年金の男女差2 遺族厚生年金 労災遺族補償年金

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 老齢年金の受給開始時期に男女差があるという話を前回↓書きましたが、もう1点,年金制度で残る大きな男女差が遺族厚生年金です。
 自営の方などの国民年金の場合、遺族基礎年金は子供が18になるまでの養育の意味合いで男女差はありません。逆に子供がいない場合は一切年金遺族基礎年金はありません。子供がいない場合でもサラリーマンや公務員の働き手が亡くなった場合貰えるのが遺族厚生年金です。
 ところがその支給条件に男女により差があるのです。
 遺族厚生年金の受給額に夫婦間で差があることを知っているかとの問いに65%の方は知らないと回答されていました。
 遺族厚生年金の受給要件には男女差があります。男性は妻の死亡時に55歳以上でなければ受け取れず、支給は原則60歳からとなります。女性は夫の死亡時に30歳以上であれば、子どもの有無にかかわらず受給できます。
 妻は30歳未満でも、遺族基礎年金の受給対象となる子どもがいれば、同様に生涯受け取れます。子どもがいなくても5年間の有期給付があります。
 厚労省の21年度の調査によると、遺族厚生年金の受給者は女性が94.5%を占めています。
 なぜこのような男女差があるかというと、1970年代はまだ、男性は働き女性は家庭にいるというのが当たり前の時代に制度ができました。女性が取り残され否応なしに働くというのは酷な時代でした。現在は、女性の社会進出が一定程度進んだとして改正の動きはあります。しかし、未だに労働人口割合の差、賃金格差や雇用形態の違いという日本の現状があるため、この制度で違憲というまでにはならないようです。キャリアウーマンでダメ亭主を養っている場合に奥さんが無くなると、夫君は心を入れ替え働かないと悲惨なわけです。夫の死後の厚生年金は妻が65歳以上の場合は①夫の老齢厚生年金の4分の3②夫と妻の老齢厚生年金の半分ずつ③妻の老齢厚生年金――のうち最大額が自動的に選ばれます。
 夫の方は会社員だった妻が亡くなれば、子供がいた場合だけ18歳までは遺族基礎年金が夫に出ます。そしてこの期間だけ、遺族厚生年金が子に支給される。でも子供が18歳を過ぎたら両方ともゼロになります。大学の費用などは一人で賄うしかないのです。そして老後も自分の分だけなので、夫婦で働いてダブルインカムでの基盤が当たり前である程度妻の割合も高めだった場合、けっこう苦しいかもしれません。
 確かにこれでは、籍は入れていたがしっかり働ける女性にとってもこの制度は違和感があります。2025年あたりには改正がありそうですが、完全に男女平等とするのでしょうか。
 女性の働く機会が増えた現在、十分な移行期間を設けた上で、現在の「無期給付」ではなく、自ら働いて稼げる現役期に遺族になった場合、男女ともに期間を限定した「有期給付」にそろえるやり方が考えられます。遺族の生活立て直しを図る一時的支援の役割を重視した有期給付とした上で男女差も併せて解消するなどのやり方が検討されると思われます。現在の給付は男性が厚生年金を納めた分が反映する割に、女性の働いた分は評価されない点もあり、男女の満足や機会均等を考えても進めることはできると思います。
 勤務中や通勤での労働災害の場合の遺族補償年金の条件も、基本同じ男女差です。
 
 あと、一般の保険なども、これだけ夫が亡くなった時の公的保障が多い割に、昭和のイメージで稼ぎ頭の夫だけに保険を厚くしておこうと、やや無駄な支出をしていないかも点検しないといけない部分です。
 FPで家計の診断、見直しでよくあるのが生命保険、医療保険の公的支給を理解してのリストラです。
 公的な保障、年金を補完するのが民間の保険なので、障害年金の支給条件をよく知っておかないと損をします。
 年金の問題は、煩雑ですが、財政をしっかりさせるのと、保障すべき人に公平的確に給付するように時代に合わせ法改正が必要であり、啓蒙も必要です。また一般の方もリスクや将来の生活設計にどういう給付があるかをよく知っていただくべきこところです。

年金の男女差1 早くもらえる女性 #年金の話 – 天使の星座 (seizafpkotodama.com)

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