書評:森博嗣「銀河不動産の超越」

 かつて「すべてがFになる」犀川シリーズなどのミステリで一世風靡し、セミリタイアされている森博嗣の2008年のノンシリーズの1冊。何の書評なども読まずに連作短編かなと目次を見て読み始める。

 ネタバレ注意
 最初は無気力な主人公の若者が、大学を卒業してまともな就職ができず怪しげで奇妙な不動産屋に就職し、不思議に大きな建物に住まう奇縁で、その後は事件に会うのかと思いきや。
 どちらかというと清涼剤なのか、ほのぼのサクセスストーリーなのか、好転していく運命のわらしべ長者のようなお話になります。
 
 ミステリ的に疑いを持って読んでいると、大家さんにしろ、押しかけて結婚を迫る取引相手の娘にしても、裏があるのかと思っていても何もなく、そんな上手い話あるのかよと思ってしまいます。
 しかし、日本古来の許嫁やお見合い、現代のマッチングアプリなどは、書き方を変えればこういうものなのかもしれません。
 主人公は、ある意味、あれよあれとベストセラー作家になった筆者自身の投影なのかもしれません。

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