還暦から手習い、雑巾がけもまた良い

 10月から、また全く新しい職場で新しい仕事を始めていて、慣れないことばかりで緊張も戸惑いもありつつ新鮮な清々しさも味わっています。
 大学を卒業し、カネボウという大きな会社に就職が決まった時、友人に「一生、カネボウの人生でええんか」と揶揄されたのを覚えています。その友人は、自分で事業を起こして独立した人物ではあります。また同じようにカネボウの面接を受け、内定を決めながら公務員になった者もいました。また、すぐに親の家業を継いでいった友、医者や、学者、教師を目指した同窓もおり、同じ学び舎からでも千差万別な人生です。
 もちろん、途中から道を変えることもできますが、サラリーマンはそう簡単にはいいところに再就職できませんし、新しい会社はよほどヘッドハンティングでの条件付きでも、最初は一から学ぶ仕事であり、雑巾がけの新入社員から始まる場合がほとんどです。
 60歳を過ぎ、再雇用制度を選ばずに、就職を探した4年前もそう簡単には仕事は決まらずでした。何の縁か公務系の社会保険の仕事につきました。そこで覚えたことも一企業では味わえないものでした。
 今回は社会保険、厚生労働からも離れます。公務とは言え、全然かけ離れた、裁判所の事務です。
 内容に関しては追い追い守秘義務以外の範囲で語ります。
 仕事へのチャレンジという面では、輪廻転生できても記憶はリセットされそうですから、大学卒業時に選ばなかった道を通ってみるももいいかなという気持ちです。
 一度きりの人生かもしれませんから、新人に戻るのを恐れることなく、楽しむように感じていきたいと思います。
 60でリタイヤして遊ぶのも選択で、若い時に苦労されて貯めたお金で楽をするのも間違いではないでしょうが、もう一度若い頃に戻って雑巾がけというのもいいのではないでしょうか。
「一生、カネボウの人生でええんか」同じ企業に縛られる人生かと揶揄した友人に対しての、ささやかに意地で反抗するような選択です。
 慣れない上で、間違いの許されない激務ではありますが、テレビや映画で見るような裁判所の中は、新鮮です。また、何気に毎日新聞やテレビで報道される事件、訴訟はすべてどこかの裁判所に絡んでくることは世界の見え方が少し変わります。

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