鉄道のインシデント

 少し意味合いは違うのですが、鉄道関連で死傷者の出る事故と事件がありました。
 どちらかと言えばローカル鉄道と廃線跡散策の鉄道好きですが、イヤなニュースです。
 ひとつは岐阜県リニア中央新幹線のトンネル工事での、肌落ち、崩落事故で1人死亡1人けがでした。もうひとつは東京都調布京王線での殺傷と放火、凶悪で身勝手な事件です。
 トンネル事故は、いまだにダイナマイトで岩を爆破して進む工法が、ひとつの不注意で命を落とすということをあらためて知らされました。
 鉄道の歴史を知ればトンネルがとくに命がけで多くの犠牲の下に作られました。明治から戦後の高度成長期まで、政府や国鉄は犠牲を厭わずに国土軸強化の国家プロジェクトとしてのレールを引き続けました。
 丹那トンネル67人、清水トンネル46人、東海道新幹線で計211人、山陽新幹線で159人、青函トンネルで34人。鉄道ではないですが黒部第4ダムで171人の殉職者を出しています。
 いつの時代にもと尊い犠牲者には哀悼の意を表します。犠牲者工事者の命を奪い、住み慣れた家や町を立ち退かせて、水利や環境を破壊して、日本の発展、高度経済成長も所得倍増、GDP世界2位へとつながりました、

 今のリニアは、国策とはいえ民間のJR東海が表に出て、静岡県の反対も受け延期になっているところもあります。明治や戦後すぐに比べ、国の権力も弱まり、補償や人権に配慮することも増えたのもあります。もちろん是非はあるでしょう。
 日本の未来をどう描いて国土軸を作るか、具体的な絵図を共有せずにプロジェクトが進行することに問題があるのです。
 東京と名古屋が30分、大阪が55分で結ばれることから、3つの都市圏が融合することで何ができるか、その共有が国民にも世界にも足りないのです。もちろんこれにも是非はあるでしょう。しかし反対や不安のあるかたに説明が足りないことや情報が不足している場合からの者も多いです。
 たとえば地震が起こったら怖いとか、アルプスの火山帯を貫くトンネル工事は危険との意見もあります。トンネルそのものは地震に対しては屈強です。地上の鉄道に乗っているとか歩いているときの方がはるかに危険なのは少し考えるとわかります。出入口の崩落や、停電での停止で閉じ込められるという閉所恐怖はあるでしょう。これも電源のバックアップはありますし、避難用トンネルも随所(今回も避難用トンネルの工事)に設けられます。
 造山帯や活断層等を言い出すともう日本中のトンネルや建造物が心配で、乗り物等乗れなくなります。単純に考えて高架の橋のほうが、突風や横揺れ含め危険です。その分耐震強度は十分計算され造られています。
 リニアでせいぜい250人で、トンネルの中で閉じ込められる確率よりは、街中で地震や交通事故、事件に会うことの方が高く怖いです。
 とくに東京、首都圏の集中度と人口の多さは危険です。先日の地震でも休日の深夜で救われた部分があり、平日の活動時間や通勤時間だと、停止したエレベーターや電車に閉じ込められた人だけでも物凄い数になり、死傷者も多くでてしまい、帰宅困難者でパニックになったでしょう。
 京王線の事件はそんな人の集まるハロウインの東京を狙った事件です。
 仕事や人間関係がうまくいかず人を殺すために上京してきたようです。停車駅間の長い特急を利用した、このような悪質で残忍な犯行は許せません。転落防止のホームドアが開かないで脱出が困難になるという、いまどきらしいトラブルも重なりました。
 こんな一人の犯罪者に対し防ぎきるのは難しいでしょうが、首都圏都市の一極過剰集中を何とか避けるのはリスク回避として必要です。
 のどかなローカル線を維持するにも、まずは日本が首都圏、中京圏、関西圏を抜本的集約、再編、再構築して、メガ都市圏を作りだしていくことが一つのリニアの可能性だと思います。

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