空に一番近い恋人の聖地 天使が舞い降りる4 #コイバナ #人生応援

 天使が舞い降りる、人生応援のポジティブなブログの原点ともなった体験話。ついに完結編です。
【前回までのお話】化粧品メーカーに勤めていた私の50代半ば頃、任された現場イベントで、女子高校生と見まがうような幼い素顔ながら、メイクアップするとアイドル級のメイクアップアーティスト水島香菜と出会いました。2日間にわたるメイクイベントの初日は、さまざまなトラブルもありながら、彼女の元気で明るい笑顔と、的確な動き、高度なテクニックを披露して、スタッや私のサポートもあって乗り切りました。その後の食事、カラオケで楽しんだ後、恋人の聖地お初天神で、年齢の離れた彼女から思わぬ告白を受けます。そんな二人を良からぬ輩が取り囲みました。↓というのが前回まで 詳しくはこちらを

梅田の奇跡 天使が舞い降りる1 #コイバナ #ラノベ #人生応援 #ハロウイン – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

梅田の聖地でピンチに 天使が舞い降りる2  #コイバナ #ラノベ #人生応援 #ハロウイン – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

【死にたい少女との再会】
「エエ年して、可愛い子をたぶらかしてんな。こっちに回せやおっさん!」
 クレーム対応でやくざ者の相手もしてきたので私は相手の力量は読めます。正面から啖呵をきって戦う手もありますが、香菜さんを上手く傷つけず守ることが肝要だと思いました。
 胸倉をつかんでくる、リーダー格の手を、横に動いてかわします。
 その腕にゴツンと石のようなものが当たり、男がひるみます。
 香菜さんが石のような何かを掴んで投げたのです。
「その人は、私の大事な人や、手出すな、許さへんで!」
 どっちが、助けてもらうのか分からないですが、こちらもカバンの中から店頭作業と護身用も兼ねて持っているカッターナイフと大型のステプラーを持ちました。ポスターを壁や天井に打ち付けるホチキスのデカイやつですが、ガン型でスタンガンのような威圧感で抑止効果があり、実際に接近戦で相手の腕などに打ち込めば、威力があります。
 そんな武器を使うまでもなく、香菜さんは礫を別の方向に投げ、敵の黒幕を悟っていたようです。礫はガラスのように光るビー玉、それでも樹皮を切り裂く威力。護身術?印地と言われる古武道投擲術のようです。かつて、それを特にしたスケバンのヒロインがいましたが、現実に見るのは初めてです。
 木の影から現れたのは彼女の事務所の細身でイケメンのマネージャーでした。
「香菜、おじさん好きは分かるが、あんまり、のめりこむな。それに危険なビー玉のおもちゃは仕舞え」
「どういうつもりやの、この人には絶対手は出さんといて、私の命の恩人、私たちに大事な2日間やの」
(そうか、徳島出身と言っていた、この子はあの時の中学生か。確かに死にたいと言っていた女の子を助けた。まさか、こんなにキレイに成長してアーティストになっていいたなんて)

四国で出会った死にたい少女の事 天使が舞い降りる3 #人生応援 #コイバナ #大歩危  – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

「何をしようと、その後のウチのビジネスに影響するようなことにはするな。ただでさえ、休みの日に勝手に他所の仕事をしてるやろ。今度遅刻でもしたら許さへんからな」
「わかってるわ、子供やないんやから。とっとと帰れ」このマネージャーも、素人ではなく、優男ながら喧嘩になれば他の雑魚よりも強そうな雰囲気を持っていました。
「〇〇化粧品の井上さんやったかな。この女はハンパやないからな、せいぜい気をつけな」
 マネージャーが去ると、気が張っていたのが力が抜けて、香菜さんは膝まづいた。
「ごめんなさい。お目汚し、はしたない、お見苦しいところをお見せしました。お上品な女やないですから、ナマの私こんなもんや。でも井上さんに迷惑かけたなかった、もといマーベラスを絶対に誰にも傷つけて欲しくなかったんや、これは本当の気持ち、あなたは私の王子様、天使だから」
「僕こそ、あなたにそこまで買いかぶられる存在ではないけど。あんな連中に手を出されたくなかった。素晴らしい技術を持ったアーティストであり、傷つけることはさせないと思った」「それは仕事で大事だから?」
「いいえ、僕個人としての大事な人だから」
「ありがとう。マーベラスが思い出してくれたの分かった。気持ちは読めていた。でも言葉にして確かめられて嬉しい。ますます好きになってしまった」
 決して媚ているわけでもなく、あざとさもないその顔は、神が作った最も美しい造形物に思えた。彼女こそ天使ではないのか、そんな女性に天使と呼ばれたことが意味不明で気恥ずかしくてならなかった。
「私たち、あと1日、思いっきり仕事頑張って、思いっきり楽しい時間にしたい。明日は、あそこの看板に書いてあったもう一つの『恋人の聖地』に行きたい!」
 猫がじゃれつくように水島香苗は抱きついて離さなかった。
そして、そんな状況なので、彼女のマンションまで送っていくと、まだ飲み直すという誘いを断り切れないで、すでに日付が変わりそうになる。ビジネスホテルが無駄になりそうなことは後悔でした。

 【思い出した過去
 香菜さんは、翌日から東京でブライダルメイクの仕事が入り、その翌週以後イタリアに勉強に行くので、当分日本には戻らないという。その前まで2か月近くオフがないという。かの事務所の契約の仕事とは別に、フリー契約での仕事やレッスンを入れるため、休みを取らないため、掃除洗濯まで大変だという。
「誰かを幸せにする仕事って面白いし、私休み取ってるより、仕事してる方が楽しいんや。だ子供の頃から、けっこうヤバイ運命で、暗い重い女の子やったん、死にたいとばかり思っている子やった。」
 冗舌な香菜さんのいろんな前向きになれた話を聞けた。
「あの時、父親にもDVを受け、学校でもいじめられていた。そう、助けてもらった。だからマーベラスは私の天使」
そう、やっと完全の香菜のことを思い出した。
 そしてそれは私も自分が生きてきた意味、生かされた価値が分かったのです。
 電車に飛びこんで死のうとしている中学生の女の子を助けた、その少女とこんな形で劇的に再会するとは。
 「人間生きていればきっといいことがあるから、それまでがむしゃらに頑張って生きろ」と他人を励ますとともに自分に言い聞かせたのでした。
 私自身、仕事で取引先がらみの借金を背負い一時辞表を書こうとか、死のうかとも思ったことがありました。粉飾続きのブラック企業に落ち込み、何もかも忘れて、ふらりと電車に乗り四国の景勝地まで行ったこともありました。その時、ふらふらと渓谷に飛び込もうとしていた中学生を止めた。
 それが、今の水島香菜なのでしょう。私たちは、お互いにとって天使であり、それでも平凡な日々を生きる平凡な人間なのでした。
 さんざん呑んで、おしゃべりをして、なんやかんやで、気がつけば寝入っていて、窓の外は明るくなりかけていた。私の横にタヌキ顔の可愛い天使が寝息を立てていた。
 翌日、さらに元気に明るく派手にイベントは盛り上がった
 集客に苦しむ時間もあったし、スタッフは土曜で妻子持ちのベテランが集まらず苦戦したが、香菜の動きはさらに冴えた。クレーマーもストーカーも来るが圧倒する勢いだった。
 少しの間に、自らハロウインメイクを施し、ホラーっぽい梅田の都市伝説の「赤いワンピースの女」で露出の高い肢体まで見せて、周りの度肝を抜きました。
 かと思うと、子供向きに戦隊ヒーローっぽい、衣装でホンファと二3人で特撮ヒーローショーアクションまで演じて子供連れを集めました。ちなみに「謎」だった、マーベラスとルカのニックネームはある戦隊ヒーローからとっていたのでした。苦労と言うよりは、やりたい放題に楽しんでいました。 
 何人か本社幹部やも来訪し、圧倒的な活気に驚いていた。グループ全社ナンバー2の販社社長や媚びるあざとさで化粧品会社のトップに上り詰めた里崎まで来ました。
 かつて、私と張り合い私の後見だった星井さんが亡くなったため地位を横取りして成り上がった女です。厚い化粧と面の皮の女で、私の様子見に来たのでしょうが、イベントの盛況ぶりと、若いアーティストの魅力的な動きに、また羨望のような妬みの目で私を見ていました。

水楼閣の思い出 京都の中心で哀愁を叫ぶ #カネボウ♯自伝小説#コイバナ#ラノベ#京都観光 – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

 とんでもないヒーロー衣装で経営幹部にアテントして談笑し、記念撮影をした。
 本社取材で後に社内報にも載り、優良従業員賞まで貰うことにつながりました。
 記録的な動員と売上と、インパクトの注目度で、他のライバル流通を圧倒したという自負はありました。そして、何よりも生涯でも最も楽しく、熱く面白く仕事をした体験でした。

【空中庭園へ】
 50代の身体でもアドレナリンが満ち続け、疲れ知らずで、打ち上げを行い、その後は約束通り二人で、梅田の北側の高いビルに向かいました。35階から空中庭園への架け橋、シースルーエスカレーター「ハブーブエスカレーター」に乗り継いで39階の「空中庭園」へ向かいます。
 実はなかなか行く機会はないものです。もう出来て長く経つのですが、色あせることのない梅田のスカイビルの空中庭園です。香菜さんは、年の差の自分たち二人を棚に上げ、他のカップルのメイクやファッションから、どんな経緯の交際だろうとかを想像で茶化します。大阪湾が遠くまで広がり、視界の良い日には神戸の先に淡路島や明石海峡大橋も微かに見え京セラドーム、大阪府庁咲洲庁舎や天保山大観覧車、ユニバーサルスタジオジャパン、そして大阪城、通天閣まで360度見通す散歩道「ルミウォーク」を仲良く手をつないで歩きます。
 それでも、自分たちがふたりだけの特等席「エスカルゴキャビン」のシートに収まると、清楚な感じで空と星と夜景に感動していました。
「いいですね、夜景」
「本当に、僕みたいなおじさんが相手で申し訳ないけどね」
「マーベラスはおじさんじゃない。落ち着いているし、包容力がある。私は若い独身のイケメンではダメなの。私ね、言ったでしょう。ほとんど顔を見れば考えることが分かる。私もマーベラスが好きだし、同じぐらい、マーベラスも私のことが好きなの。いろんなことで言えないこともあるでしょうが、いいの、もう言葉はいらないから」
 空と海が、遠くで交わる。数えれない星と街の明かりに照らされて見るものを羨み照らすように思える。
「ルミ・デッキ」という最も聖なる場所、ベンチに二人は座れた。高さ173mの梅田スカイビルに誕生した恋人たちにとっておきの場所。中央のベンチに腰掛けたりすることにより、床の光が様々に変化すると言われます。ベンチに座ってしっかり手をつなぎ左右のドームにふれると愛し合うふたりの心が映し出される。ウエディングベルが鳴り響きます。
 もはや、時間も空間も、日常から離れている。二人のエネルギーが霊的な空間になっている。
 走馬灯のように、二人は自分の生まれてきた時間から今までの思い出を共有していました。それを奇妙とか霊的とも思えないのです。
 世俗とか、常識を超えていました。自分にとってのお互いは、現世を超えたパートナーなのか、初恋の人や、親友や配偶者でもあるのだと感じました。
 そして、二人の辛かった思い出もまるで再び体験しているように、脳裏をよぎります。
 都会の仕事に疲れ、電車でふらりと旅に出て、田舎でたくましく生きる農夫や漁師の姿に励まされた時、そこで出会ったのが香菜です。
 香菜もまた閉塞した田舎で、父親と反りが合わず、学校でもいじめにあい現実から逃げようとしていました。
 そこで二人は出会い、また奇跡的に大阪で再開しました。香菜の自殺を止めているあいだに、自分もポジティブになれたのです。私が星井さんの下で本社幹部にでもなっていれば、このような現場で彼女にまた会えることもなかったかもしれません。
 逆に私たちが再開するために、他の運命がアジャストされてきたようにさえ思えます、
 香菜さんの目も私の目も、大粒の涙にあふれています。
「こんなことって」
 香菜は私を企図して探してのものではない。あくまで、この出会いは偶然の双方の組織のビジネスシフトが巡り合わせた偶然のはずです。
「このままでは、こんな偶然誰も信じないでしょうしね。でもこれから、生きていたら、こんなにいいことがあると、どこかで、若い人にも年配の人にも、いろんな人に。できるだけたくさんの人に教えてあげて欲しい。生きてれいればきっとこんな出会いや奇跡的な再会、美しい光景が見られることを」
「香菜っー!」 
「ここまで、ポジティブになれても、それでもあたし明日の朝少し怖い。朝ごはん食べて別れたら、引きずらないかなと、でも前向いていく、たぶん振り返らない」
 展望台の営業は10:30まででした。
 二人は朝まで過ごしてました。
 約束通りホテルの朝食バイキングを食べ終わると、日曜の遅い朝に二人はあっさりと別れました。アドレスも聞かず、もう会うこともないでしょう。丸2日、48時間をすぎて、愛称で呼び合うこともありません。
「水島先生、さようなら、お気をつけて」
「井上さん、いろいろありがとう。ムスメさんが結婚されるときは、弊社の事務所のブライダルメイクを頼んでくださいね」
「ギャラが高そうだから、検討しとくよ。でもキミは海外に行ってるかもだろ」
「その時は、無理しても帰国するわ」
 彼女は飛び切りの笑顔で手を振っていました。終わりに近づく平成の時代で、それが水島香菜を見た最後です。
 その後も私は聖人君子や天使になったわけでもありませんが、どこかに彼女のひた向きな仕事ぶり、前向きなスタンスを自分の中にも取り入れて働きました。頑張っていれば、何かいいことがあるから、愚痴らず前を向いて働くことを伝える役割を果たしました。


 【エピローグ
 私はそのイベントの実績は評価され、社内報にも掲載され全社に伝播しましたが、あくまでも現場での仕事であり、役職定年を過ぎた55歳以降での偉業であり、経営幹部に呼ばれることもなく、最後まで現場に近いポジションで吸収合併された会社組織の後始末に追われました。里崎はイベントの功労者の私を相談役にして、香菜を専属にアーテイストにしないかと画策しましたが、海外で学ぶことも多い彼女が受けるオファーではありません。
 その後、3年ほどで私は定年退職しました。退職時から、かねて考えていた」人生応援の前向きなメッセージの発信に努めました。在職中に関わったほぼすべての人に、離職の最終日に送ったメールの題目が『天使が舞い降りる25の条件』でした。そのリプライはサーバーがパンクするほどの反響でした。未だに化粧品売り場の、もう顔も覚えていない相手から、『いつも励まされています』と声をかけられます。
 少しでも、前向きの楽しく仕事をしてくれる後輩社員が増えることで、世の中は明るくなるはずです。

 3年後、娘の結婚式が決まった時、メイクとヘアの依頼で私は神戸の事務所に電話をしました。ついこないだ式は終わりました。この時もまた、信じられないことが起こるのですが、それはまた別の機会に。
 
                             完

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