ちょっと、若い方には、とっつきにくい?かもしれませんが。天使が舞い降りるような良い法則です。昔の近江商人は勤勉で、自分のことだけでなく、相手のことや、世間や地域のことを考えました。グローバリゼーションの時代にも十分通用する、また日本人の真面目で実直な奉仕する力は、国際的な強みでもあると思います。
近江商人の商売の心得十訓 十訓1:商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり |
十訓2:店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何 |
十訓3:売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる |
十訓4:資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし |
十訓5:無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ |
十訓6:良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり |
十訓7:紙一枚でも景品はお客を喜ばせばる つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ |
十訓8:正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ |
十訓9:今日の損益を常に考えよ 今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ |
十訓10:商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ |
多くの商社や流通企業のルーツにもなっている近江商人。「三方よし」の精神とともに、この十訓含め、江戸時代の近江商人のスピリット、現代人が学ぶべきことは多いです。
交通が今よりはるかに不便な時代、写真は天秤棒に商品やサンプルなどを持って街道を往き来した近江商人です。情報が少なかった時代、地方の人々にとってはインターネットの役割をはたしていたのかもしれません。笑顔と誠実な商売への信頼、地域への貢献、近江商人のブランドステータスが築かれなければ成り立たなかったでしょう。
近江商人も儲けという言葉を十訓の1と10で強調しています。しかし、利益は奉仕と一体であり、自分だけが儲けて貯めこむのではなく、地域に還元したりインフラなど世間や将来への投資に回しました。そのあたりは「始末、算用、才覚」の上方商人の、才覚の部分を一歩伸ばし、世間への貢献という知恵でさらに良い商売につなげ拡大したといえるかもしれません。
ビジネス、生き方の基本原則
良い商品を適性な値段で、お客様(相手)の喜ぶ品を提供する。この消費者志向は現代の接客商売にもつながりますし、対人関係の原則です。自分のことや、自分のまわり、目先の売上や利益だけを考えていてはいけないのです。
そして訓9の毎日損益を考え、計算し終えるまでは寝ない。最近はFX、トレードワーカーなど時差の関係で寝られない一日が終わらない人もいますが、毎日どこかの時点で収支損得を振り返る、この勤勉さと状況判断や情報収集は必要な部分です。
商売以外の方でも、一日をしっかり振り返ることは大事です。今日うまくいったのはなぜか、うまく行かなかったことをどう対処して明日にのぞむか。感謝や反省は良いことです。
訓10は商売の好不況はないと、ポジティブにもとれまた厳しくもある戒めとなっています。前向きに積極的にコツコツ頑張れということです。
勤労と節約の戒め
現代は労働時間も短く、通信や通勤手段も多い。
楽に働きたがる人は多く、投資や運用などお金を動かすだけで儲かる場合もある。一度楽に儲けると、汗水たらして働いた初心や、先祖先輩の戒めなど聴かなくなり勝ちです。
また高度成長期やバブル前後、猛烈に働いたり、苦労を乗り越えた人も自分の子供には楽をさせたい、財産を引き継がせたいという思いはあるでしょう。
下の画像は、そんな考えを戒めた長者が三代で没落していく様を描いた近江商人の家に伝わる「長者三代鑑」です。時系列は下から、創業者が夫婦で俵の前で作業されている姿、真ん中で二代目が創業者の富で茶の湯に興じふんぞり返って部下にエラそうにしている姿、一番上で三代目は、2代で財を使いはたしみすぼらしい姿で野良犬とさまよう図。
「子孫のために美田を残さず」多くの同族会社が戒めとしても、立派な二代目以降が育っている場合もあります。ただ本人への、しっかりした戒め、教育、公平公正な譲渡は当たり前として、経営者自体が現役の時、社員や周り、取引先、地域、ステイクホルダーに奉仕し、還元していたかも重要です。
あの人にはお世話になったから、あのお子さんとも付き合いを続けようになります。それがただ利益と権力、職階だけで結びついていれば、二代目にはつながりません。
今は、勤勉に働くのが美徳でないような風潮があったり、かつ消費する欲をかりたてる誘惑が多かったりで大変な時代です。しかし、いざ不況や、年金破綻だと言われると、この近江商人の十訓に学ぶことは大事です。
個人的に、老舗、旧家、名家の跡取りさんを何人かしっておりましたが、結構大変なものですね。
“三方よし 近江商人十訓を現代に活かす” への4件の返信