漢語の解説から、仕事や生き様を考えます。
【轍鮒之(の)急】とは、危険や困難が迫っていることのたとえ。
また、切迫した状況にある人のたとえ。
「轍」は車輪の跡、わだちのこと。
「鮒」は魚の鮒(ふな)のこと。
車輪の跡にできた枯れかけの水たまりにいる鮒という意味からです。
荘子が監河侯に米を借りに行ったが、監河侯から「近々年貢が入るのでその後に貸しましょう」と言われました。
それを聞いた荘子は、「ここに来る途中で枯れかけの水たまりにいる鮒から水をくださいと助けを求められました。そこで私は、後で川の水を持ってきてあげようと答えました。しかし鮒は、水が欲しいのは今だと言って怒ってしまいました」というたとえ話をして窮状を訴えたという故事からです。荘子は戻ってくると乾いた水たまりで日干しになった鮒を見つけたという結末もあります。「早く助けろや」という話です。
こういうたとえを極端な危機管理に当てはめると、ごく当たり前に面倒くさい手続き抜きに、早く助けないとということになります。生活保護とか保険や給付支援の審査などもそうです。もちろん、不正やミスがあってはと慎重にならないといけないのですが、いかに迅速にするかは命にかかわってきます。
実は阪神淡路大震災のすぐあと、私の恩師的な上司が使われた言葉で、その後に私の人生の行動の指針となっています。良きにつけ悪きにつけ、拙速であるべきか、慎重であるべきかと悩む時、根回し以前に半ば衝動的でも行動を起こす方向が身に付き、それで感謝されたこともあれば、批判を受け、失敗したこともあります。
そんな災害が起これば、何をおいても手を差し伸べるのが先見だと思われますが、当時兵庫県の中部を担当していましたが意外とその判断すらできない人もいました。
前々から絶対にやれと言われていた営業ノルマ的な仕事、報告業務、販売のコンクールの聞き取り集計などを平然とやりかけて、周りも口あんぐりになってしまい、かの上司の訓話へとつながったのです。
こんなケースは議論の余地はないのですが、行政系の仕事だと、平然と今生活に困っている人が申請をして給付がおりるのに時間がかかります。1カ月後なら早いくらい、2カ月から3か月後が当たりというケースはあります。2週間ぐらいしてから書類の不備が返ってきたり、1カ月後に不足の書類を出したり、修正しないと審査されないという連絡があったりすると、真っ暗な気持ちになりそうです。いつなのかと、問合せを受ける方も順調に正しい書類が流れても、決済の稟議(スタンプラリー)の時間、銀行振り込みの時期などで最低このぐらいかかるという早くしてあげたいという気持ちはあっても、時間がかかる体制を説明しないといけません。
行政は時間と人件費や手間をデジタル化によって、劇的に圧縮して、轍鮒の急にあえぐ人をすぐ救うべきです。
役所系の人にいまだに、市民に丁寧に説明するのに、延々と時間をかけるのを仕事の誇りとし、美徳としている方がいます。また人的間違いを人の手間をかけて二重三重に確認する方が結局はミスやクレームが減って時間はかからないという人もおられます。
ケースバイケースとも言え、(もちろん皆さん緩急はつけるのですが)私は根本的に時間は掛けないことに徹することが、より多くの人にサービスを提供できると信じています。時間をかけたところで、人的なミスは無くならず、ミスが起こると、システムの改修にはすぐ向かず、「チエックを強化します」といって、人の手間を増やします。チエックを強化するという時点で、人を増やすか、新たな機械やソフトでも導入しない限り同じミスは繰り返します。人間はミスをするものですし、経験を重ねると完全にミスをしないというわけではなく、経験を繰り返すとマンネリに陥り油断や傲慢が生まれかえって取り返しのつかないミスや不正の見逃しが起こります。
行政や大企業の不祥事はさんざん、見たり聞いたりしましたが、そんなものです。
少し内容は違いますが、そんなに大事なことでなくとも、手紙や、最近だとSNSで返事や文章を書くのにも、ものすごく慎重になり、結局はタイミングを逸してしまう人もいます。
誤字、脱字や文章の不整合など、過去との矛盾など、無い方が良いですが、気にしだすと何も書けないし、呟けないことになります。
N党の立花氏なども高卒で漢字はやたら誤字もありますが、動画系での主張、法律にも詳しく、間違いなく誰よりも鋭いです。その時に発信しないといけない旬の問題があります。
生命にはかかわらないとしても、その時その時に、早くリリースしたり、会話のキャッチボールをしたりしないといけない大切なことというのは、世の中に沢山あります。SNS上の一期一会のようなもので、1カ月後では腐った日干しの魚で誰も見向きもしない状態です。
今はツイッターやブログ、動画サイトなどのSNSでは、一人一人に力やフォロワーはなくとも、政治家や著名なインフルエンサーに直接問いかけたり、意見を述べることもできます。受けた側もクソリプのようなつまらない意見ではなく、しっかりしたまっとうなものなら参考にしています。タイムリーにそれをやり取りするののは、昔の目安箱とか、要望書や公聴会などよりもはるかに早く、手続きが煩雑ではなく揉み消しにくいものです。
役所だとか学会、経済の分析、法律の改正などで、一般の方が読むのがとても難しいA4横で10ポぐらいのフォントの大きさでぎっしりと60ページとか80ページとかの文章やデータが必要になっているようです。しかし一般にすぐ書けて、推敲や校正をして、読み手に理解してもらうのにいったいどれだけの労苦がいるでしょうか。20ポぐらいのA4横3~4ページが先端企業の意思決定のプレゼンでは主流です。そこに要旨、課題や改正点が詰まって入ればいいのです。長大な資料や冗舌でペダンチックな蛇足で、必要な方がチエックすればよいでしょう。
それだと、ミスや不正が見抜けないかと訝しがる方がいますが、逆です。大臣など素人に不正や恣意的なものを悟られないため、専門家や官僚は長ったらしい自分のテリトリでの長大な資料、書式を用意するのです。最低限の勉強、知識や理解力は必要ですが、A4横3~4枚1000字以内くらいで、たいていの説明はできます。
それ以上時間をかけず、書式も、制度もどんどんシンプルにして、人を救うことを早くするのです。