1976年7月 Gメン75沖縄3部作レビュー

 先日Gメン75の話を書きました、その中で沖縄3部作について詳細をレビューをそのうちと書いておりまして、ようやくDVDをじっくり見ました。

  第59話「東京ー沖縄 縦断捜査網」
  第60話「暑い南野島 沖縄の幽霊」
  第61話「沖縄に響く 痛恨の縦断」
 以下ネタバレです。
 昭和51年(1976)年7月3日から.3週続けてという、2時間半以上にわたる、オール沖縄ロケという今では考えられない映画並みのスケールであり、異色中の異色ともいえるギャンブル的な試みの力作です。タイトルだけでは60話はホラーみたいですが、完全な連続ストーリーになっています。しかも見ているものは前編とも後編とも謳っていないのでいつ終わるのかもわからないで見せられていました。
 当時の刑事ドラマ、アクションドラマは多くのレギュラーがいるものの全員が総花的に出るのではなく、それぞれ一人のレギュラーが主役になってゲストと対峙し厖大なセリフをこなすパターンが多かったのです。この3部作でいうと、シリーズ前半紅一点の響圭子刑事を演じた藤田美保子さんです。朝ドラ「鳩子の海」でデビューした背の高い女優さんですが、朝ドラ時代も子役が好評の後、当時としては大女の藤田さんは不評で、その後も今の朝ドラ女優ほどドラマ、CMには出ておられません。しかし、Gメンの女刑事はハマリ役でとくにこの沖縄三部作で、沖縄問題の奥深さを知り苦悩する役をよくこなしています。沖縄人から罵倒され、地元刑事に逮捕拘留されるわ、罠にはまり米兵に暴行寸前、犯人を逮捕するもハブに咬まれ瀕死の目、最後は逃げる米兵と銃撃線で腕を負傷しながら発砲と自ら体当たりの演技で、沖縄の悲劇を日本人の目で体現していきます。

 戦時中からの本土の日本人への恨み、異民族に支配され続けた28年の沖縄人の葛藤がいろんな場面で表れ、なかなか今の時代のドラマでは難しい表現も多くでます。
 普天間基地の周辺を舞台に、米兵に性的暴行を受けて、まともな裁判すらなく泣き寝入りとなった二人の女子高校生の家族が刑事となり、米兵に復讐を企図するところが事件のきっかけです。東京と沖縄で刑事になっている二人とその妹も含め、全員が最後には非業の運命に向かいます。Gメンたちにも沖縄の壁と、米軍の壁が立ちはだかります。

 「サインはV」で白血病のバレー少女を演じた台湾出身の范文雀さんが、自死した妹の姉役で記憶を失いながら切ない恨みの唄を披露します。
 のちに刑事役でシリーズレギュラーを果たす范文雀さんこの頃は透明で無垢な印象の美人です。
 家族の復讐を誓う刑事に、川地民夫、織田あきらさんが熱演。そして仮面ライダー初期で緑川ルリ子を演じた森川千恵子さんが暴行された後、ホステスとなる悲しい運命の女性を演じています。前半は女子高生役、後半はアバズレたホステス、そして最後はほぼすっぴんのような笑顔のない難しい役どころを見事に演じています。長い髪のキレイな美人女優さんでした。
 昭和特撮ファンは米兵とつるむずるい悪役で「キャプテンウルトラ」の中田博久が、同番組でキケロのジョーを演じた小林稔侍が刑事役で出演し、同時にテロップで出るのもニヤリとさせられます。
 
 本土復帰後も米軍の不平等な裁判、犯罪者も逃げ込む米軍基地、そして本土人を信じないで、経済は基地に依存する沖縄人の悩みと、この時点で多くの沖縄の苦しむがハードに描かれます。少しスカッとするのは、やはり丹波哲郎演じる黒木警視の米司令官への英語でのまくしたてだけです。ほとんどの関わった沖縄人を救えず、最後も苦しみぬいた響刑事の怒りの発砲は命中したのか、わからないままでエンディングです。
 

1976年高校生を熱くさせたハードボイルド

真木千恵子と織田あきら

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