書評:中山七里「いまこそガーシュウィン」 分断を音楽で断てるか

 電子書籍先行発売で、紙の方がそれでも値段が高い。もう紙の本は図書館かマニアしか買わないのか業界がちょっと心配です。CDが無くなりつつある音楽業界よりましなのでしょうか。
 音楽が政治、国境、民族の分断対立を止めることができるかある意味壮大なテーマです。
 まあ、その音楽の世界、初期はどんでん返しの妙もあったけれどシリーズ化してキャラミスになりつつある天才ピアニストで司法試験も首席合格の岬洋介の9作目です。
 最近は社会問題を背景に扱うことも多くなった著者ですが、この作品がアメリカ大統領しかも今「もしトラ」と再び騒がれるあの方のアメリカNO1主義、人種差別政策へのアンチがテーマです。
 ネタバレしない程度に、帯で書いてある程度に、紹介文を↓ 
『アメリカで指折りのピアニスト、エドワードは、大統領選挙の影響で人種差別が激化し、変貌しつつある国を憂い、音楽で何かできないか模索していました。
そこで、3カ月後に予定しているカーネギーホールでのコンサートで、黒人音楽を愛した作曲家、ジョージ・ガーシュウィンの名曲「ラプソディ・イン・ブルー」を弾くことを思い立つ。
しかし、マネージャーがガーシュウィンでは客を呼べないと反対したため、ショパン・コンクール中に演奏で人命を救い、一躍有名になった男、岬洋介との共演を取り付けることにした。
一方、新大統領の暗殺計画を進めていた〈愛国者〉は、依頼主の男から大物暗殺提案をされます。
 音楽の殿堂、カーネギーホールまでの道のりを、マネージャー同志の葛藤やエドワードの母の日本人嫌いまで膨らませつつ、時折〈愛国者〉視点で着々と犯行を進める場面が挿入されます。
 しかし、ミステリというよりは、シリーズ探偵の出るサスペンスというか、、少しそこは、思い切りネタバレになりそうで、やめます。いわゆるフーダニット、犯人は誰かというのを、〈愛国者〉視点の場面をゆっくり見たらというものですかね。定番の音楽ウンチクはたっぷりです。サスペンスとしても楽しめます。
 あわせて、動画サイトなどで「ラプソディ・イン・ブルー」を楽しむのが、正統なこの著者の音楽シリーズの読み方です。

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