大物芸人の退場で思い出す 菊池寛「形」 

 松本人志退場で、収録分が無くなり、彼なしでも番組は回っているようで、ふとこの話を思い出しました。
 『形』は中学校3年の教科書にも収録されている菊池寛の話で、何となく覚えている人も多いのではと思います。
 いつの時代のどこでの話かも私でさえ忘れていましたが、比喩的教訓的という感じでした。
 三省堂以外の教科書を使っていた学校の人は知らないでしょうし、半ば忘れてる人も多いでしょうから、古典の名作ということでネタバレ関係なしに中身を以下で復習します。
 

【戦国時代、摂津半国の侍大将であった中村新兵衛は、五畿内、中国に聞こえた槍遣いの名手であり、「槍中村」の異名をもっていました。三間柄の大身の槍をあやつり、先駆けしんがりの功名を重ねる新兵衛は、自他共に認める実力者でした。さらに、彼のシンボルとも言える「猩々緋の羽織」と「唐冠纓金のかぶと」は、敵味方にとって脅威や信頼の象徴として定着していました。その恰好を見るだけで敵は恐れ震えあがり、「猩々緋、唐冠よ」と逃げ回ったのでした。
 そんな中、新兵衛が守役として慈しみ育ててきた「若い侍」に請われ、その「猩々緋の羽織」と「唐冠纓金のかぶと」を快く貸してしまいます。そして、明くる日の戦いの場で、若い侍はその恰好で敵をなぎ倒します。蹴散らされた敵は、次に現れたいつもとは違うかぶとを身につけた新兵衛に対して一矢報いようと襲い掛かり、不覚にも新兵衛は命を落としてしまうのでした。
 「形」が時として独自のはたらきを、それも実力以上のはたらきをすることや、「内実」ではない「形」に惑わされることは、私たちの日常生活でも経験することだと示されているようです。新兵衛がそのことに初めて思い当たったその瞬間に、彼の最も得意とする槍によって命を奪われるという皮肉な結末です】

 ダウンタウンの松本人志が例の性加害疑惑の裁判沙汰のため休養となり、テレビからいなくなりまして、急遽代役を立てて収録されたものが始まりました 
 まだ、何回もないのですが、先日見たものは代役を別の芸人がこなし、内容は変わらず面白かったです。普段からじっくり見ていないですが、松本さんは企画や制作に絡みフレームを作って、自分はとぼけたコメントをし、評価を下す程度なので、一からを代役がやったわけではないです。それでもそれを差し引いても十分やって行けそうです。
 島田紳助の引退時でも、今も続くそのまま居ぬきしたような番組があります。その時と同じ感じで、このまま続くものは続き、世代交代、新陳代謝していくので、島田事件同様松本事件もそのトリガーになるだけに過ぎないのだと思います。
 それにしても、多くのギャラ、年間10億を軽く超える所得を誇る大物がいきなり消えても何とかなる業界にも驚きですし、芸能界の不条理さを感じます。
 本人が稼いだカネも、改めてそんな大金はどこに消えていくのかと思います。本人が芸の肥やしとしてかっこよく豪遊していたり、ただ貯めていたり、不動産に投資ぐらいしているだけらばまだいいですが、悪い輩、反社会的な方向に流れていないことを祈るのみです。
 いずれにせよ、松本の笑い、カリスマ的なものも、取り巻きが忖度し「形」になって惑わされていただけなのでしょう。

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