想像もつきません。

 もちろん、ご両親が全て健在な人ばかりではありませんが、多くの人はやはり親の職業を見て、DNAなのか、それとも何かを感じ受け継ぎ、そこに近い選択をしている場合もしているのではないかと思います。
 ただ儲かるとか、羨ましく見える職業でも、外から見るよりも業界に入り、上になったり多くの人と交わりポジションになればなるほど、責任が重くなり大変な場合が多いものです。

 親が死んで、私自身も、円熟というのか老境、自分も親の晩年にやがて近づいてきました。だんだん親の気持ちは良く分かるとも言います。産み、育ててもらった恩に感謝するとともに、報いるためにも、それ以上頑張っていきたいとも思います。

 

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