書評:『生涯弁護人』事件ファイル1.2 弘中惇一郎 やはり後味の悪い検察の横暴

 正直なところ読後感は爽やかなものはない。検察や警察が頼りになる正義であるという思いが幻想だと思い知らされる。今もコロナやウクライナの情勢で結構SNSであるレベルに達すると言論統制が敷かれている国家の横暴はそら恐ろしいものを感じざるをえない。

 私は一人の著者の思いを読んでそれが100%正しいとは信じないので、もちろんこの本も周りの事実関係に関して調べ疑いを持ちながら読んでいます。しかしながら、村木さんの事件の内容は、概要は正しいため、やはり彼自身が一方的に金で無罪だけを勝ち取る悪徳弁護人ということではないと結論づけられます。当然、弁護士も職業であり、報酬はそれなりに貰うわけで、その観点から書けば彼を薄汚い印象に描くことは可能でしょう。
 しかし、世の中にカネのためだけの悪の弁護士というのは存在しえないことが、彼の事実の調べ方、依頼者との会話などの著述を紐解くと良くわかります。
 弁護士は法の下に証拠や証言を集め、検察と戦うわけです。

 これはある意味、スポーツやゲームのようなロジックや体力も含めたどちらが正しい悪いではない、『戦い』ととるのが近いかもしれません。

 それにしても恐ろしいのは、検察がストーリーを作って狙った獲物を有罪にしようと、人権を無視したような手段に出るという事実です。
 個々のケースの詳細は書くと厖大になりますが、政治家であれ官僚や有名人であれ、特捜部が狙うのがなぜその特定の人なのかが怖いのと不公平、不公正、理不尽を感じます。

 一部の政治家に問題があると思惑があっても、その他の全ての政治家がシロなのかというと、もっと黒い政治家がいるのにその時特捜が追ったものだけが貶められるという事象はやはり民主的な国家としてはあってはならないと感じます。 

 有罪にするため他の証言者を無罪にする司法取引なども含めて、普通の市民感覚ではおかしいと思うことがどんどんでっち上げられる。これも怖いというより、不公平であり貶められるものには理不尽なものとしか思えません。

 正直、読後、こういう思いが分かると、現在も五輪関連の疑惑で特捜部が動いているなどと聞いても、どっちが正義か悪かなどとは思いません。

 それでも、オリンピックや、コロナ関連でも多くの政治家や省庁官僚、医師会など、御用企業に不正な金が動いている話はよく聞かれ、地検特捜部には不正を正し巨悪を暴いて欲しいという気持ちは残ります。

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