ホラーは怖くない  書評「七人怪談」

 最近の選集、いわゆるアンソロジーは、編者が権限強く構成のイニシャティブを持ち、テーマを指定して作家を選び書下ろし中心という企画ものが増えてきました。
 昔は、既読の短編がいくつかあると購入するのを憚られたりもしたし、かといって好きな作家が入っていないのもという感じでアンソロジーはイマイチな印象でした。まして出版社の事情で、人気のある作家のシリーズを選べばない大人の事情もありました。

 その点では最近は面白く、とくにこのアンソロジー、ホラーの名手のが名手の書き手を選び書下ろしが競作という企画そのものが面白いです。
 アンソロジーの楽しみは、初読みの作家や読まず嫌いの作家を掘り起こせることです。今回も何人か発掘できて楽しめました。


 ホラーは確かに、怖いもの、後味の悪いものもありますが、基本私は書き手側に回りますから、結末を推理し、そう怖くはないです。実話風というのも、よくそんなにもと感心はしますが怖くはありません。
 ミステリやSFとも同じで、あくまで殺人が起こるわけではなく、謎の構成や展開、結末などのストーリーテリングが面白いのです。おどろおどろしい部分はある程度、ミステリや最近の政治討論などでのフェイクやミスデレクションでありレッドへリング的なものです。
 実際にスピリチュアルなものを信じないことはないです。それでも強力な力をもった妖怪や物の怪のようなもの、悪霊や幽霊が恨みの力で存在しているとは思いません。それなら戦争や大震災などの大量の死者が出ているのにそんな力は発揮されていないからです。
 人間の死の世界、輪廻でもあるとしたらそういうのは、こんなホラーの世界の恨み事的なものとは違う次元のように思います。
 この本の中にもあるように、人間のやることの方が怖いかもしれません。

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