書評:島田荘司『ローズマリーのあまき香り』

 amazonの紹介文から 
【世界中で人気を博す、生きる伝説のバレリーナ・クレスパンが密室で殺された。
1977年10月、ニューヨークのバレエシアターで上演された「スカボロゥの祭り」で主役を務めたクレスパン。
警察の調べによると、彼女は2幕と3幕の間の休憩時間の最中に、専用の控室で撲殺されたという。
しかし3幕以降も舞台は続行された。
さらに観客たちは、最後までクレスパンの踊りを見ていた】

  いわゆる絶対的な密室の不可能で不可思議な事件。御手洗シリーズノ久々の長編になるようです。毎年のようにこのミスの直前ぐらいに選考を拒むような長編を上梓していましたが、これは5月ぐらいの出版でした。それにしても分厚い長い一冊。何人かの書評にもありましたが、御手洗が登場するまでの前半、バレリーナの物語が延々と続くのはいつものパターンとは言えやや退屈でそれほど引き込まれない感じがしました。壮大な現代世界の歴史であり政治色もありで、衒学趣味満タンこです。冷戦からウクライナやコロナも暗示して、結末やTRICKは何となく読めてアンフェア感もありです。新本格の胎動以来、後続の作家が続々すでに大家となり、長老もいよいよ老いられたかな思います。
 ミステリというよりは、政治と近代史のドラマかと思います。横溝がいて、清張がいて、その後も時代を闊歩した島田作の探偵も平成の中頃で時間を止めてとどまって、あとどのくらいの事件が世に出るのでしょうか。

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