追悼:森村誠一さん

 昭和の推理作家森村誠一が90歳で亡くなられました。
 映画化され一躍時代の寵児となった「人間の証明」が1975年の作品ということで50年ぐらい前になります。
 私が高校生くらいの時ですね、角川が映画に進出して、小説と映画を本格的に平行して売り出したのでした。「人間の証明」は映画化を前提に、角川春樹が依頼したとされています。最近の映画化、ドラマ化ありきのキャラミスなどの手法の先駆ですね。
 中学ぐらいから、SFとともにミステリを読み出したので、当時の主流の松本清張、高木彬光あたりに続いて「新幹線殺人事件」などカッパノベルズで、長編や短編も読んでいました。カドカワに移り、世界観の広がったスケールの大きい作品が増えましたが、元々ホテルマンでの苦労からの、社会への不審や鬱憤が根底にある感じです。
 12歳での空襲体験と、「鉄筋の畜舎」「自分の個性を徹底的に消す」としたホテルでの仕事、職場環境が作品に大きな影響を与えていました。
 商業ベースに乗った作家の典型のようで、その後の西村京太郎、今の、東野圭吾さん以上の存在感でした。やがて戦中の731部隊を取り上げた「悪魔の飽食」シリーズを赤旗に連載するなど、そっちの方向にも祭り上げられました。
 角川やその他多くの作家との親交などを見ていると、戦争に対するポジションは特に左寄りではなく、戦中派の作家らしいポジションと言う程度でしょう。
 角川映画の大キャンペーンでしたが、横溝ブームはあくまで、古い本格の発掘、復古でした。高木彬光もピークは過ぎ、現役バリバリは森村誠一で、その後内田康夫を担ぎ出しましたが、イマイチでした。
 新本格と呼ばれる世代が台頭するだいぶ前の時代に、社会派と本格をつなぎ、ミステリの面白さ、エンターティメント性を世に広めた功績は大きいです。

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